ワーナー・ゴースト・トラップ(全3話)
ワーナー・ゴースト・トラップ①
鱒田「毎晩家に、髪が長くて白い服を着た女性の幽霊が出るんです……」
カフェのテーブル席で向かいに座る、青いキャップとつなぎを身に付けた男・
大端「なるほど。では当社ワーナー・ゴースト・トラップにお任せください。必ずや、アナタを苦しめる幽霊を駆除してみましょう」
大端は、個人宅に現れる幽霊の駆除業者。家の中にさまざまな罠を仕掛け、幽霊を抹殺することを生業としている。
大端「お話を聞く限り、鱒田さんのケースは当社に相談が最も多い事例に当てはまりそうですね。当社がユーザー1,000名に対して行ったアンケート結果をご覧ください」
大端はタブレット端末を操作し、鱒田に画面を見せる。以下のデータが表示されていた。
Q1.ご自宅に現れる幽霊のタイプをお答えください。
・人間の女性:55.7%
・人間の男性:40.2%
・キツネ:2.1%
・ネコ:1.2%
・イヌ:0.5%
・コモドオオトカゲ:0.3%
・その他:0.1%
大端「数値から見て分かる通り、幽霊は女性であるケースが多いのです」
鱒田「へぇ……コモドオオトカゲの霊が出る家もあったんですか?」
大端「はい。珍獣コレクターが飼育していたコモドオオトカゲが死に、霊になってしまったのです。ただでさえ大型で固い皮膚を持ち、口の中の細菌で獲物を毒殺することもあるコモドオオトカゲが幽霊になったわけですから、駆除にはかなり手間取りました」
大端はタブレットの画面を指で横にスライドさせた。
大端「話を戻します。Q1で『人間の女性』と答えた方に、その女性の特徴を追加で質問しました。最も多かった回答を合わせた女性のイメージ画像がこちらです。
画面には、腰まで届きそうな長い黒髪で顔を隠し、足首まであるワンピースのような白い服を着た女性の立ち絵が表示されている。映画『リング』の貞子そのものだ。
鱒田「うちに現れる幽霊もこんな感じです!」
大端「やはりそうですか。その幽霊からどんなことをされましたか?」
鱒田「ただ部屋の隅に立っているだけのこともあれば、寝ているときにボクの体の上に跨がって首を絞めながら『殺すぞ、殺すぞ』と言ってくることもありました」
大端「それは大変でしたね……ですが、どれも典型的なパターンです。アンケートの続きをご覧ください」
大端は再びタブレットの画面をスライドさせる。
Q3.幽霊からどのようなことをされましたか?
・命を奪われそうになった:67.2%
・言葉をささやかれた:23.0%
・動けなくさせられた:8.6%
・特に何もされなかった:1.1%
・お金を盗まれた:0.1%
鱒田「ホントだ!めっちゃ典型的ですね!同じように悩んでいる人がたくさんいるんだ」
大端「だからこそ当社があります。私たちは幽霊に悩む人を救い出すプロです。鱒田さんのようなケースの場合、当社の駆除成功率は99.6%。ほぼ確実に幽霊を消し去れます」
鱒田「よかったぁ〜!ぜひお願いします!」
大端「では、ご自宅に罠を仕掛ける時間を、8時間ほどいただけますと幸いです。その後、夜の10時頃に再び落ち合えますでしょうか。どこかで時間を潰していてください」
鱒田「もちろんです!あっ、うちの住所をお伝えしますね。東京都◾️◾️区××町▲▲1-18-29 メゾン・ド・デスパレス105号室。10畳のワンルームです」
大端「分かりました。では、夜にお会いしましょう」
鱒田と大端は店を出て別れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます