日記
尾長律季
第1話
私は、日記を書いて、それを取っておくことが苦手だ。過去の自分から届く贈り物。それは、怖いもの以外の何ものでもない。1ヶ月もしないうちに、シュレッダーにかけてしまう。だから、そのうち紙がもったいないなと思い始めた。そして、1年ほど前から日記を書くのを辞めた。
夫は最近、私の日記を読むことにはまっている。私に隠れて読んでいるつもりなんだろうけど、夫は集中すると気配すら感じられないらしく、視界に入りそうな場所に私がいても、その日記を読むことをやめない。
「ねえ。なんで私の日記を読んでいるの?シュレッダーにかけたんだけど」
「……」
ぴくりとも動かない。急に身体に触れたら驚かれるだろう。でも、さすがに集中しすぎだ。しかも、人の日記だ。
「ねえってば!」
「うわっ!びっくりした」
夫は、本当に驚いた顔をした。わざとやっている気もしたが、わざとではなかったらしい。
「まったく。それ、なんで持ってるの」
少し怒ったような口調で言ってしまったが、彼は気にすることもなく答えた。ただ、少し動揺したように見えた。
「これは、その。……本棚に挟まってて」
「ふーん」
この日記を本棚にしまった覚えはないが、日記を全て捨てたかは分からないから、特に何も言わず、この話を終わらせた。
正直、恥ずかしいことも書いていないから、見られても別にいい。見てもいいかどうかは聞いて欲しかったけど。
日記 尾長律季 @ritsukinosubako
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