第3話 追跡者



「あ、も一人見~っけた♪」


ID:1403………。


彼が、追跡者トラッカーだ。



■□■⚔■□■



「フフフ。その怯える顔、たまんないね?」


私には分かる。コイツは相当な手慣れだ。


彼は、明るい黄金色の瞳を持っている。い

だけど、どことなく、光輝いていないんだ。

瞳の奥が、黒い闇にのみ込まれている。


私は何度もそんな奴を見てきた。だから分かるんだ。


「ねぇねぇ………僕、もう矢、撃っちゃうよ?反抗しなくていーの?」


「………」


「ねぇってば」


ザシュッ


金属の擦り合う音と鈍い音が、同時に鳴り響いた。


「グァ……ア"ァ"ッ」


気味の悪い悲鳴と共に、赤い液体が私の顔にビシャッとかかった。

振り返ると、彼の残骸らしきものが、塵となって跡形もなく消えた。

私の顔にかかっていた血すら、消え散ってしまった。


『ID1403、ゲームオーバー‼打って破ったのは、ID1806‼』


残骸すら消え散ってしまうのが、とても残酷で冷血に感じた。

なぜ跡形も何も、そこに人がいたことすら消してしまうのだろうか。


負けた者はこの世界に存在する権利もない、ということだろうか。

本当、上流貴族らしい考えだな。


はぁ、と小さくため息を吐くと、

その場でかがみ込み、彼の残骸があった場所で、手を合わせた。


「勝つ者がいれば、負ける者がいる。それと同じように、ここでは生きる者がいれば死ぬものがいる」


「私の道を切り開く架け橋となってくれて、ありがとう」


当然、貴方にとって私は、一生忘れられないほどの恨みになるだろうが。


私には、彼を死なせてしまったという大きすぎる貸しを、返す術もない。

来世の幸福を祈ることしかできない私は、心底最低な人間だと思う。


『ゴホン。感動シーンは私がやりずらい空気なので、取り戻しまーす!

初出場と言うのにも関らず、華麗なる剣裁きで1403の首を跳ねる‼鮮血の飛び散りが、とても芸術的でビューティフルですね‼』


やけに物騒な言葉が聞こえたようなきがしたけれど、幻聴と言うことにしておこう。


『あーあ。………私の自己紹介の前に負けちゃうなんて、ザンネーン。ってことで、今回の実況者コメンテイターを担当する、ディエロで~す!よろしくっ』


金髪にピンクを編み込んだような髪をした20代くらいの女が、スクリーンに映し出される。


『今後の1806にも、期待がよせられます!』


すると突如、画面に私が映し出された。


ターコイズの瞳が、真っ直ぐとこちらを見ている。

その瞳は、寂しいような辛いような憎むような、見たこともない感情だった。


とにかく、その全てが、私の体を突き刺すように痛かった。


それと同時に、自身の芯の気持ちに気が付いてしまった気がした。


それが、今までにない屈辱のようなもので、さらに胸が痛くなる。


すると、何かと頬を伝る冷たい感触に気が付いた。


混乱していたせいもあったのか、これを雨と気が付くには少し時間がかかった。

雨の冷たさにはっと我に返ると、すぐさま頭の回転を始めた。


ここはコロシアムと言っても、地下牢と同じ階ということは、屋内だ。

となると、これは人口的に降らせているのか………?


確かに、雨は視界が悪くなる為、試合をより盛り上げるために運営側が活用した説も勿論ある。


だけれど、極端な話、これがもしも能力の一種となれば………。


ここの出場者プレイヤーは全員、死を覚悟した方がいいかもしれない。

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コ ロ シ ア ム 静月夜 @Serena_0015

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