第13話 彼女を『俺』として
「おはよ……相変わらずこの言い方でいいのかわからないけど」
「う~ん……ってえぇ!? イトナさん!?」
混乱しつつも急いで起き上がる。
「あ、うん。そういや言ってなかったっけ」
「初耳っすよ! ってか近くに居なくても入れるんですか?」
「仮にも夢の悪魔だからね。睡眠に関しては大体何でもできるんだ。寝かせる夢に入る見る変えるから起こすのまで何でもござれ」
それであんな一瞬で寝れたのか、合点が行く。
「なるほど……それでどういう用件で?」
「ああ、情報のやり取りはこっちでやっちゃった方が効率いいかなって。徹君の体はちゃんと休めてるからそこは安心して。体はね」
「それなら良かっ……え、体は?」
「うん、要は夢を見るってのはずっと「おはよ……相変わらずこの言い方でいいのかわからないけど」
「う~ん……ってえぇ!? イトナさん!?」
混乱しつつも急いで起き上がる。
「あ、うん。そういや言ってなかったっけ」
「初耳っすよ! ってか近くに居なくても入れるんですか?」
「仮にも夢の悪魔だからね。睡眠に関しては大体何でもできるんだ。寝かせる夢に入る見る変えるから起こすのまで何でもござれ」
それであんな一瞬で寝れたのか、合点が行く。
「なるほど……それでどういう用件で?」
「ああ、情報のやり取りはこっちでやっちゃった方が効率いいかなって。徹君の体はちゃんと休めてるからそこは安心して。体はね」
「それなら良かっ……え、体は?」
「うん、要は夢を見るってのはレム睡眠中ってことだから脳は休まりにくいんだよね。けどちゃんとその辺は考えて打ち切るから安心して」
「ありがとうございます」
「なんか痕跡見つけた?」
「痕跡とはちょっと違うかもしれないんですけど……いいすか?」
だったらあれの疑問を早く解決できるチャンスかもしれない。
「お、何?」
「はい。それに触ったら何と言うか……彼女についての記憶?が戻った感じがして」
「本当か!?」
イトナさんは急にテンションが上がる。相変わらず夢の中と外で全然キャラ変わるなこの人。
「あっはい。なんかやばいんですか?」
「大収穫だよ! 今日はそれについて言おうと思ってたんだ」
「それ?」
「うん、思い出すのに一番大事なのはか『記憶』と『記録』を明確に分けることなんだ。昨日夢で見て『そんなのあったんだ』ってなるのが『記録』で『そんなことあったな』ってなったのが『記憶』ね。この『記憶』をできるだけ増やそうって話だったんだ」
「なるほど……俺の場合はテレビの内容とかカレーを混ぜてたりしてるとこが『記憶』で彼女に関するもののほとんどが『記録』って感じですね」
「うん。だからたぶん徹君は『彼女について忘れる』って命令されたって感じだよね。彼女に関係ないことは前後が封印されてるからそれに付属して忘れちゃってるだけだから簡単に思い出せたって言う」
「はい」
「だから今日から毎日あの日の夢を見まくってもらって少しづつ紐づけしてもらおうと思ってたんだけど……まさかもう彼女を『記憶』として思い出してるなんて、一体何を見つけたんだ?」
「あ、髪です」
「……え?」
「だから髪の毛ですって」
「ああ! もしかして束で落ちてたってこと?」
「いや一本だけですね。窓のサッシに挟まってるのに触ったら記憶がブワっと来て……」
「えぇ……ちなみにどんな」
イトナさんは割と引いている。まあ俺が聞いても引くと思う。
「あ、髪を乾かしてあげてた時の記憶です。まあ顔は見えませんでしたけど」
「なるほど……ならまだ納得いくかな、髪を触ったことで髪について思い出したんだと思う。何か髪について感情が動いたことでもあったんじゃないかな? 大方綺麗だな~とかだと思うけど」
「……ちょっとだけですけど。でも理由がわかってよかったです」
「言うて一本でその濃さの隷属紋による命令に抗えたの意味わかんないけど」
「はは……まあいいじゃないですか、思い出せたんですから」
「まあ、それだけ徹君が本気っていう証明でもあるしね。じゃあ幸先いい感じ時だし早速本題に入ろっか」
「本題?」
「うん。さっきちらっと言ったけどひたすらあの日を繰り返して『記憶』として引っ張り出すってのなんだけど」
「あ、そういや言ってましたね。でも前回思い出せなかったのに意味あるんですか?」
「意味なら二つある。まず『記録』と『記憶』を明確に分けること。何が思い出せて何が思い出せないのかをできるだけ細かいところまで区別する。そこから何を思い出すべきなのかを割り出せるんだ。それと徹君が髪の毛から思い出せたように何か彼女に大した強い感情を持つ箇所があってそこに『記録』という形でも痕跡をぶつければもしかしたら『記憶』として思い出せるかもしれない。正直こっちは望み薄だったけど事実思い出せた今可能性が出てきた」
「つまり夢だけで思い出すって言うよりは夢で思い出すまでの土台を作って思い出しやすくするって感じですね」
「うん。できる?何回か繰り返すことになっちゃうけど」
「何回もって確か彼女が目覚めるまで二時間くらいかかりましたよ? 見れても二回とかなんじゃ」
「ああ、夢の中と現実の時間は割と関係ないから。徹君だって今まで見た夢全部が数時間しかなかったわけじゃないでしょ?」
「あ、確かに」
「でもやりすぎは脳に負担がかかるし今日は三回くらいにしよっか。最初だし慣らしてこう」
「いや、最初だからこそギリギリまでお願いします。脳みそが動くうちに数こなした方が良いですって。一徹くらいなら明日大丈夫ですし。七時半まで見れる限界をお願いします」
「……まあ一理あるけど流石にそれはやりすぎだよ。それにいくらゴールデンウィークと言っても学校はあるんだし、何より体に良くない」
「それでもお願いします。彼女を『俺』として思い出せた今めっちゃやる気出てるんすよ、会いたい理由がより明確になりました。だからこそ今なんですよ」
イトナさんの目をじっと見る。俺のために言ってくれているのは痛いほどわかるがだからこそ俺の本気を受け取ってくれるはずだ。
「そっか……じゃあとりあえず一回だけね。まずそうならすぐやめるから」
「ありがとうございます。やっぱり優しいですね」
「……優しくなんかないよ。優しいなら絶対止めるべきだ」
「でもそれって俺のために許すか俺のために許さないかで迷ってくれてるわけじゃないですか。やっぱり優しいですよ」
「そんなことは……もうとにかく! 始めるよ。少しでも危ないと思ったらすぐ止めるからね」
そう言ってイトナさんは俺の頭を掴み、なにか唱える。
「それじゃ行ってらっしゃい……ドリームマニピュレーション!」
その声を聴くと、もう一度意識が落ちた。
吸血鬼の少女と変化した日常 十晴 @NEKOYATak
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