シャークハンター VS ゴースト・メガロドン②

メバル「ヤバイよ父ちゃん!銛でどうにかなる相手じゃない!漁村に戻って応援を呼ぼうよ!」


カツオ「バカ野郎クズ野郎この半人前が!トーシロに助けを求めるプロがどこにいる!メガロドンだろうが相手がサメなら、この銛一本で仕留める!それが真のシャークハンターだ!ここで逃げたら、先代たちに顔向けできねーよ!」


メバル「父ちゃん……かっこいいぜ」


カツオ「次にヤツが近づいてきたら、オレが体ごと飛びついて、ヤツの目玉に銛を突き刺してやる。この銛に賭けて、ヤツをもう一度絶滅させてやるのさ……」


カツオがつぶやいた直後、水中から小さな魚が3匹勢い良く飛び出し、カツオの右腕、左脇腹、右太ももに噛みついた。


カツオ「これは……ダルマザメ!?」


カツオに噛みついたダルマザメは、数秒後に霧散した。メガロドンと同じく霊体。ダルマザメは大型の生物に噛みつき、肉を食いちぎって生きる。生前のメガロドンの一部をいただこうとして体に張り付き、そのまま死んだダルマザメまで幽霊になっていたのだ。そしてメガロドンは体をくねらせてダルマザメを無理やり引き剥がし、その勢いを利用して水中から飛ばすことでカツオに遠距離攻撃を仕掛けてきた。


カツオ「サメが飛び道具だとぉ?!ふざけやがってぇ!ならこっちにも奥の手があらぁ!」


カツオは銛を足元に叩きつけると、メバルの隣に置いてあった、白い布で包まれた何かを、両手で重たそうに腰のあたりまで持ち上げた。サメハンティングに行く際いつも小舟に積んでいるもので、メバルの身の丈くらいある。メバルは中身を知らず、カツオに何度聞いても「うるせぇバカクズイモムシ!早く彼女でも作りやがれ!」とはぐらかされ、教えてもらえなかった代物だ。


カツオは白い布をバサリと取り、海に投げ捨てる。包まれていたのは、黒光りする重機関銃ガトリングガンと、数千の弾丸が連なった弾帯だった。


カツオ「6つの銃身により毎分6,000発連射可能!7.62ミリ弾の嵐を喰らいなぁ!」


ブゥゥゥゥンという低い回転音とともに、ガトリングガンが火を噴く。メガロドンが漂う海面におびただしい数の弾が当たり、水飛沫が空高くまで上がった。メバルが通う小学校のプールの授業中、バタ足の勢いがすごくて女子からドン引きされている家口やぐちくんの両足が生み出す50倍くらい大きな飛沫が上がってる。


カツオ「どうだぁバケモノめぇ!これを喰らってもまだ元気いっぱいに泳げるかぁ?!粉々に成仏しろこの魚介類がぁ!」


弾帯の3分の1ほどを残し、射撃を止めたカツオ。カラカラと回転するガトリングガンの音だけが小さく響く。


メバル「父ちゃん……なんだよそれ!?銛一本でサメを倒すのが、シャークハンターじゃないのかよ!プライドはどうしちまったんだ!」


カツオ「プライドだの誇りだの、そんなものにこだわって敵を殺れないのは3流のゴミシャークハンターがやることだ!敵を倒すためなら手段を選ばず、確実に殺す。これが一流よぉ!」


メバル「ダセェよ!ボクは銛だけでサメを倒す父ちゃんに憧れてたのに!」


カツオ「そんな幻想は捨てろ。夢を見るな。そうだ、お前にこのガトリングガンを託す。明日からお前は、ガトリングガンを撃つ練習をしろ」


メバル「いやだよ!そんなことならシャークハンターなんて継がない!就職する!」


父子の口論の最中、再び背びれを海面に出したメガロドン。


メバル「生きてる……父ちゃんがシャークハンターのプライドを捨ててまでやった攻撃が効いてない?!これじゃ父ちゃんが惨めなだけじゃないか!」


カツオ「バカ野郎クズ野郎うすらボケ!よく見ろ!さっきより背びれの動きが遅くなってる!ちゃんと効いてるんだよ!2,000発は撃ち込んだんだ、無事なわけがねぇ!」


ガトリングガンを構え直し、背びれに狙いを定めるカツオ。しかし小舟から50mは離れており、もっと近づかないとメガロドンにダメージを与えるのは難しい。高火力なガトリングガンといえど、弾丸は水中に入った途端失速し、その威力は減衰してしまう。


カツオ「来い!もっと近寄って来いよ!ガトリングガンが待ってるぜ!」


カツオは背びれを睨みつけ、ガトリングガンのトリガーを引くタイミングを伺う。直後、背びれが海中に完全に引っ込み、水上からはメガロドンの姿が見えなくなった。


10分が経過。メガロドンは海面に上がって来ない。


メバル「……もしかして死んだ?メガロドン、死んで沈んだんじゃないの?!」


カツオ「そのようだな……よぉし!勝ったぁ!Yeah!メバルよ!父ちゃんの偉業を語り継げ!銛一本でメガロドンを倒した、歴代最強のシャークハンターとな!」


メバル「いや銛じゃないじゃん!ガトリングガンじゃん!」


カツオ「伝説ってのは尾ひれ背ひれが付いて語られるものさ……サメだけにな!ファーッハッハッハッ!」


メバル「全然おもしろくねぇ!超つまらねぇよ父ちゃん!アハハハハッ!」


高らかに笑うカツオとメバル。直後、深海から勢いよく海面まで急上昇し、飛び上がったメガロドンの大きな口に小舟ごと丸呑みにされた。



−−−−−−−−−−−



カツオとメバルが乗る小舟が巨大なサメに飲み込まれる姿を、港から双眼鏡で眺める村長。


村長「古い文献に記されていた、100年に一度現れる雌我露首領めがろどん様。言い伝えによれば、生きの良い男を差し出すことでその怒りを抑えられるとのことだが、過疎化に悩むこの村の若い稼ぎ手を失うわけにはいかぬ……どうか、シャークハンターと名乗るその荒くれ親子の命で、鎮まりたまえ……」


<シャークハンターVSゴースト・メガロドン-完->

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