The Prey③

パチパチと音を立てて薪が燃える暖炉の前で、ソファに座るジャンゴ。男はティーカップに入れたミルクを2杯ローテーブルに置き、向かい側のソファに腰掛けた。


男「む、昔はすごい金持ちが住んでいたんでしょうなぁ〜。5階建てで部屋は40室以上、広い地下室までありやすよ、この城」


男がカップを1つジャンゴに差し出す。男なりのもてなしのつもりなのだろうが、ジャンゴはカップに手を伸ばそうとはしない。見ず知らずの人間が用意した飲食物を口にするほど愚かではない。


ジャンゴ「お前はいつからこの城に住んでいる?」


男「さ、3カ月ほど前からですねぇ〜」


ジャンゴ「ストロベリータウンから、保安官が数名この城に来ているはずだが、会ったか?」


男「あ、会ってませんぜ〜。あっしが住んでから、ここには誰も来てません」


ジャンゴ「そうか……保安官だけでなく、若いカウボーイも入り浸っていたらしいが、本当に誰にも会っていないのか?」


男「ええ……そ、それにしても不可思議な話ですぜぇ。城に入った者がみんな死んじまったってのに、あっしは何ともないなんて……」


ジャンゴ「……そうだな、不可思議だ。俺は城に入った者が『行方不明になっている』と言ったが、『死んだ』とは言っていない。なのにお前は『死んだ』と知っている。実に不可思議だ」


男「えっ……そ、それは表現の違いで……見つかってないなら、し、死んでいる可能性もあるじゃないですか!」


ジャンゴ「俺は保安官ではないから、法律を守る必要もない。怪しい人間を撃ち殺して騒ぎが収まるなら、それで終いだ」


ジャンゴは右手に持った拳銃を男の眉間に向け、親指で撃鉄を下ろす。


男「えへっ、えへへへへへへへへへへへへへへへへへへっ……誤魔化せなかったですか。で、でも、あっしが殺したわけじゃありやせんぜ。それは嘘じゃない。だからあっしを撃っても意味はない。か、代わりの飼育員が補充されるだけでさぁ」


ジャンゴ「飼育員?どういうことだ?」


男「よ、ようこそ!猛獣ショーへ!」


男が右足で床を踏み鳴らすと、ジャンゴが座っていたソファが床ごと地下に落ちた。入口のホールの真下にあたる、大きな地下室だ。ジャンゴが落ちてできた穴から、男が顔をのぞかせる。


男「こ、殺せ!人狼ウェアウルフ!」


地下室の奥、暗闇の中からグルルルッという低い唸り声が響く。ジャンゴは左腰にぶら下げていたランプにマッチで火を灯した。5mほど離れた場所に、何者かが立っている。


狼の顔に、白い体毛で覆われた上半身。鋭い爪の生えた両手。下半身はジーンズを履いており、人間そのもの。だが人間と分類するには、獣の要素が強すぎる。


ジャンゴ「コイツが元凶か……」

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