第三話 焔の少女

第一章 - ついていない -

 まったく、ついていない。


 コレサは、小声で毒づいた。聞こえる様に言うと他の面々にまた小突かれる。

 肩が痛い。腰も痛い。

 ほとんど道などないような森の中、無理に荷車など曳いているから進む都度、荷車が跳ね上がる。

 荷物は、十になるかどうかの子供と幾らかの木材だから重いとは言えないが、そもそも荷車などを進めることが出来ない場所なのだ。

 自分の他に二人、前で草木を切り払っている男に、後ろで警戒している男。二人とも何度か一緒に仕事をしている。


 そして荷台の子供。


 血で染まったような赤い髪の娘。今は眠っているが、目を開けば同じ赤い瞳だろう。


「気持ちの悪い」

「何か言ったか」

 と、先頭の男が尋ねる。

「言ってねえよ。それより、こいつ。もういいんじゃねえか」

「駄目だ。もう少し奥、誰も入ってこない位に行ってからという約束だ」


 聞こえないよう、舌打ちする。そうだ、こいつは仕事に対して几帳面だ。だから客にも信頼されている。今回の仕事もこの男の紹介で今回の首領だ。金もこいつ経由で払われる。


「分かったよ」


 木の根の荷車の車輪が引っかかる。いらつき、乱暴に引っ張る。荷車が大きく跳ねた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る