鏡の中の異様な笑顔
あげあげぱん
第1話
これはある朝のことです。そのころの私は高校生くらいだったと思います。
私は顔を洗おうとして洗面所に向かったんです。
洗面所の鏡には眠たげな私の顔があり、鏡の中の私はこちらを見ていました。
それはそうでしょう。鏡なのですから、私が鏡を除けば向こうもこちらを覗くのが普通なのです。それが普通、だからその後に起こったことは絶対におかしいのです。
私は顔を洗い、タオルで顔を吹いてから、また鏡の中の私を見ました。すると、鏡の中の私はこちらに背を向けていました。
ありえないことです。私が鏡に背を向けていなければ、鏡の中の私がこちらに背を向けているはずがありません。
私は恐ろしさを感じながらも、鏡の中の私がどう動くのか様子を伺っていました。鏡の中の私は背を向けたまま動かずにいましたが、十秒ほど経過した時でしょうか。私が何度目かの瞬きをした時、こちらを向いていました。
そして、鏡の中の私はにやあーと不気味に笑ったのです。口裂け女のように歪んだ口は異様で、目はなぜかにごっていました。その顔には嫌悪しか感じられません。
私は怖くなってその場から逃げるようにして離れたんです。それからしばらくして洗面所に戻ったのですが、その時には鏡に異常は見られなくなっていました。洗面所にも変化はなく、私の周りで何か変化が起きたという話も聞きませんでした。
その後、私は事故や事件に遭ったり、死んだりということはありません。あれは、あの鏡の中に居た何者かは私に実害を与えるようなものではなかったのかもしれません。
ただ、私は時々、今でも時々夢に見るのです。あの日見た光景を。
鏡の中の私は、いつも私ににやあーと笑い、私が逃げるのを楽しそうに眺めているのです。そんな夢が時々出てくるのは、私があの光景を恐れているからなのでしょうか。それとも、鏡の中に居た何かが何度も夢の中の私に会いに来ているのでしょうか?
私が、あの恐ろしく歪んだ顔を見ることを恐れれば恐れるほど、その顔を夢に見るのかもしれません。
鏡の中の異様な笑顔 あげあげぱん @ageage2023
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