6.昔僕が死んだ家 東野圭吾 ―伏線じゃないところが見つからない―
東野圭吾作。本を読む方ならこの時点で面白いことが確約されたように感じるだろう。もちろんこの本も例外に漏れない。
普段本好きを名乗る私だが、実は東野圭吾作品にはあまり縁が無い。おそらく映画化作品と、その他有名作品を知っているくらいだろう。まともに読んだのはこの本が初めてだった。
この本の語り手、「私」は7年前に別れた恋人で、今は夫を持つ「沙也加」からの電話を受け取る。彼女は幼少期の記憶がなく、その記憶を取り戻すために二人は「幻の家」に向かう。今はその家には人が住んでいないものの生活の跡がそのまま残っており、二人は夜が明けるまでそれらの証拠から沙也加の幼少期の記憶、ひいては彼女が何者なのかを探っていくのだが…
おっと、あらすじはこの辺にしておきましょう。とにかくこの作品には伏線が多いから、これ以上話すとネタバレになるかもしれない。実を言うと、上のあらすじの中にも伏線と言えなくもない要素が有りはするのだが。
多くを語れない作品なのが、書いていてもどかしい。最初に一瞬感じた違和感が、様々な推理がことごとく跳ねられたあとで重要さを増していくところはさすがとしか言えない。
ただ一つ気がかりなのは、結末が急すぎるところだと思う。確かに実際の結末以外に良い終わり方も見つからないのだが、衝撃を感じたそのままの流れで終わっていってしまうのが心残りだ。読後の余韻は、各自で感じなければいけない。
しかしそれも読者に圧倒的な衝撃を与えるという点では、かなり効果的だろう。兎にも角にも、今なにか読みたければ手にとってほしい一作だ。
つれづれ読書感想文〜本棚あるうち本棚の中を歩め〜自己満で気ままに書く本紹介 遅筆丸 @ponshi8282
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