食事に毒を

トンケント

第1話

 魔王を倒すべく、私は仲間と共に魔王城で働いている。まあ、正確には仲間ではない。魔王を倒した者に賞金があると言うのだからな。賞金はこの俺が独り占めしてやる。

 邪魔されてはたまらない。信用できないから協力はしない。当たり前のことだ。


 ここ500年、魔王に挑んだ者は数知れないが、結果として人類は敗れてきた。   

 敗因としては、私ほどの知性がなく、真っ向勝負に賭けていたことだろう。


 チャンスが訪れた。料理を運ぶ仕事を任されたのだ。毒を盛って出せば俺のハッピーエンドは間違いなし。作戦が完璧すぎる。

 気がつくと、手が震えていた。緊張でなく、自分の才能にだ。

 


「これを魔王様の所に」

 俺は今日を魔王の命日と決めた。

 言われた通りに料理を運ぶ。

 それにしてもいい匂いだ。蓋をしていても香りが漂ってくる。

 俺がブレンドした〝毒の塩〟をかける前に、この美味しそうな料理を味見しておこう。

 蓋を開け、ソースをペロリ・・・。

 うっ、とても苦しい。

 俺の仲間も同じことを考えていたのか。

 ・・・いや、正確には仲間でない・・・。


 彼の意識はここで途切れた。


 その後、調理室にいた人間は料理に毒を盛ったとして監獄に入れられた。

 今後、魔王に出される料理には毒味することが義務付けられた。

 ソースをペロリして、死んでしまった彼は、魔王を守った英雄として語り継がれた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

食事に毒を トンケント @tonkento

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る