しあわせ素肌な日々

@michigami

第1話

4年前の話です。


股間に出来物が出来てるのは自覚してたんです。


トイレでお尻を拭いた時に赤いものが混じってて、最初は痔がひどくなったのかと思いました。


しかし痔にしては場所が変なのです。

股のセンターの睾丸から肛門の間、俗に“蟻の門渡り”と呼ばれる部位にぽつぽつと、触った感じ1cm程度の出来物が2つほどあり、どうやらそれが破れて出血しているようなのです。


場所が場所だけに躊躇してたんですが、勇気を出して泌尿器科に行ったんです。

そしたら

「これは性病じゃないから。外科に行って。」

と言われ、紹介状を持たされ外科のある病院に行くことになりました。

紹介して頂いた病院では両脚を手で抱え、総合格闘技でいうガードポジションの体勢のまま医師や看護師に代る代る股間を凝視されました。

その後レントゲンやらCTやらで検査の結果医師から出た言葉が

「様子を見ましょう」

でした。

そんな事を言われても、既に股間の出来物は破れて常にパンツ血だらけの様子です。

一体何の様子を見ろというんでしょうか?

既に出来物は増殖しひとつ潰れたらまた新しいのが出来、もはや全盛期のアブドーラ・ザ・ブッチャーの額のように常時出血している状態です。


差し当たりこの出血だけはどうにかしないと、職場でお尻真っ赤っ赤です。

途方にくれる私にAmazon君が一つの提案をしてくれました。


【ロリエしあわせ素肌 多い昼用】


正直悩みました。言わずもがな女性用生理用品です。

コンビニでレジに出すときに躊躇する商品として、コンドームとツートップを形成するアイテムです。

しかも私は独身のオッサン。

「妻(彼女)に頼まれて」

などどいう言い訳が通用する筈もありません。そもそも言い訳なんてする必要もないんですけど。


そう言っている間も私の股間からはダラダラと際限なく血が出続けています。ブッチャー場外乱闘の大活躍です。

商品の意図した使い方ではありませんが、ズボンへの出血滲出を堰き止めるという意味でこれほど理にかなったアイテムはありません。


ここはもう四の五の言わずAmazon君提案に乗る事にしました。


Amazon君いつも迅速な対応ありがとうございます。ポチッた翌日に届いたロリエを開封しました。

齢50にして初めて仔細に見る、三つ折りにテープで封をしたそれをまじまじと眺め、そして愛用のブリーフに貼り付けました。

恐らく本来の用途から約45度転回した貼付位置ですが、付け心地は悪くありません。さすがに

『何も付けてない感じ♪』

とは思いませんでしたが。

そのことよりも長時間しっかりブリーフに貼り付き、出血をキャッチしてくれるホールド力に感嘆しました。

今までガーゼとサージカルテープで試行錯誤していたのは何だったのか...。これが

『ヨレずにモレない』

の実力か!


差し当たりお尻真っ赤っ赤を回避することは出来ましたが、本丸の出血は全く治まる気配がありません。

医師のアドバイス通り充分様子を見た事ですし、これ以上放置する理由はありません。再度病院を訪問し再診察を経て、総合病院を紹介されました。

総合病院でMRI検査の後、判明した病名は「痔瘻」(通称:あな痔)です。

簡単にいうと直腸に小さな穴が開いてお尻の色んなところに出口が出来る、というやつです。

いくら様子を見ても治る病気では無いので、人生初の入院をして手術する事になりました。

手術自体は滞りなく終わり5日で退院したのですが、術後の穴に差した化膿止めチューブ、これが痛い!

いや普段立っている時はなんともないんですけど、座った時が…。レゴブロックをお尻に敷いたみたいなんですよ。

そろ~りそろ~り、股を刺激しないように座って...。

いかんこれでは仕事にならない!

困り果てる私にまたもやAmazon君が提案をしてくれました。


【(現役助産師推薦)産褥期用円座クッション】


...いや私経産婦じゃないんですけど。


しかしその形状を見れば見るほど、これほど私の不便を解消してくれるアイテムはありません。

股しても、もといまたしても四の五の言わずAmazon君提案に乗る事にしました。


いつもながら迅速に届いたそれを職場の椅子の座面に置き、恐る恐るお尻を付けてみると...。

おおお...ナイスサポート!

股間のセンターのちょうどチューブの差さったところを回避して、座骨の辺りでしっかりとお尻を受け止めてくれています。

いや~快適快適♪


差し当たりの困り事は解消しました。しかし

《ロリエを常に着用しつつ産褥期用円座クッションに座って仕事をする男》

が大きな声で言える事か?という懸念は残りました。言う必要はないんですけど。


話は変わりますが、かつて関西地方でスポット放映された

【青春カタルシス】

思春期男子の性に対するやるせない思いを、伊集院光さん、みうらじゅんさん、岡田圭右さんのお三方が

それぞれの語り口で的確に表現されていました。

録画したものを今でもたまに見返します。


親にオナニーを見られる。

誰しも一度は経験することです。

【青春カタルシス】で、伊集院光さんは

《パン1でマッサージチェアに跨って励んでいる》

ところを見られて

「なんでもないから!」

で押し切ったと話され、みうらじゅんさんは

《全裸で床にこすり付けている》

ところを見られて

「泳ぎの練習をしとんねん!」

で押し切ったと話されていました。

私のケースでは20歳のころ

《寝そべってズボンとパンツを膝までずりさげている》

ところを母親に見られて

「着替えとんねん!」

で押し切りました。

母親が出ていった後で

(この体勢でする着替えってどんなシチュエーションやねん)

と心の中でセルフ突っ込みを入れたものでした。


それから30余年が経ち、手術後の検診で病院に行った時、看護師さんに

「そこの診察台に横になって、ズボンとパンツを膝まで下してください」

と言われ、その通りの体勢になりました。

診察が終わると看護師さんに

「終わりましたので、お着替えしてください」

と言われました。その瞬間30余年前のセルフ突っ込みの事を思い出し

(なるほどこのシチュエーションか!)

と膝を打つ思いになりました。

20歳の頃苦し紛れに発した

「着替えとんねん!」

のボケと

(この体勢でする着替えってどんなシチュエーションやねん)

ののセルフ突っ込みに、30余年を経て

(このシチュエーションじゃ!)

のダブルセルフ突っ込みをするとは思いませんでした。

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