誕生日の壁

@tataneko

誕生日の壁、4月1日生まれの不利な戦い

「4月1日は何の日でしょうか?」と聞かれたら、最初に思いつくのは「エイプリルフール」でしょうか。


私の個人的な感覚では、子どもの頃は「公式に嘘をついても良い日」ということで、どんな嘘をつくか数日前からいろいろ考えて、クラスメイトや家族にすぐにバレる嘘をついた記憶があります。


ひと昔前なら、大企業が話題になることを狙って、ありえない新商品の発売や、ダジャレのような社名変更などを発表して、ニュースやワイドショーで取り上げられていました。それを本気にする人もいて、企業が謝罪するケースも少なくなかったと思います。


最近では「エイプリルフール」はあまり話題になりません。日本は4月1日が年度初めなので入社式を行う会社も多く、諸外国のように嘘やジョークを楽しむ雰囲気ではないのかもしれません。


さて、本題の「誕生日の壁」についての話です。

同い年の人に出会ったとき、ほとんどの人が学年も同じかどうかを確認します。


日本では4月1日が年度初めなので、新学年も4月1日にスタートします。そのため、同じ年に生まれても学年が一つ上になる「早生まれ」の人たちがいます。


1月1日から3月31日までに生まれた人が「早生まれ」として学年が一つ上になると思っている方も多いかもしれませんが、実は4月1日生まれの人までが「早生まれ」になります。


つまり、4月2日から翌年の4月1日生まれの人までが同じ学年になります。これは法律で決まっていて、学校教育法で小学校入学は満6歳の誕生日以後の最初の4月1日からとなっているからです。


4月1日生まれの人は、満6歳の誕生日のその日が最初の4月1日です。4月2日生まれの人は満6歳の誕生日以後の最初の4月1日は翌年になるのです。したがって、満7歳になる誕生日の前日の4月1日に、やっと小学校入学の年齢(これを「就学義務年齢」という)に達したことになります。


学生にとっての一年は、体の成長だけでなく、脳の発達も大きな差になります。「早生まれ」の人たちはスポーツだけでなく、学業においても成長や発達の差という不利な勝負を強いられているのです。


同じ学年でも、「早生まれ」の4月1日生まれの人と、4月2日生まれの人にはほぼ一年の成長の差があります。この二人がスポーツや受験で競うのは、果たして同じ条件といえるのでしょうか?


3月末に生まれた人の中には、出生届の誕生日を4月生まれにして提出すると聞いたことがあります。最近でも同じ様にするのかわかりませんが、4月1日生まれではなく、4月2日生まれにしないと意味がありませんのでご注意ください。


さて、誕生日の話題をもう一つ。


「数え年」は知っていますか?


日常生活では、ほぼ使うことはありません。神社やお寺では「数え年」を使うので、初詣などで参拝したときに「数え年」の早見表を見て、自分が厄年だと気づく人も多いでしょう。


「数え年」の考え方は、生まれたときに1歳、新年を迎えると一斉に年を取るというものです。したがって、満年齢に1歳足した年齢が「数え年」になります。


生まれたときに1歳とするのは、母親のお腹の中に居る月日(一般的には十月十日の妊娠期間)もこの世で生きてきた月日と考えるためです。


また、そもそも昔は0歳という概念がなかったことも理由の一つです。生まれて1年目、2年目という考え方です。西暦も元号も1年もしくは元年から始まり、0年はありません。


現代の私たちが「数え年」を意識するのは厄年のときでしょう。厄年は人生の中で何回かありますが、男性は41歳の前厄、42歳の本厄、43歳の後厄を無事に過ごすために、厄除け祈願をする人が多いです。


しかし、これは「数え年」の年齢です。実際には、今年の誕生日に満40歳になる人が前厄です。したがって、初詣のときに満39歳の人が前厄であることに気づいてビックリする、というのはよくある話です。


「数え年」で年明けに一斉に年を取る理由の一つが旧暦の「閏月」です。現代の太陽暦には「閏月」はありませんが、旧暦は月の満ち欠けと太陽の動きを取り入れた太陰太陽暦で、約3年に一度、閏月を加えて一年を13か月としていました。


現代でも約4年に一度の閏年には、2月29日を加えます。この日に生まれた人は、翌年以降の誕生日を3月1日にすればいいですが、旧暦の閏月に生まれた人は、翌年以降の誕生日をどうするのか、という問題があります。そのため、個人の誕生日を祝うのではなく、皆で年明けにお祝いをする「数え年」の方が都合が良かったのでしょう。


現代では「新年あけましておめでとうございます」というのは、年明けを祝うだけの言葉ですが、旧暦では無事に年を重ねたことをお互いに祝う言葉でもあったのです。


「数え年」で、1月1日の元日に一斉に年を取り、正月三が日を祝う由来と考えられる話が、歴史書「ホツマツタヱ」に書かれています。


内容的には古事記・日本書紀よりも古い歴史書であるため、公式には「偽書」とされている「ホツマツタヱ」には、天照大神は初日の出とともに生まれ、その誕生を国民が三日三晩に渡ってお祝いしたとあります。


旧暦の「数え年」で元日に誕生日を祝い、現代にも続く正月三が日を祝日とする由来は、天照大神の誕生から続いているのかもしれません。もちろん、諸説あります。

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