春の夜空は地球より広い

あさのたけし

本編

桜が咲く夜、一つ一つの蕾が華開く。そうして僕たちの恋も始まる。

ピ、ピ、ピ、ピ、とサイドモニターから音が鳴る。

「アラキ。いつまで寝てるの」

目が覚めると、カナコがそこにはいた。桜の咲き誇る公園でどうやら僕はカナコの肩に寄りかかって寝ていたようだ。

「ごめん」と謝ると、「いいの、いい。貴方はもう少し寝てたらいいよ」

「じゃあ、寝る」

「———って、ほんとに寝るなーー!」

僕は何故か寝ないよう、ブンブン、と身体を譲られる。

「ここは、何処」

「何処って、公園だよ。それ以外、ある?」

「公園———か。桜綺麗だね」

「そうだね」

何げない時間が過ぎて行く。それは長くも短い儚い物語のような…。

「今の世の中は、混沌としすぎてるから、たまにはこうやって

それは、甘い悪魔のような言葉で僕を誘う。ここでぼんやりとしていた頭がキレ、忘れている事を思い出した。あぁ、思い出した。

「ごめん。君とはいれない。僕の場所は此処ではない。帰らないといけない」

今から帰っても、もう目覚めれないかもしれない。だけれど帰らなきゃ、現実を見なくては。


僕は自分の家に帰ろうとする。そして———家の扉を開ける。ただ……いま。恐る恐る家に入る。家の中は暗く灯りも付かない。トン、トン、トン、と階段を上がっていく内に足を踏み外す。


そうして目が覚めたら、病室のベッドの上だった。現実ここに戻ってきた。だけど置いてきてしまった者が一つ。今、カナコは何処で桜を観ているのだろう。

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春の夜空は地球より広い あさのたけし @ggang_745

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