The Prey②
暗い夜の森の中、馬にまたがったジャンゴが走る。黒いテンガロンハットが闇に溶け、焦げ茶色のロングコートが風になびく。右腰に下げたシングルアクションアーミーのグリップが、月明かりを反射し鈍い銀色に輝く。
森を抜けた先にある深い崖の淵に、件の城が立っていた。人の気配はなく、明かりも灯っていない。悪魔の城という呼び名に相応しい佇まいである。
ジャンゴは城の入口近くで馬を降り、鞍に結びつけていたランプにマッチで火をつけた。光源はこれだけである。
ランプを左手に、拳銃を右手に構え、身の丈よりはるかに大きな扉を開ける。鍵はかかっていない。
中は巨大なホールになっており、奥のほうに上階へと続く階段がある。城内の柱はところどころ削れており、少しの衝撃でへし折れてしまいそうだ。
1歩ずつ城の奥へと進むジャンゴ。階段を登る直前、ジャンゴは右の親指で拳銃の撃鉄を下ろし、素早く振り向いた。
ジャンゴ「誰だ?」
いつの間にか背後に立っていた小柄な男の顎に銃口を突きつけるジャンゴ。
男「う、撃たないでぇ〜!あ、あっしは少しだけ、ここを借りている者でぇ〜」
男は両手を上げ、今にも泣き出しそうな表情を浮かべる。年齢はジャンゴより一回りほど下のようだ。武器の類は装備しておらず、服はススとホコリまみれ。
ジャンゴ「ホームレスか?」
男「は、はい〜、そ、そんなところです〜」
ジャンゴ「俺は保安官に依頼されて、ここの調査に来た。城に侵入した者が行方不明になっているそうでな」
男「ゆ、行方不明!?そ、そんな……まさか、あ、あっしが犯人とでも!?そんなことできやせんよぉ〜!あっしは見ての通り、すぐ貧血になるガリガリの弱者男性ですぜぇ〜」
ジャンゴはこれまでに多くの殺人鬼を目の当たりにしてきた。また自身も、賞金稼ぎといえば少しばかり聞こえはいいが、殺人鬼に変わりない。殺人を犯した者には独特の匂いがある。血の匂いと言ってもいいだろう。大勢殺した者ほどその匂いは強くなる。しかし。この男からは殺人鬼の匂いが全くしない。
ジャンゴ「この城で何があったか、お前の知っていることを聞きたい」
男「え、ええ、分かりやした〜。ここではあれですし、あっしが使っている部屋に行きましょう。座って話せますし、ミ、ミルクもありやすぜ」
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