第2話 作者と読者(どちらも男子高校生)の駄弁り
日本のよくある一戸建ての部屋。勉強机にベッドと本棚という、シンプルな部屋に二人がいる。簡単な一人称の小説を読んだ黒髪男子高校生であるトシは静かに原稿を渡す。書いた本人である眼鏡をかけている茶髪(水泳の影響でなった)の男子高校生ノダカは楽しそうに笑う。
「名付けるならあれだ。転生先は近代風ファンタジー世界でした。田舎のスローライフ生活をします。みたいな感じ。夢を元にちょちょいとね」
「なろう系っぽいけど、近代風って時点でアウト臭い。てか……夢って何でもありかよ」
なんか胡散臭いとトシは呆れた顔になる。
「ああ。大体ぶっ飛んでるだろ? スチームパンクとか、産業革命期モデルの小説とか、そういうのを読んでたから、それが夢に出てきたって感じっしょ。この間なんて複数要素が絡んでカオスだったかんな?」
「そうかそうか。実際にこれネットに載せるわけ?」
トシの質問にノダカはカラカラと笑う。
「なわけないじゃん。プロットなんてないから無理。それになろう系を好む人から見ると、こういう世界観自体、受け入れられるかどうか怪しいもんだし」
「展開がないなら無理だな」
ノダカの答えにトシは納得しながら、ジュースをずずっと音を立てて飲む。ふとカレンダーが目に入る。四月一日。トシはそう言えばと疑問を持つ。
「夢を見たことが嘘で、没案がさっき読んだ小説って説ありだったりする?」
ノダカの口角が上がる。
「イッツ。ザクトリー。正解! トシなら見抜いてくれると信じていた」
「通りで世界観がやたらと具体的だと思ったよ!」
荒れた声を出すトシにノダカは楽しそうに笑う。
「はっはっは! 人を傷付かない嘘とはこういうことなんだよ! さあさあ。トシ君よ、エイプリルフールなんだから、嘘を付きたまえ!」
ノダカは構える仕草をする。トシは枕を取って、ノダカに投げつける。
「できるか! リミットを考えろ!」
こうして男子高校生の四月一日はいつものように過ぎ去る。新学期になったら、互いに忙しい学生生活となる。だからこうして異なる高校に行く幼馴染はくだらない話でも、全力で楽しんでいくのだ。
転生したら近代風ファンタジー世界だった件(四月嘘) いちのさつき @satuki1
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