廃墟暗殺③

中学生「幽霊になって女子トイレに入るってのは、男のロマンだよなぁ?」


シゲミ「そうなの?知らないけど」


中学生「……幽霊本体が登場したってのに、まだビビらないのか?……ウゼェなぁ。お前みたいに沈着冷静なやつ、ウゼェよ。怖がってもらわないと、幽霊やってるのがバカらしくなる」


シゲミ「怖い?怖がらせる気があるとは思えないほど、稚拙な脅しばかりだったけど?もっと本気で怖がらせてくれないと」


中学生「ダメ出しかい。傷つくねぇ。でも俺の見立てが甘かったのは確かだ。他の3人は簡単にビビったから、お前を驚かすのも余裕だと思ったけど……お前はずっと冷静さを失わず、霊障の原因を調査してやがった」


シゲミ「調査ね……」


中学生「そんなお前に敬意を表して、俺自ら出て来てやったわけだ。どうだ?お前の調査した結果通りだったか?幽霊がいると予想できたか?」


中学生がケラケラと笑う。その口は、頬を両断し両目の近くまで大きく裂けている。


シゲミ「私たち以外の人にも、同じようなことしてきたの?」


中学生「まぁな。俺の趣味みたいなもんさ。思った以上に驚かせちまったみたいで、死んだやつも4〜5人いるな」


シゲミ「なるほど。じゃあ貴方は悪霊ってわけだ。おとなしく暮らしてただけなら、見逃してあげたのに」


中学生「ああ?何言ってんだ?」


シゲミ「冥土の土産に教えてあげる。私が調査をしていたのは正解。でも霊障の原因を調べていたわけじゃない。私はただ、ある人物に依頼された仕事・・のための下調べをしていただけ。その人物が誰かは、貴方みたいに口が裂けても言えないけど」


中学生「仕事?廃墟探索すると金くれる人がいんのか?いいやつだな。もったいぶらずに俺にも紹介してくれよ」


シゲミ「違う。廃墟に行って、このボタンを押すのが仕事」


シゲミの右手に黒くて小さい、手のひらに収まるくらいの円筒形の金属が握られている。金属の片側は赤く、その部分にシゲミの親指が当たっている。


中学生「スイッチ?」


シゲミ「C-4を仕掛ける最適な場所をずっと探してたの」


中学生「なんだよC-4って?」


シゲミ「廃校に引きこもって人様を脅かしてただけの貴方が知らないのも無理ないか。C-4は爆弾の一種。ここに来るまで、55カ所設置してきた。この校舎を吹き飛ばすために」


中学生「じゃあ……そのスイッチは……」


シゲミ「いつもなら私たちに容疑がかからないよう、1カ月以上経ってから爆破させるんだけど、姿を見せてくれた貴方に敬意を表して、今ここで起動させてあげる」


中学生「お、おいやめろ!」


シゲミ「私は、廃墟ごと悪霊を暗殺する女子高生殺し屋だ!地獄で反芻しな!」


シゲミは親指でスイッチを押した



−−−−−−−−−−



校舎の外、校庭の中央でシゲミを待つ3人。


トシオ「シゲミちゃんのやることってなんだろうね?」


カズヒロ「ウ⚫︎コじゃねー?」


サエ「たぶんオナラと一緒にとんでもないのをブチかますから、私たちに出て行ってほしかったんでしょ?」


3人の背後で爆音が鳴り響いた。校舎の窓が次々と割れ、炎が噴き出す。3人は飛び散るガラスの破片と舞い上がる炎に巻き込まれないよう、急いで校舎から距離をとった。ほんの数十秒のうちに、校舎は爆炎に包まれた。


真っ赤に燃え上がる炎の中から、シゲミが歩いて出てきた。3人がシゲミに近寄る。シゲミはブレザーがところどころ焦げているものの、大きな怪我を負っている様子はなかった。


サエ「シゲミ……これって……?」


シゲミ「別に何も」


<廃墟暗殺-完->

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