第二章 - 気配 -
その夜。
タイカ達は村の中央の広場で休むことにした。
夜になる。森の中へ戻るよりは、拓けた村の方が安全だろう。
村の中へ入り、崩れた窓や扉から中を覗いてみたがやはり人も、その屍らしき残骸も見つからなかった。
穀物などの食料らしきものも残っていなかったので、住人が村を捨てたのではないかというタイカの推察が合っていそうだった。
廃材となった家屋の一部を燃やして焚火を作った。
「やはり静かだ」とタイカがつぶやいた。
その言葉に、シュトは不審を感じた。時折、獣の遠吠えや風で木々が揺れる音が聞こえる。それ以外の音はない。そんな静かさはいつものことだ。
「村のある場所はね。大抵その土地の精霊がいるんだ。でも、その気配を感じない」
不審の表情が顔に出たのだろう、タイカが補足する。
「恐らくだけど、土地の精霊がいるから人が食べることが出来るような作物を作れるのではないかな。だから、村がある場所には精霊がいる」
タイカの、経験からの推察なのだろう。
シュトも納得した。森の中を旅していると実感する。木々もその根と草も、人が食せるようなものは少ない。薬用になるような植物もあるが、そのようなものばかり食べて人が生きていけるはずがない。獣もいる。本来、森は人が住めるような場所でも拓ける土地でもないのだ。
「だけど、この村には精霊の気配がない。もしかしたら、それが関係しているのかもしれない」
元々、精霊がいない土地だったのかもと、シュトは思ったが、すぐに否定した。精霊がいなければそもそも村自体を興せないだろう。
では、何故。
そう思った時。背筋に寒気が走った。
何かいる。
シュトは気配を感じた方を振り向いた。
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