最終話 義妹になるまでの

 花と共に家に帰ってきてひと段落する。しかしまだ終わりではない。もう二人話さなければならない人がいる。

「じゃあそろそろ電話するか、二人に」

「……うん、緊張するけど、お願い」

 そして深呼吸をし、電話をかける、花も入れるようにスピーカーで。向こうの時間はおそらく早朝だからまだ起きているかわからなかったが、幸いにもすぐに電話に出た。


「――もしもし、急に電話をかけてくるって何かあったのか?ひょっとして寂しくなったとか?」

 電話に出たのは父だった。

「そんなんじゃねえよ、ただ二人に言いたいことがあってよ……」

「言いたいこと?これまた急にどうした」

「実は……」

 声が詰まる。なんて言っていいのかがわからない。言ったらどんな対応をされるのだろう。わかっていたがそれが怖くてこれ以上声が出なかった。

 「もしも~し、どしたんだ? なんかあった?」

 早く話さなければ、しかし……。

 そう悩んでいると花が俺の手を握ってきた。花の方を見るとじっと俺の顔を見て口を動かす。口パクだったがはっきりとわかった。

『だいじょうぶだよ』

 そうだ、何を恐れることがある。もし父さんに何と言われても、たとえ絶縁と言われたとしても俺は花と別れる気などない。たとえ全人類から非難されようと俺には花がいる。だから大丈夫だ。そう確信し、口を開く。

。言っとくが俺も花も本気だ。何と言われようと別れない」

 はっきりと言う。父さんは黙っている。やはり驚いているのだろう。そしてゆっくりと話し始める。

「そうか……ようやくか」

「は?」

「ようやく告白したか、遅いんだよお前は」

 ……どうしよう、脳が追い付かない。隣を見ると花もぽか~んとしている。

「いやなんだよその反応は、驚かないのか?」

「まあ二人が好きあってるの知ってたからな」

「ンで知ってんだよ! 自分でさえつい最近まで気づいてなかったのによ!」

「私だって隠してたし! 言ってないしなんで?」

「バカ言え親だぞ。そのくらい態度でわかるわ。花は大体中二くらいからで千春はだんだんと兄妹と恋愛の境界線が薄れていった感じだろ。てか花に関しては全然隠せてないし。それにしても長かったな、わざわざ俺たちが出て行ってやったというのに三週間もかかるとは、正直待ちくたびれたぞ」

「わざわざって、出張だろうが」

「まあタイミングが良かったね、けどわざわざ二人で行く必要なんてないだろ」

「……いや、それもそうだけどよ、だからって落ち着きすぎだろ!実の兄妹が付き合ってんだぞ、なんでそんな達観してるんだよ」

「実の……ああ、そのことなら心配ないよ」

「心配ってどういうことだよ。一番の心配所だろ」


「君たち実の兄妹じゃないから、花は僕らが再婚した時の連れ子、早い話が義兄妹なんだ。だからそこは気にしなくても大丈夫だよ」


「「……は?」」




 改めて言わせてもらおう。これは、恋人いもうと義妹いもうとになるまでの物語だ。

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妹が義妹になるとき 十晴 @NEKOYATak

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