第9話 生意気なサクラ
社会人4年目。平凡な日常。
春風がスルスルっと僕にからまり抜けて行く。
あれから気づくと実感がないまま時間が過ぎていた。
あの日の短い時間の出来事、あれは何だったのか?戻れない。
記憶が何かが邪魔をしている。
あえて、記憶をたどらず僕は時間に流された。わざと流されてみた。何も考えずに楽だ。
「ピンポン。」コンビニの入口の電子音が妙に耳に入ってくる。
ざわざわ女子達が花見でもするつもりなのか、コンビニのカゴにお弁当、お菓子に飲み物を山のように詰めている。
あえて聞くつもりはないが話が耳に入る。
「ミカ、午後から雨らしいよ。」
「こんなに天気いいのに。」
「天気予報見なかったの?」
「面倒だし、いいっかって。」
「じゃあ早く行こうよ。」
「だねー。」レジに並ぶのも面倒くさい。
土曜日の午前11。
予定がないが、僕はあえて急いぐ僕。
サンドにポテトを握りセルフレジ。機械音がまた耳に入り響く。
コンビニを出てすぐ左手のポテチを落としてしまった。目の前の女子が拾ってくれって。
携帯を持ち直しポテチを受け取る。
ボソッと「ありがとうございます。」
顔を上げる。一瞬サクラに見た。
「サクラ。」違う。
拾ってくれた女子が戸惑っている。
僕はあわてて「あ、間違いました。拾ってくれてありがとう。」
僕はあえてゆっくりと立ち去る。
帰り道、風の揺られた桜の花びらが僕を誘う。
自然と足は桜並木へ向かう。
満開の桜。午後からの雨でこの景色も今年の見納めになるだろう。
淡い花びらがふわふわ頭の上に降ってくる。
「おーい坂田。」懐かしい声がする。空耳か。
僕は立ち止まることなく歩いた。
「坂田のばーか。止まりなさい。」
この生意気な口調。「サクラ!」
僕は振り返る。
サクラが立っていた。
僕は幻を見ているのか?
風が少し強くなる。ポツポツと雨が降り出した。
「サクラ、どうしているんだ。消えたんじゃなかったのか?」
サクラは生意気な口調で
「はあ?坂田、勝手に私を消滅させないで!」
「あの時、時空を超えて戻るとサクラは、桜の瘴気にあたり、ショウコになるって言って消えたじゃないか!」
「そうよ。」
「2年も過ぎたんだぞ。どこにいたんだ。」
文句を言いながら泣いていた。
雨でかき消されながら泣いていた。
サクラが「泣くな、坂田。私はここに存在している。足もある。
長い年月生きた桜の木は瘴気にあたり人間に変化する。サクラショウコ。今の私だ。」
「坂田、行くぞ。」僕らは肩を並べた。
happy end
サクラのしょうこ〜あやかし〜 京極 道真 @mmmmm11111
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