学校のボディガード(全3話)

学校のボディガード①

私立市目鯖しめさば女子中学校

放課後、3年C組の教室内でイスに座りながら輪になってしゃべる3人の女子生徒。教室内には他に誰もおらず、日が落ちかけて外は暗くなってきている。


「そろそろ帰ろうかー」と1人が言い、立ち上がった瞬間、建物の中で吹くはずがない突風が、3人の間を吹き抜ける。風が止むと、3人の体は数十の部位に切断されていた。


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翌日 AM 8:30

体育館に1年生から3年生までの全校生徒と全教員が集まる。彼らが見つめる先には、舞台の上に立つ、メガネをかけたふくよかな50代の女性理事長。


理事長「皆さんご存知の通り、本校内で生徒が無惨な姿で発見される事件が連続しています。昨夜も3名が帰らぬ人となりました。警察の方々が調査をしていますが、いまだに犯人の痕跡はつかめておりません。由々しき事態だと認識しております。本校としても、このまま警察任せにして何も対策しないわけにはいきません。よって本日から原因が解明されるまで、17時以降、校舎内の立ち入りを禁止とし、部活動や委員会活動なども全て停止とします。授業が終わったら、すぐ帰宅するよう徹底してください」


生徒たちがざわめく。「部活無しとかマジ?」「来週大会なのに」と小さな声が方々から上がる。


理事長「どうしても17時以降、校舎内に残る必要がある場合、その旨を3日前までに各クラスの担任教諭に必ず伝えてください。担任と校長、そして私が受理した場合、ボディーガードが帯同することを条件に居残りを許可します。この場を借りて皆さんに、そのボディガードを紹介しましょう。どうぞ、こちらへ」


理事長は、生徒たちから見て右手の舞台袖に向かって声をかける。ゆっくりとした足取りで、青い和服を着た男が現れた。細身でスキンヘッド、眉毛がなく、腰に巻いた帯に日本刀を挿している。男は理事長の隣に並んだ。


理事長「私の兄の大学時代の友人・田代たしろくんです。居合道七段で、私が知る中で彼ほどボディガードにうってつけな人間はいません。17時から翌朝7時まで、彼が校内に常駐します。では田代くん、何か一言」


田代「怪しい者は誰であっても、拙者の愛刀・乳房ちちふさにて切り捨てる」


理事長「皆さん田代くんに拍手を!」


パラパラという疑念が混じった拍手が体育館に響く。「この男が一連の事件の犯人なのではないか?」と、大半の生徒が感じた。



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PM 6:30

真っ暗な校舎内を、辺りを気にしながら忍び足で歩く女子生徒。誰もいない、暗闇へと続く廊下を進む。その背後から、首筋に冷たい刃物が当てられた。


生徒「け、気配が全くない……田代さんでしたっけ?」


彼女の後ろには、刀を抜いた田代が立っていた。

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