26、福山の夜は更けて

 二次会がお開きとなり、妻と子は一足先にホテルへと戻ったところで、今度はホテルのバーへと移動となった。

 島田先生と中山先生は、それぞれお疲れなのかお忙しいのかお戻りになり、先輩作家たちと編集者さん、それに事務局の方々が一緒だったと思う。


 そこでようやく、同じ第16回の最終選考に残った野島夕照さんとお話しすることができた。

 その会話の内容が、あろうことか海外サッカーであった。

 聞けば、野島さん、そして前回優秀賞の松本忠之さんは、共にサッカー好きとか。そしてJリーグもさることながら、海外サッカーにも興味があるとのこと。


 そう、私もご存じの通り(知らん)、創作活動を始める前からのトッテナムファンである。

 トッテナムホットスパー、通称スパーズはイングランドプレミアリーグの強豪であり、私は実にファン歴16年の筋金入りなのだ。

 ちなみにJでは地元の松本山雅を当然ながら応援している。


 その3人でよし、福ミス作家によるサッカー観戦部発足だ! と盛り上がったものである。


 いやー、楽しかった。


 しかし福山の夜はまだ終わらない。

 そこから更に、駅近くのとあるバーへと移動することになった。編集者の皆さんも引き上げ、本当に作家だけの会である。


 なんでもこのバーは、先輩作家の明利英司さんという方の行きつけだという。

 この明利さんがまた面白い方で、なんと小説家にして寿司屋というすごい人なのだ。


 明利さんの案内で移動する道すがら、今度は松本寛大さんとお話しをする機会があった。

 松本寛大さんは福ミスの記念すべき第一回受賞者なのだが、なんとこちらも私が愛してやまないクトゥルフ神話TRPG(CoC)の関係のお仕事をされているのである。


 こちらも大変気さくな方で、私の「CoC関係のお仕事、してみたいです」という意味分からんぶっ込みにも優しくアドバイスをしてくださった。

 いつかはアドバイス通り、自作のシナリオでコンテストにチャレンジすることを決意したものである。


 バーでは、知念さんの業界裏話トークに耳を傾けつつ、今度は平野俊彦さんと酒本歩さんと話が盛り上がる。

 このお二人は、以前からXでやりとりをさせていただいていたのだが、それだけでなく同じ信州人という共通項があった。

 お二人とも実に面白い作品を書かれている方であり、まずは私が目標とすべき作家だと思う。


 そのお二人とは、「よし、福ミス信州支部発足だ!」と盛り上がった。

 どうもあれこれと勝手な部を立ち上げるヘキがあるな、私は。

 ちなみに、そこで交わされていた知念さんと北里紗月さんのお話も非常に興味深かった。

 北里さんは近著「赫き女王」でバイオホラーにチャレンジされており、知念さんの「ヨモツイクサ」と併せて大変おすすめの本なのだ。


 余談になるが、昨年の暮れ頃、Xで北里さんの新刊が「赫き女王」というタイトルであることを知った私は、非常にビビっていた。

 お気づきの通り、私のデビュー作とタイトルがかぶっているのである。

 まさか、内容までかぶっていないだろうな。いや流石にそんなはずはない。などと一人ガクブル状態だったのだが、ジャンルがバイオホラーであると聞いて胸をなで下ろしたものである。

 

 そんなこんなで福山の夜は楽しく更けていき、やがて深夜12時が近くなったため解散となった。

 何しろいろいろな先輩たちと話ができて楽しかったのだが、朝からフル稼働の麻根である。

 ホテルに帰り着いた頃には流石に疲れ果てていた。


 で、ここから本題なのだが。


 私はそのとき、非常に迷っていた。


 先ほど書いた通り、私はトッテナムの大ファンである。

 作家としてデビューしたからには、当面の目標としてウィキペディアの「トッテナム」のページに、ファンを自称している有名人一覧の欄、伊沢拓司に並んで麻根重次と書かれること、を掲げるくらいである。

 いや、まあこれは勝手に言ってるだけなのだが。


 ちなみに言っておくと、現在執筆中の次回作では、トッテナムがプレミアリーグ優勝するというくだりを混ぜ込んでおいた。

 校正さんから「トッテナムが優勝する筈ありません」などという突っ込みが入らないことを切に願う。


 ……なんの話だ。また脱線しまくっている。


 つまり何に迷っていたのかというと、その日の深夜、トッテナム対フラムの一戦があったのだ。

 ここ数シーズン、トッテナムの試合は欠かさずに観戦している私としては、見逃したくはない。

 しかし流石に明日もイベントがあり、寝ておかないと身体が持たない。

 

 悩むこと30分。

 ――その間に寝とけよ、というのは置いといて、私は睡眠を選んだ。


 流石に人生の一大事だ。

 背に腹は代えられまい。


 そうして眠りについたのだが、翌朝速報で目にしたスコアは、0-3の惨敗というものだった。


 おい、アンジェ*。

 まるで作中の山雅のスコアが壮大なフラグみたいじゃないか。

 こんなタイミングで大負けしてるんじゃないよ。


 というわけで、これを読んでいる皆さんには、是非トッテナムホットスパーを応援していただきたい。

 推しを聞かれたら、マディソンかファンデフェン、と答えとけば間違いないから。


 *スパーズの現監督

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