フラグ・オブ・デス
「いや〜、モテ期来ちゃったよ。ありがとうな。本当にお前のおかげだよ」
「お前、ゲームの中では常にモテ期じゃんか。途中から蛇蝎のごとく嫌われまくったけれど」
「それはお前のせいだけどな!まあ、とりあえず……乾杯」
神田川はジュースの入ったコップを掲げた。とりあえずそれに合わせると、カランと澄んだ音が鳴った。
……なんで俺はゲームから出てきた主人公と乾杯してんだ。てか、こいつ図々しいだろ。何故こいつにウェルカムドリンク用意せにゃならんのだ。
とりあえず休憩しようとゲームを停止させたら、いきなり画面から出てきて、「乾杯しようぜ!」とか言い出してきたのだ。いや、そんな「磯野、野球しようぜ!」みたいなノリで言われてもと思ったが、なんやかんやで今に至る。こいつ、普通に飲み食いできるのかよ、なんて野暮なツッコミをする気にはなれなかった。
「ぶっちゃけあのまま異世界編始まってくれたら、それはそれで面白かったんだが……」
「いや、さすがにそれは……ほら、家族もいるし」
「じゃあ、家族ごと異世界に……」
「お前には人の心がねえのかよ!……まあ、それはそれとして、ありがとうな。お前のおかげでやっと両思いになれたわ」
「いや、俺はテキトー……適当な選択をしただけだ。だから礼なんていらんよ」
「なんか礼を言って損した気分だが、まあお前が操作せんと始まらんからな」
「どういたしまして。滅多にできない体験ができて嬉しかったよ」
次は美少女ヒロインが出てきて欲しいものだ。
ていうか、このままエンディングまで到達したらこいつはどうなるんだろう?
……俺が必要以上に気にしても仕方ないか。
「なあ、俺さ……エンディング後は結婚しようと思うんだ」
「フラグ・オブ・デス!!!おい、やめろ!!せっかくここまで来たんだぞ!?なんてことしてくれるんだ!!!」
「な、なんだよ、いきなり騒ぎ出して……発情期か?」
「発情してんのはお前だよ!いきなり危険な妄想語り始めんな!」
「お、おう、なんかすまん……」
まあ、ゲームキャラに死亡フラグとか説明しても仕方ないか。とりあえず防げた……のか?
神田川はのんきにポテチを食っていた。おい、ゲームキャラ、人のおやつを勝手に平らげてんじゃねえ。
「よし、じゃあそろそろ行くか……幸せを掴みに」
「余計な事は言わなくていい。まあ、こっから選択肢はないかもしれんから……頑張れよ」
「ああ」
画面に入っていく神田川の背中は自信に満ちていた。
……ほんと、フラグじゃなければいいんだが。
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