戻ってくるならば
「ほら音ちゃん、次は1番。」
「はいっ!」
狙った的に攻撃を当てる練習。やる気を出したはいいものの、私は壊滅的に的を狙うのが苦手だった。
「うーん…。10個中2個かぁ…。」
頑張らなきゃね。
そういう理奈先輩の苦笑に、肩身が狭くなる。
「じゃあ、一度実践してみようか。」
え、攻撃あたんないのに!?ど、どうやって…
「大丈夫、物は試し!」
…えぇ…。
理奈先輩が指を鳴らす。いつのまにか、白い人型が、チューバを抱えて立っていた。
「チューバは本来回復要員。戦闘向きじゃないから、音ちゃんでも勝てる可能性があるよ!がんばって!」
いつのまにか、理奈先輩が上空に浮いてこちらを見ている。
そこが観戦席ってことね。
「よーい…スタート!」
合図とともに人型が動き出す。
「おっとっと、」
とりあえず大きくジャンプして避けたけど…。
さっき気づいたけど、このガラスの花、つけてる間は私、ほぼ無重力になってる。これを活用すれば…
大きく飛んで、ベルを人型に向ける。
そして、一音鳴らす。
魚が一匹、人型に向かっていく。
…よけられた。
やっぱり簡単には当たらないよね。
でも、それなら。
ド、ミ、ソ、と三音吹く
魚が3匹出てきて、人型にまっすぐぶつかっていった。
人型がよろめく。
今だ。
大きく息を吸って、音階を吹く。
たくさんの魚が、人型を取り囲んだ。
魚が消えたとき…
人型は消えていた。
ただ名残のように、消えずに残った貝殻のなかにチューバが入っていた。
パチンッ
理奈先輩が指を鳴らすと同時に、チューバも消えた。
「いやー、すごいすごい!当たったじゃん!音ちゃんは実践のほうが得意なのかなー?なんにせよすごーい!」
「あ、ありがとう、ございます。でも実践は考えることが多くって…。ひとまずは的に当たるようにしたいです。」
「まあ、はじめは基本からだよね。とりあえず疲れたでしょう。少し休もうか。」
二人で並んで先輩の巨大樹の木陰に入る。
「いやー、こういうの落ち着くねー。草属性に感謝ー。」
理奈先輩が葉を見上げて言う。
「ほんとに、落ち着きますね。」
「音ちゃんはさ、そもそもどうして楽器を始めたの?」
「小学生の時、音に一目ぼれして…。」
「へぇ…。ペト丸、だっけ。その子とはどのくらいの付き合い?」
「中1の初めに買ってもらったから…。もう4年目ですね。」
「中1の初めかあ、早いねぇ。」
「あ、あの。」
「んー?」
「理奈先輩は、どうしてここで戦うんですか?」
「私?私は…」
牡丹高校吹奏楽部を、取り戻して、そして、あの子に…
そして今日も、音は舞う 風花こおり @kori40kazahana
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