バイバイ
【翌朝、祐希を保育園に送り届けると、美幸先生が出迎えてくれた。】
『おはようございます、先生』
『ええ、おはようございます』
『せんせー!』
『祐希くん、おはよう』
【祐希は挨拶を済ませると、すぐさま駆け足で園内へと飛び込んで行った。はやく友だちに会いたいらしい。】
『あっ、転ぶなよ!』
「気をつけるのよ〜」
【その小さな背中を見送ってから、俺は改めて美幸先生と向かい合った。】
『昨日の事、夢じゃないんですよね』
『ええ、良いのか悪いのかはわからないけどね』
『俺にとっては良い事です。こういう普段と違う会話ができるようになったわけだし』
『そう……ならいいんだけど。その……』
『俺、美幸先生の事好きですよ』
『っ!』
『だから、祐希が卒園式迎えたら、もう一度告白します。その時まで待っててください』
『……うん』
『じゃあ、またあとで』
【美幸先生のほころんだ顔を見届けてから、俺は学校への道を急いだ。】
すると、画面が急に切り替わり、エンドロールが流れ始めた。
あれ?ここで終わりなのか?
一応両思いにはなったから、まあこれでいいんだけど……これはこれで寂しくなるな。
神田川……幸せになれよ。
エンドロールが終わり、画面が暗くなる……すると神田川がぬるっと画面から出てきた。
「……不思議な体験だったな。よし、寝るか」
「おい、待て。寝るな。ここにきて無視すんな。お前はゲームキャラより心がねえのかよ」
「いや、もうクリアしてやったから、次はヒロインが出てきて俺とエロい展開にならねえかなと……」
「下心だけはしっかりあんな!お前にヒロインなんて現れてたまるか!!」
「それより、どうしたんだ?せっかくクリアしたんだから美幸さんとイチャイチャしてればいいのに」
「ああ、それは後でするんだが……最後に礼を言っておきたくてな」
「……そうか」
「まあ、あれだ。上の人からもうこっちには来れないって言われたからな」
「…………」
絶対にツッコまないからな。ここで謎な設定出すんじゃねえぞ……。
幸い神田川はそこはあまり広げず、手を差し出してきた。
俺も同じように手を差し出し、自分でも意外なくらい強く握手した。
それは一人の人間と何も変わらない温もりだった。
「じゃあな」
「ああ、お幸せに」
「お前も彼女作れよ」
「余計なお世話だ」
言い返してやると、神田川は笑顔でひらひらと手を振って画面の中へと消えた。
俺はこの事が夢だったかどうかの判断をつける為に、布団へ潜り込み、部屋の明かりを消した。
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