依頼達成、そして貸し

 ミレーヌにはもちろん見てるだけに留めさせて、俺とルアでゴブリンを狩った。

 一応、普通の子供だったら結構泣き出しそうな感じのゴブリンの死体も出来たりしてたけど、ミレーヌは特にそういう様子は見せなかった。

 多分、俺とあの洞窟で暮らしてたからだな。

 何回か魔物を狩るところを見られたことあったし。


「ミレーヌ、大丈夫か?」


 そう思いながらも、俺は一応、そう聞いた。

 いくら平気な顔をしてても、内心では怖がっている可能性だってあるしな。


「大丈夫だよ? 何かあったの?」


「なんでもないよ。大丈夫ならいいんだ」


 ルアは聞くまでもなく大丈夫だろうし、さっさと戻ろう。討伐部位もちゃんと袋に入れて持ってるし、特に長居をする理由もないからな。

 

「そろそろ戻るか」


「うんっ! レヴィ、帰りは自分で歩くよ!」

 

「そうか、偉いな」


 ミレーヌの意思を尊重して、俺はミレーヌを下ろした。

 これが自立して行くってことか。親離れも近い……ことは無いな。

 まぁ、親離れはまだまだでも、少しづつ成長してることは事実だし、まぁいいや。


 そう思いながらも、三人で手を繋ぎながら、ギルドに戻った。

 ルアとも手を繋いでるのはもういつもの事だと慣れることにした。実際、もう慣れてきてるし。

 ……これもルアのことを好きになっていってる証拠なのか? ……うん。無いな。

 別に嫌いなわけじゃないけど、好きだとは思えないし。可愛いとは思うけど。


「い、依頼達成です。お、おめでとうございます」


 そんなことを思いながらも、ゴブリンの耳を渡して、依頼達成の報告をすると、未だに受付嬢に怯えられながら報酬を渡された。

 ……だから俺じゃないって。……別に他人だし、どうでもいいんだけどさ。


「近くにいい宿はあるか? 治安が良くてなるべく安いところがいいんだが」


 俺は受付嬢にそう聞いた。

 自分たちで探すより、こうやって知っているであろう人に聞いた方が早いからな。

 

「い、一応、予算を聞いてもいい、ですか?」


「……今の報酬分って言ったら、キツいか?」


「は、はい……ひ、一部屋なら、借りられると思いますけど」


 一部屋なら借りられるのか。


「あっ、で、でも、食事付きなら、もう少しかかるかもです」


 ……つまり、俺は今二択を迫られてるわけだ。

 ルアに借りを作ってでも、金を借りて食事付きで宿を借りるか、今からもう一つ依頼を受けて食事付きの宿を借りるか。

 ちなみに、食事が付いてない宿を借りる気は無い。俺たちだけならともかく、育ち盛りのミレーヌがいるんだ。食事抜きなんてありえない。

 

「そうか、わざわざありがとう」


「い、いえ」


 そんなやり取りをしつつ、何故か俺は怯えられてるから、その受付嬢から離れて、ルアに聞いた。


「ルア、俺たち三人で同じ部屋でいいか?」


 答えなんて聞くまでもないけど、勝手に決めるのは良くないと思ったから、一応な。


「うん、いいよ。でも、お金はどうするの? 僕のを使う?」


「……借りるよ」


 本当はルアに借りなんて作りたくないけど、ミレーヌの為だと思って、俺は渋々ではあるけど、そう言った。

 

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平凡な村に守り神として君臨して早1000年、今までこんなこと無かったのにいきなり生贄が捧げられた俺はこの娘をどうしたらいいんだ? シャルねる @neru3656

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