転生したら近代風ファンタジー世界だった件(四月嘘)

いちのさつき

第1話 転生したら近代風ファンタジー世界でした

 自分は転生者だ。前世の記憶を持つ。だから前の知識や言葉を用いて表現したい。ついに自分も異世界転生した。ただし……なろう系でよくあるタイプの世界ではなく、産業革命など近代風ファンタジー世界だが。


「俺は殺される! 殺される!」


 麻薬中毒になっているおっさんがいたので、マシなところに移動する。水道管やガス管などを伝って、飛び降りて、暗いところに行く。自分がいるところは都市にあるスラム街だ。前世で言う産業革命に近いものが起こって、人口が一気に増えて、格差が起こっている。魔力と金が全てと言ったところか。あと衛生という概念がまだないので、綺麗になっておらず、鼻が曲がるほど臭い。


「ほれ。今朝の新聞だ」


 はした金で爺さんから新聞を買う。またかとため息を吐く。連続殺人事件が起こっているのだ。ジャックザリッパーみたいな事件がここで起こっている。被害者は若い女性なので、ガキの自分には関係のないことだが、法則性はいつなくなるか読めない。


「治安も悪化してるんだと。妬みで呪術師に依頼とかもあるし、術を試すために子殺しをする輩だっている。最先端や安全はぜーんぶ金持ちと貴族が持っている。俺もいつか田舎でのんびり暮らしたい。けど能力ないしなぁ」


 新聞の爺さんが愚痴る。


「子供のお前ならまだ大丈夫だろ。老いぼれた俺と違って、力仕事ができるし、何でか文字も読める、魔法の才だってある。上手く金を貯めて、汽車に乗って、向かうのもありじゃないか?」


ここの国の田舎は自然豊かで土が良く、農業を支えている。だからこそ、魔物たちが集まりやすく、狩人という専門職がいる。田舎に行けば、不便なところはある。しかし都市より綺麗だし、人と接する回数が少なくなるし、のんびりと暮らすことができる。よくあるなろう系みたいに表舞台で目立ちたくなんてない。そのためにバイト扱いの仕事の路銀を貯めて、汽車に乗って、狩人になろう。そうすれば上手く行くはずだ。

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