まさかの!?

 家に帰ると、一息つくことも忘れ、俺はゲームを起動させた。ゲームをするのは一息つくのと違うの?というツッコミは今は受け付けない。

 すると、画面から頼んでもいないのに神田川が出てきた。昨晩よりは元気そうだが、まだ表情は沈みがちで目つきは恨みがましい。


「お前、ちゃっかり仲良い女子いるんじゃねえか。羨ましい」

「は?仲良いか知らんけど、何でお前知ってんの?」

「ああ、どういうわけか視覚がリンクしているみたいなんだ。お前の学校での様子が手に取るようにわかるぜ」

「…………」


 なんだ、そのくそいらねえ特典は……いや、俺には何の特もない。むしろ損しかしてねえ。


「こっちは周りから人がいなくなって殺されかけたのに……」

「落ち着け。もしかしたら、こっから大逆転があるかもしれんだろ。お前が諦めたらそれこそ終わりだぞ……くくっ」

「おいっ、お前も諦めて乾いた笑いを漏らしてんじゃねえ!選択肢はお前にかかってるんだからな!!」

「大丈夫。なるようになる。てか、どうなるか誰にもわからんだろ、こんなの。さっさと始めるぞ」

「お、おう……」


 ぶっちゃけ面倒くさいが、ここからどう物語が展開していくかは気になるからな。

 セーブポイントからゲームを再開すると、もちろんあの場面からだった。 


『驚かせてごめんね。怖かったでしょ?』

『ま、まあ、少しは……』

『とにかく、色々説明したいから一旦君の家に戻らない?』

『わかりました……』



『実は私……異世界帰りなの』

『……は?』

「……は?」


 もう一度テキストを読むと、間違いなく異世界という文字が見える。


『昨日襲いかかってきたのは異世界からこの世界に紛れている異世界人よ』

『…………』


【俺はどんなリアクションを取ればいいのかわからなかった】


 俺もどんなリアクションをすればいいかわからない。

 ていうか、まさか異世界ネタ!!!

 異世界帰りの保育士!!!

 まるで作品のジャンルが変わったみたいだ。

 もしかしてここから神田川も最強チーレム主人公になってしまうのだろうか。それはそれで全然ありかもしれない。今他のヒロイン達からの好感度ゼロどころかマイナスだからな。環境を変えるのは大事だと思う。


『あの……いつも戦ってるんですか?』

『そうね。こっちに帰ってきてからはほぼ毎晩よ。今週はさっきまでなかったから油断してたの。私としたことが舞い上がってたわ』

『ははは、先生でもそんなことがあるんですね。ちなみに何で舞い上がってたんですか』

『君と二人きりになれるから』

『え?』


「え?」


 あれ?な、なんか……いい空気?






 


 

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