19☓☓年☓月☓日 某所裁判所

「被告人を死刑に処する」


 長年の裁判によって言い渡された判決。


......死刑


 当然だ。あいつは私の家族を殺すだけでは飽き足らず、人形のようにもて遊び辱めたのだから。地獄に落ちるべき犯罪者。


 膝上に置かれた遺影に映るかわいい我が子を抱きしめる私を、優しく抱きしめてくれる夫の温かさで涙がこぼれる。


 他にも私と同じ境遇の親族達が泣きながら喜んでいる姿が見える。そしてたった今、法廷から警察に連れられ退出しようとする犯罪者に目を向けた。


 まるで何も映していない様な腐った瞳と、気色の悪い笑みを浮かべるあの男に私は血の気を引く様な感覚を覚えた。


 あの男は決して反省などしていない。きっと死んでも改心しないだろう。そう思えるあの男を見た私は、つい立ち上がり男に向けて暴言を吐いてしまった。


「あんたなんか地獄に落ちてしまえばいいんだ。私達の子供の苦しみを一生味わって後悔しろ!!」


私の行動に夫は驚愕の表情を浮かべながら、席に座らせ落ち着かせるようにもう一度抱きしめてくる。


 だが次の瞬間、男の口から信じられない言葉が吐き出される。


「あなたのお子さん。■■ちゃんか? 俺が死んだらあの世でまた愛してやるから。安心しろよな」


 その場にいる全員が絶句していた。すぐに裁判官が退出を促し、警察も強引に男を連れ出す。男は抵抗する様子も見せず、ただあの気色悪い薄ら笑いを浮かべながら出ていった。


 私の遺影を握る力が強まり、遺影の入ったガラスが砕け指の皮が裂ける。だがそんな痛みも忘れるほどの衝撃に、私はただ泣くことしか出来なかった。


 神様はなんて理不尽なんだろう。あんなクズが生き苦しまずに死んで、娘は地獄のような苦しみの中で衰弱して死んでいった。


 どうかお願いします。たとえ私が地獄に落ちてもいい......だからあの男を......


無間下さい



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ゴクラクは何処迄も 萎びた家猫 @syousetuyou100

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