第16話 4月9日 青木みどり弁護士

 4月9日(火曜日)13:30 法律事務所第1回目の相談 つづき


 青木みどり弁護士は続けた。


「だから、離婚は向こうがしたがるかどうかは分からないけど、

 交渉はなかなか難しいでしょうから、調停ちょうていの場を設けようと思いますが」


「でも基本、あちらが離婚をウンと言わなくても、調停はウンと言わないと進まないんだけれども、

 裁判になったら、裁判所が離婚原因があるかどうかを判断します。

 離婚原因というは、不貞だったり、暴力だったり、その他婚姻を継続しがたい重大な理由があれば、離婚を認めるんですよ。」


「このケースだとやっぱり、浮気はあるわ、トーサツはあるわ、なんていうんですかね、ちょっと変態じみた、あの女性の...ね」


 涼子「はい」


「もろもろの行為があるし、それに対する証拠というものがあるので、離婚原因はある、という話になります。だから早晩そうばん離婚にはなりますよ、という前提で調停では話をすることになると思います。」


 涼子の想像のとおりだったが、はっきり弁護士の口から聞けたことで、大丈夫だと自分が肯定された気持ちになれた。


「向こうも『離婚はしない』と言っても、結局通りますよ、という話をぶつけると思うので。そうしたら、財産分与とか、その他の条件の話になると思うんですね。』


 涼子は聞きたいのは、その先だ。


「親権は子どもさんがお母さんと居たいと言うでしょうし、基本お母さんだと思います。このからすると。

 では親権を決めると次に養育費を決めないといけない。養育費は夫の収入とそれぞれの収入をベースで計算をします。」


 涼子はこの時、今の日本は離婚すると一方の親のみが親権をもつ「単独親権」の仕組みしかないこと、この数日で「共同親権」の民法の改正案が国会で成立しそうなことは、まったく知らなかった。


 「共同親権」が可決されれば、別れたDV夫のハンコがないと子どもの進学や引っ越しも決められない、DV加害者の武器となるリスクがあるなどの議論がされている。


 何も知らない涼子の一番の心配は、離婚した後の生活だ。つまり経済的にな補償があるのか。


 青木「養育費は8万3千円くらいになるかと思います。」




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未完成リコン 村山えりこ @murayamaeriko

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