3 エピローグ
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規制線が張られたメンタルクリニックの入り口で、白いてるてる坊主のような式神が慌ただしく動いていた。
てるてる坊主たちはメンタルクリニック内の調査を行うのが仕事で、
「……やはりこうなってしまったか」
カウンセラー兼
「なんで? 初めからこうするつもりだったんでしょ?」
「
「お腹空いた」
「車の中に板チョコがある」
「食べる」
女性はがちゃがちゃと音の鳴る左腕の義手を動かし、右手に持った煙草に火をつける。その隙に、盡はスタスタと規制線を越えて車に向かった。
「……やはり、一筋縄ではいかんか」
女性はロビーの椅子に座ると、式神が集めた捜査結果を、黒いスマホで閲覧する。
医者としての評判は業界随一。私生活に乱れもなく、これまでに精神疾患を寛解させた想術師の数は数百人を超える。それが、ここ数か月で五件もの完全犯罪を行った、
手口はどれも単純だ。被害者を安心させ、完全催眠状態にした後、特殊な暗示をかけた薬を投与し、自然と死に向かうように偽装する。体に入った暗示は死と共に完璧に消え失せ、死体をどれだけ調べても自殺という結論にしかならない。
彼のように、通常の捜査や法では決して裁けない存在のことを
「心の病を治療するうちに、自らも心の病に囚われてしまった、ということか……難しいな」
「早く帰ろうよ」
女性は式神が押収した証拠品の中で、一つ気になるものを見つけた。
「
名刺のような、小さなメッセージカードだった。それに、流れるような字体で文字が綴られている。
「後は帰ってから分析だな……」
その時、不意に女性の黒いスマホが鳴る。
「
電話を切った
「あとは式神に任せて帰るぞ。後任の
二ッと笑う七楽に、盡は首を傾げる。
七楽は肩に乗せたジャケットを翻し、盡と現場を後にした。
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