復讐のChain②
童元を襲った殺し屋の身元は、2時間足らずで突き止められた。
ここまでは順調。そしてここからが、やや手間のかかる作業だ。魔島 省吾の経歴を可能な限りさかのぼり、関係があった者の中から童元の命を狙う可能性がある人物をピックアップしていく。黄身子が本腰を入れて作業をしようとした矢先、パソコンの画面に新着メールの通知が表示された。シャブねこからの返信だ。
黄身子はメールを開いた。件名も本文もなし。画像データだけが添付されている。画像は、全裸のまま腹部を切り開かれ、その横に臓器が解剖図のように並べられた若い男性の死体の写真だった。唐突に表示されたグロテスクな画像に驚き、イスから崩れ落ちる黄身子。さすがにイタズラが過ぎる。
なおさら、シャブねこがここまで手の込んだことをする理由が分からなくなった。シャブねことはビジネスに関するやり取りしかしたことがなく、イタズラをし合うような関係性ではない。
あるいはシャブねこがうっかりコンピュータウイルス付きのデータをインストールしてしまい、パソコンが第三者に操作され、イタズラの踏み台にされてしまっているのかもしれない。だとしたら、自分のパソコンまで感染するリスクを減らすために、これ以上メールを開くのはやめたほうが良い。黄身子はシャブねこに返信は送らず、作業を続けることにした。
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夜が明け、日が昇り始めた。黄身子は作業を一時中断し、ベッドで眠りにつく。約6時間後、昼過ぎに目覚め再度パソコンに向かった。
新着メールフォルダに、120件以上のメールが溜まっている。送り主は、黄身子のクライアントやシャブねこのような同業者など、仕事に関する人間ばかり。文面は全て、シャブねこが送ってきたものと同じ。チェーンメールだ。ITが浸透したこの時代に、知人からチェーンメールがほぼ同時に、大量に届くなんてことがありえるのだろうか。最初はくだらないイタズラだと思っていた黄身子だが、何らかの異常事態に巻き込まれているのかもしれないと、考えを改めた。
直後、背後に視線を感じた黄身子。誰かに見られている。そんな気がするのだ。しかもかなり近いところ、おそらく部屋の中から。けれど、部屋には黄身子しかいない。
黄身子は卓上のスマートフォンを手に取り、電話をかける。黄身子が最も信頼する殺し屋であり、恋人でもある
黄身子「もしもし鷹史!?今すぐうちに来て!誰かに入られたかもしれない!」
鷹史「はぁ?なんだよ急に。まさか、ムラムラを解消するために俺を呼び出して一発ヤろうと、そんな嘘をついてるんじゃないよな?」
黄身子「違うわよこの薄らスケベバカ!いいから来て!誰かいる!早く殺して!」
鷹史「ゴキブリじゃねーのか?まぁ、とりあえず行くわ」
黄身子は電話を切ると、ベッドから布団をはがして頭からかぶり、部屋の隅にしゃがみ込んだ。何かロジックがあるわけではないが、布団の中は安全地帯な気がして、怖いことがあると布団にこもるのが黄身子の幼いころからの癖である。
シャブねこのメールで恐怖心が煽られているだけかもしれない。だが、万が一シャブねこのメールが本当で、添付されていた写真の死体がシャブねこ本人だとしたら……何者かが自分の関係者を殺し回っている可能性がある。
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