呪い代行の代行②

3時間後

ある港の巨大な倉庫。中はボロボロで、もう何年も使われていない。

鉄実が倉庫の扉を開けて中に入る。その右手には、鳥カゴに入れられたニワトリが1羽。

銅三はラインカーを使い、床に石灰で半径2mほどの魔法陣らしきものを描いている。


銅三「よし、持ってきたな。他のお供物と一緒に、この陣の中心に置け」


鉄実「本当にうまくいくのかよ?今まで、丑の刻参りも蠱毒こどくも成功しなかったのに……」


銅三「どっちも日本式の呪いだろ。いいか?世の中、大体のものが日本より海外のほうが優れている。特に人を殺すことに関しては、日本が海外に勝てる要素は無い。拳銃だって海外のほうがたくさん作られてるし性能も良い。呪いもきっと同じだ。しかも、この呪いが成功した動画を、ワシはXYZtubeでしっかりと見た」


鉄実「フェイク動画じゃないのか?」


銅三「いいから言う通りにしろ!」


鉄実は指示に従い、魔法陣の真ん中に持参したニワトリと、トマト、きゅうり、レタス、トーストを並べ、その上から塩とコショウかける。


鉄実「ハンバーガーでも作る気か?」


銅三「ワシを信じろ!最後の手順だ!ニワトリの首を裂いて、その血を魔法陣にたらせ!」


鉄実「……はいはい」


鉄実は右ポケットから折りたたみナイフを取り出し、鳥カゴの隙間から刃を入れてニワトリの首を5センチほど切り裂いた。白い羽毛が少しずつ赤くなり、血が1滴床に落ちた。

魔法陣が青い光を放つ。鉄実は驚きながら、陣の外へと出た。


銅三「やったぞ!成功だ!」


魔法陣の中心から大量の白い煙が発生し、倉庫内に充満した。煙が消え去るまで30秒ほどかかった。


魔法陣の中心に誰かが立っている。銅三と鉄実は目を丸くした。


銀髪のオールバックに青白い肌、額からはヒツジのようなツノが2本生えている。身長190cmはあろうモデル体型で、黒いタキシードを着た若い男が、どこからともなく現れた。


男「お前らか?吾輩わがはいを呼び出したのは?」


銅三「そうです!あるお願いがあって、お呼びしました!」


男「お願いといっても、吾輩は人を呪い殺すことしかできないぞ?」


銅三「話が早い!そうなのです!ある人物を呪い殺してほしいのです!」


鉄実「兄貴!なんだよこれ!?」


銅三「ワシらがやったのは、悪魔を呼び出す儀式だ!人を呪い殺す悪魔をな!」


男、否、儀式で呼び出された悪魔は、魔法陣の中心にしゃがみ込む。


悪魔「いいけど、きちんと代償を払えよ」


銅三「代償……?あれですよね?野菜とトーストとニワトリと……」


悪魔「それは吾輩を呼び出すための代償で、呪い殺す分は別」


銅三「はぁ?」


悪魔「あれ?吾輩を呼び出したってことは、何かでトリセツ読んだんだろ?呪いの代償について書いてなかった?」


銅三「いえ……ワシらは動画を真似してアナタを呼び出しただけなので、詳しいことまでは……」


悪魔「ああそうなの?まぁ払ってくれれば文句無いんだけど。呪いの代償は、吾輩を呼び出した者の命」


銅三「……ってことは……」


悪魔「今回の場合、2人いるのか……呪いたい人間は1人か?」


銅三「1人です」


悪魔「じゃあ、お前らどちらか一方の命を代償としてもらう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る