復讐のChain③
40分後、インターホンが鳴った。鷹史が来た。
布団を被りながら、ダッシュで部屋を出て玄関に向かう黄身子。扉を開けると、灰色のロングコートを着た鷹史が立っており、よぉ、と挨拶をした。
黄身子「早く!早く入って!」
黄身子は鷹史の腕をひっぱり、玄関の中に入れると、入れ替わるように自分は裸足のままマンションの共用部に出た。
鷹史「何だよおい!」
黄身子「殺すまで出てこないで!」
黄身子は勢いよく扉を閉める。わずかに鷹史の「どうしちまったんだよ」という文句が、扉の向こうから聞こえた。
1時間は経ったが、鷹史は出てこない。部屋中を隅々まで確認してくれているのだろう。しかし1時間もかかるほど大きな部屋ではない。さすがに心配になってきた黄身子は、扉を開けて部屋の中へ入った。
黄身子「鷹史……?殺した?鷹史……?」
パソコンが置いてある自室へ向かい、恐る恐る扉を開ける黄身子。床に鷹史が、シャブねこから送られてきたあの写真と同じ無惨な姿で倒れていた。
守らなければ、殺す……
黄身子の背後から野太い男の声が聞こえた。振り返ると、スキンヘッドの太った男が立っていた、男の右手には、刃に沿って血が滴るドスが握られている。
後ずさりしながら部屋に入る黄身子。男の顔に見覚えがあった。童元を狙った殺し屋・魔島 省吾について調べる中で見つけた新聞記事。そこに顔写真が載っていた魔島 研二。暴力団トップで元はヒットマンとして暗躍していた、魔島 省吾の父親だ。
守らなければ、殺す……
白目がない真っ黒な目を黄身子に向け、そう繰り返す魔島 研二。あのチェーンメールのことを言っているのだと黄身子は察した。あと2分ほどで、シャブねこから最初のメールが来て12時間が経つ。
黄身子はパソコンに飛びつき、メールアプリを開いた。新規メール作成のボタンを押し、シャブねこから送られてきた文面をコピー、テキストエリアにペースト。宛先をクリックしてひたすらキーボードを押し、予測変換で表示されたアドレスを無作為に入力していく。残り1分。指定されている送信先は80人。
守らなければ、殺す……
黄身子「80人って多過ぎだろクソがっ!」
黄身子の背後から研二が近づく。76……77……78……79……80人目のアドレスを入力し、送信ボタンにマウスカーソルを合わせた。
−−−−−−−−−−
自室のベランダで、バスローブを着て赤ワインを飲む童元。右手でワイングラス持ち、中のワインをクルクルと回しながら、左手でスマートフォンを操作している。
童元「『せっせと働く愚民どもを見下ろしながら飲むワインは、100年間熟成させたくらい味に深みが出て最高だな』っと。はい投稿」
童元がSNSに自惚れたコメントを投稿した直後、画面に新規メールの通知が表示された。黄身子からだ。昨晩自身を襲った殺し屋の身元とその依頼人を特定できたのだろうと思い、メールを開く。
From:kimi-ko.soy-sauce@−−−−−−−.com
To: doppel-doumoto@−−−−−−−.com , todaaaa-knife@…………
件名:このメールを12時間以内に80人に転送してください。
このメールは不幸のメールです。
このメールを12時間以内に80人に転送してください。
文面を変えてはいけません。
放置してもいけません。
もし守らなければ、あなたを殺しに行きます。
メールには、腹部を切り開かれ、その横に臓器を並べられた黄身子の死体の画像が添付されていた。
<復讐のChain-完->
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