君のため、僕のため、

(募集中)

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「あのね、僕は君と出会えて幸せだったよ。」

数秒前に別れを告げた相手にこの台詞はいささか矛盾している気もするが仕方ない、だってこれは僕の本心なのだから。


別れを告げたのは彼女の愛を感じなくなってしまったからでも、まして彼女を嫌いになってしまったからでもない。ただこの関係に区切りのいい、丁度付き合って1年が経つ日だったからだ。

1年前の今日、彼女が僕の誕生日を恋人として祝いたいと言ってくれて、この関係の始まった。

そこから1年。バレンタインやクリスマスなんて恋人らしいイベントも一緒に過ごし、勿論彼女の誕生日も祝ったし、二人で季節を過ごしてきた。そして今日で1年が経つ。


今までも別れたほうがいい理由なんていくらでもであった。

社内恋愛でこの関係を始めたことを彼女が隠したがっていることと、その事実への不信感をぬぐい切れなかったこと。束縛してしまう僕と自由でいたい彼女、恋愛に対する姿勢があまりにも違うこと。僕の夢と彼女の夢を両立することが難しいこと、どちらも夢を譲り切れないこと。

そうやって、別れなれけばならない理由なんていくらでも見つけられる。

もう僕らも良い年なんだし、先の見えない恋に溺れている場合ではないのだ。


もう半年、もう1年と付き合う期間なんていくらでも延ばせる。1年間だけ、なんて誰に決められたわけでもないのだから。それでも僕はここで別れを告げた。これ以上一緒にいても別れがつらくなるだけで、もうすでに胸が張り裂けてしまいそうなぐらいきみのことを愛してしまっているけど、これ以上深く傷つかないうちに別れたいと思ったのだ。

お互いの為に。


寂しくて眠れない夜も1人じゃなかったし、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な僕をきみはただただ抱きしめていてくれたよね。余裕がなくて自信をもなくて、それでも愛してるって囁いててくれたよね。

僕、きみのそういうとこ好きだよ。でもね、だからね、そんなきみの輝かしい未来を見てみたいと思うんだ。

きみがどう夢を叶えてどういう家庭を作って、どう生きていくのか。

それは、僕とではさせてあげられないこと。だから、_


別に悲しいことなんかじゃないでしょ?

今だから言えるけどさ、世界で一番幸せな恋だったと思うよ。

きっとずっと忘れられない。

愛し合ってたよね、僕たち。形に残すことはできないけど、僕らが愛し合った日々は確かにあって、無くなったりなんかはしないでしょ?永遠なんてないけどさ、嘘でもなかったよね、二人の愛は。

ただ二人が出会って、愛し合えただけも幸せだと思わない?

遠距離で苦しいこともあったりさ、喧嘩やすれ違いで何できみじゃなきゃだめなんだろうかとか思ったこともあるけど、仕方ないよね、同じことで笑い合えたり、同じ朝を迎えられたりなんて凄く些細なことでも、どうしようもなく幸せを感じたり出来るのもきみとだけなんだから。


別れるなんて言ってもさ、別に全く会わなくなるわけじゃないし、今までとほとんど何も変わらないよ。始まった時僕らの関係に『恋人』って名前がついただけだったのと同じで、僕らの関係に名前が無くなるだけのことだよ。だってさ、そうでしょ?ずっと大事な人だったんだ。昔も今も、これからも変わらないよ。変えられないよ。一番大切な人。

嫌いになんかなれないし、何もなかったことになんか出来ないでしょ?だってこんなにずっと一緒で、こんなにいっぱい想い合ってきたんだ。忘れられないよ。


ねぇ、今すぐには無理だけどさ、この恋人だった時間もさ、二人で「思い出」にしていこようよ。

あんなときもあったね、なんて二人で笑えればいいよね。

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