ワナビ少女と書籍化詐欺師
時守ナガト
◆ワナビ少女と書籍化詐欺師
書籍化を夢見るワナビの少女・
メールを送ると、
「あの……ほんとうに書籍化出来るんですか?」
「ええ、本当ですよ」
史郎が言うには印刷・宣伝とその他もろもろ300万円あれば書籍化出来るとの事だった。
「でも300万円なんて大金持ってないです……」
「大丈夫ですよ。100回に分割して毎月3万円でも払っていただければ」
「そうですか、じゃあそれで!」
8年ローンであるが、そこは深く考えない栞であった。
こうして300万円かけて、自費出版という形で書籍化した栞。
史郎は、今まで自社で書籍化した、その他大勢の
その為、出版した1万5000冊は完売してしまい、自費出版では珍しい重版がかかる事になった。
栞は喜び、史郎は戸惑った。
その後、担当編集という形で栞の作品についてアドバイスなどを行った史郎。
そうこうする内に、二人は恋仲となったが、ある日、史郎は自責の念に堪えかね、実は詐欺であった事を告白する。
栞は言う。
「詐欺罪の要件を知ってますか? 金銭的な被害がある事が一つです。私は本が売れましたし、夢も叶いました。全然、損してないです」
「そうか、良かった……」
しかし、史郎は余罪があったので普通に前科が付いた。
・
・
・
それから三年。
あと数日で、執行猶予の三年が終わる。
栞とは、作家と担当ではなく、男女の仲として付き合っている。
史郎は言った。
「執行猶予中に罪を犯さなかったからこれで大丈夫だな」
栞が、微笑みながら言う。
「残念ですが、別の罪を犯したのでダメです」
「えっ? 何を」
「私の心を盗んだ窃盗罪です」
「こいつー!」
HAPPY END
ワナビ少女と書籍化詐欺師 時守ナガト @yokuyomuman
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます