今日もどこかで……
『あたし、アンタのことが好き!!』
「うしっ!!」
あれから俺は普通の日常を過ごしていた。
変わったことといえば、ようやくヒロイン攻略のコツを掴んだことくらい。
ただ、あのゲームはあれ以来やっていない。はっきりとした理由はないのだが……。
多分だけど、自分の中ではあのシーンで、最後に見た背中で完結してしまったのだと思う。もしかしたらいつか他のヒロインを攻略する日が来るかもしれない。
……ったく、せめてヒロインが画面から出てくる展開用意しとけっての。気が利かねえなあ。
そういえば変わったことがもう一つあるのを思い出した。
今日の休み時間。
「ねえ、田中。アンタがやってるゲームってさ、恋愛シミュレーションゲームだよね」
「ああ、そうだけど。どうかしたのか?」
「その……質問なんだけど……難しいの?」
「操作に関しては難しいってことはないかな。選択肢選ぶだけだし、あとはストーリーを楽しむだけだから。ただ選択肢選びは真剣にやらないと、後々後悔する」
「そ、そうなんだ……やっぱりあれが悪かったのかな?」
「え?」
「ああ、なんでもない!なんでもない!あのさ、やり方教えて欲しいから、今日放課後家行っていい?」
「……は?えっ……」
「じゃあまた後で!」
というわけで、今日は東山が家にやってきた。何気にクラスの女子が初めて家にやってくるというイベントが発生したわけだが、特に何も起こらなかった。彼女は1時間くらいゲームをしてから、足早に帰宅した。別に何か期待していたわけじゃない。ただ近くで見たら意外と可愛くね?と思っただけだ。
しかし、東山が恋愛シミュレーションゲームか……一体どういう風の吹き回しなんだろう?
********
「ただいま〜」
「やっと帰ってきたわね!ほら、さっさとやるわよ!」
「わかったわよ、うるさいわねえ」
「はやくしないと私の福川くんが誰かに取られちゃうでしょ!?」
「大丈夫よ。モブキャラだし」
「モブ言うな!素敵な人なんだからね!」
「なんで初めてやった恋愛シミュレーションゲームで攻略対象外のキャラクターを攻略しなくちゃいけないのよ……しかも……」
「まあまあ、喜びなさいよ。こんな経験そうはできないんだから」
「はあ……」
今会話しているのは、私がやっているゲームの主人公・時任彩。これだけ聞いても何が何だかわからないだろう。私もまだ飲み込めていない。
なんと彼女は画面から出てきたのだ。うん、自分で言っててもまだ信じられない。
さらに、攻略対象外のキャラクターとくっつきたいとか言い出した。ワガママか。
どうしてこうなった。田中が恋愛シミュレーションゲームにはまってるらしいから何とな〜くやろうとしただけなのに。まあ、おかげで今日はラッキーだったけど。
……とりあえず、引き受けた以上はやるしかないわね。
私は溜め息と共にゲームを起動させた。
ギャルゲーの主人公に頼まれて脇役攻略させられてます 差等キダイ @rollingsunshine
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます