両思い
『えっ?』
『な、何でもない!』
【先生はこちらに背中を向けた。その後ろ姿がとてもかわいらしく思えた。さっきまであんな殺気を纏っていたのが嘘みたいに思える。俺はそっと距離を詰め……】
・抱きしめた
・異世界に行った
うわぁ……下の方選びてえなぁ〜……いや、待て。せっかく初の攻略チャンスなんだから、変な考えを持つのはやめよう。
とりあえずセーブだけしといて、グッドエンド見た後で楽しもう。
【俺はそっと美幸先生を抱きしめようとしたら、さりげなく避けられた。】
だせえ!!
当たり前といえば当たり前だが、何でこれ選択肢に出てきたんだ?
文章がないのに、神田川がさりげなく傷ついてるのがわかる。後でからかってやるとするか。
『ごめんね。今あなたに抱きしめられたら、私甘えちゃうかもしれない』
『俺は……そうしてほしいです』
あれ?何だかさらにいい雰囲気になっちゃってる。
これは……勝ったな。間違いなく勝った。
ぶっちゃけもうテキスト読み上げるだけでいいような気がしてきた。
【すると、美幸先生はゆっくりこちらを振り向き、イタズラっぽい笑みを浮かべた。】
『じゃあ、さっきは避けちゃったけど……やっぱり抱きしめてくれない?少しの間だけ』
『は、はい……』
【俺はそっと美幸先生を抱きしめた。
意外なくらい華奢な身体は力を込めれば折れてしまいそうだが、そこから伝わる温もりは何物にも代えがたい強さがあった。規則正しい秒針の音が遠ざかり、二人の距離はゼロになっていった。】
しかし、もっと紆余曲折あるもんだと思ったんだけどな。
いや、もしかしたらここから大スペクタルアドベンチャーが始まるのかもしれん。あとリア充爆発しろ。
画面は本来ありえないはずの二人の抱擁シーンが映し出され、何だか幸福感が湧いてくる。これだよ、これ。こういうの観るためにギャルゲーやってるんだよ。
【しばらくすると美幸先生はするりと腕の間をすり抜け、俺の腕の中に名残惜しさと体温を残した。
そして、こちらに優しい笑みを向けた。】
『今日は一人で帰れるわ。じゃあ、また明日ね……』
『あ、はい……』
【先生が帰った後も俺はしばらく玄関のドアを見つめていた。
好きな人の意外どころじゃない秘密や好きな人を抱きしめたこと、やっぱり送っていったほうがよかったのかなど色んな感情が混ざり合っていた。
美幸先生、また明日……。
俺は心の中で呟き、玄関の鍵を閉めた。
また明日、あの笑顔を見れることを無邪気に期待しながら。】
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