呪い代行の代行③

銅三「分かりました。では我が弟・鉄実の命を」


鉄実「ちょっと待ったーーっ!何言ってんだよ!」


銅三「仕方ないだろう。代償が必要なんだ」


鉄実「ずるいだろ!自分だけ助かって報酬ももらおうってのか!?この卑怯者!」


悪魔「たしかに。吾輩、悪魔だけど今のは卑怯だと思ったわ。悪魔基準でも卑怯」


鉄実「ですよねぇ〜?ほら見ろ!悪魔様もこう言って……ちなみに悪魔様、お名前はなんというのでしょう?」


悪魔「……名乗ることは悪魔にとって命を投げ出すに等しい。名を聞き出すのはエクソシストどもの常套手段だ。お前まさか、吾輩を殺そうとしているのか?」


鉄実「いえいえいえいえいえ!そんな滅相もございません!俺はつい……そういうルールを知らずに……」


銅三「悪魔様、この男は過去83人の命を奪った冷徹な殺し屋です。間違いなく、悪魔様を84人目にしようとしておりました」


鉄実「テメェ適当なことぶっこいてんじゃねぇぞこの白豚!大体、このビジネス思いついたのはお前だし、俺に殺しを指示してたのもお前じゃねぇか!」


悪魔「事情はどうあれ、殺人をするヤツなんてのは総じてクズだ」


銅三「ほら、悪魔様もこうおっしゃっている。お前こそ死ぬべき人間だ」


鉄実「待ってください悪魔様!この白豚は、実の弟に殺しをさせただけでなく、『誰でも1週間で呪い殺してみせよう』なんて嘘をつき、多くの人たちを騙してきました。コイツは取引で平気で嘘をつくヤツなんです!悪魔様との取引でもきっと騙そうとすることでしょう」


悪魔「それは面倒だな……」


銅三「余計なことを言うなこのドブネズミ!ワシが仕事を取ってこなきゃ、お前は何もできないボンクラのままだったくせに!」


鉄実「そういう兄貴だって俺が殺しを実行しなきゃ、ただの嘘つき野郎として今ごろ豚箱送りだバカが!」


言い争いが絶えない兄弟を見て、悪魔は大きくため息をついた。


悪魔「もうさ、じゃんけんで決めろよ。それが嫌だってんなら、吾輩がお前ら両方とも殺す」


銅三「……い、いいだろう。じゃんけんだ!勝ったほうが生き残る!」


鉄実「……じょ、上等だ!運も実力のうち!絶対勝ってやる!」


悪魔「後出しは無しだぞ。それじゃあ、じゃん、けん、ぽん」


銅三と鉄実はチョキを出した。あいこだ。

その瞬間、鉄実が2本の指で銅三の両目を突き、潰した。


銅三「ぐわぁぁぁぁぁっ!き、貴様ぁっ!」


鉄実「はっはっはっ!悪魔様は目潰ししてはいけないとは言ってない!」


悪魔「ほう。吾輩の裏をかいたか。やるな、弟。気に入った。兄のほうは目が見えない分かなり不利だな。さてこの勝負どうなるか……じゃあ続けよう。あいこで、しょ」


銅三はパーを出した。鉄実はグーを出した。


鉄実「負けたーーーー」


悪魔「ブワッハッハッハッ!バカだなーーー!決まりだ。弟の命で、兄の望む人間を呪い殺してやろう」


鉄実の体は、服だけを残して一瞬で灰になった。


悪魔「では呪いたい人物の名前を言え!本名でなくてもいいぞ。その人物を特定できる名前なら、あだ名でもペンネームでもなんでもいい」


銅三「フォ、FOX!FOXという殺し屋です!どうか!お願いします!」


悪魔はズボンの尻ポケットからスマートフォンを取り出した。


悪魔「FOX……FOX……ああ、そいつ7時間前に死んでるわ。じゃあ呪い殺せない」


銅三「ええっ!?」


悪魔「でも代償をもらった分はしっかり働いて帰るぞ。契約だからな。生贄になったお前の弟が最も呪いたかったであろう者を殺して、手向けとしてやろう」


銅三の体が灰になって崩れ落ちた。


<呪い代行の代行-完->

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