第189話 転生少年、無自覚にやらかす。
時間が掛かった割には短めです。
ただ、これより長くしてしまうと……飯テロ回に突入してしまう!
のでここで一旦切ります。ワシ今腹減っているのよ……
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ビョウッ! と音を上げてクリン手製の鏃を付けた矢が空を割いて飛び、枝に止っていたずんぐりした鳥の首を正確に射抜いた。
ポトリと射抜かれた鳥が地に落ちると、隣に控えていた精霊獣の頭の上から小さいながらも拍手が送られて来る。
「お見事ですクリン殿! 凄いですね、人族の中でもまだ子供の筈なのにここまで正確に射れるとはっ!」
拍手の主は精霊獣——大型犬サイズに姿を変えたバウンの頭の上に乗ったロティだ。
「いやまぁ……弓は練習しているので。ですがどちらかと言えばお二人の方が凄いですよ。狩りは狩ること自体よりも、獲物を見つけて気が付かれない様に近づく事が一番難しいのですから」
この一匹と一人(?)が狩りについて来てくれた事で、普段よりも遥かに楽になったと言うのがクリンの偽らざるる心境だ。
クィン・シーのバウンは容姿が犬とほぼ同じだけでなく特徴も非常に近い。鼻が良く離れた場所から獲物を探せた。
そして小人族の少女ロティ。小人族の特性なのか非常に目が良かった。数キロ先のネズミすら見つけられる程だ。
そしてクィン・シーのバウンとの組み合わせが非常にいい。バウンが臭いを嗅ぎつけ、ロティがその場所を目視で確認し長も使っていた小人族の特有魔法でクリンにだけに聞こえる様に獲物の場所を教える。
獲物に近づくまでにコレはクィン・シーの特性なのか魔法の風を生んで後方に流し音と臭いが相手に届かない様にしてくれる。
「ココまでお膳立てしてもらって外すようでは森で狩りなど出来ませんよ」
と、クリンは一匹と一人に向かって苦笑交じりに言う。クリンもつい先日デミ・ゴブリン・アーチャーとの死闘を制した事で弓に自信は持っている。
それでもキロ単位先の相手の居場所が分かって近くまで近づいても警戒されないとか、そんな芸当は出来る訳が無い。
お陰で仕留められた獲物はコレで三匹目だ。しかもクリンが予め狙っていた鳥だけで、だ。コレまでの単独の狩りでは特定の獲物だけを狙う事も出来ておらず、この成果は主に彼らのお陰である。自分の腕を褒められた所で面映いだけだ。
「兎も角、お陰様で予定していた数の鳥が狩れました。無理な様ならウサギで代用しようと思っていましたが必要ありませんでしたねぇ」
クリンが仕留めた鳥はバウンが咥えて取って来て、背中に背負っていた袋にロティが仕舞う。本気で弓を射た以外に少年はやる事が無い。
「……これが普通になってしまうと狩りの腕が落ちてしまいそうですね。まぁ、今回だけの特別と言う事で戻りましょうか」
クリンがそういうと、一人と一匹は「はい!」「バフンッ!」と元気に答える。
「所であの鳥って名前有るんですかね? 今まで見た事の無い鳥なのですが」
来た道を戻りながらクリンが府と呟くと、ロティが、
「アレはポットロですね。普段は水の多い場所にいるのですが、産卵が近くなると森に来て太って体力を付けてまた水辺に戻って出産すると言う、変わった性質がある鳥です。森に来る期間が短い事と、産卵をしない個体は来ないので森で目撃する機会は少ないですね」
「へぇ、変わった習性があるんですねぇ。成程、確かに太っていて美味しそうではありましたが……でもそれで飛んで元の場所に戻れるんですかね?」
「ポットロは浮遊の魔法が使えるそうです。それで森に風が吹く時期にやって来て、風向きが変わる夏の終わり辺りに風に乗って帰って行くのだとか。なので人間族は綿毛鳥とか毛玉とかケサランパサラン鳥とか呼んでいますね」
「ちょっとまって、最後!? え、こっちにもあるのケサランパサラン!? と言うかいる事になっているの!? と言うか何で名前同じなんだろ!」
「へぇ、クリン殿の世界でもケサランパサランと言うのですか。面白いですね。あ、クリン殿の居た世界と言えば、時々私達の事を『ニンジャー』と呼びますよね。それってクリン殿の世界の小人族なんですか?」
ふと思い出した様にロティに言われ、クリンは苦笑しながら頭を振る。
「いえ、小人族ではなく特定の職業だった人達です。その職業の人達が貴方達と特徴が似ていたのでついそう呼んでしまっただけですよ。そもそも僕が居た世界には小人は居ませんでした。いえ、いたのかも知れませんがほぼお伽話の中でしか出てこないんですよ」
「ええ、職業って言う事は人間の技術って事ですよね!? 人族に我らと同じような特性を持つ者達が居るんですか! それは凄いですね、一体どんな人達なんですか?」
バウンの頭の上でキラキラとした瞳で聞いて来るロティに、クリンは微笑ましく思いついうっかりと、
「そうですね。忍者とは、僕の元の祖国日本で伝説となった職業の人達です。戦乱の時代に、主に特定の主人……王や貴族に仕えて忠誠を尽くし、主人の為に命を懸けて護衛をしたり、情報を集めたり妨害工策を行ったりした、貴方達のご先祖様と近い活動をしていた、すーぱー諜報員です!」
と、言ってしまった。それを聞いたロティが、更に目を輝かせる。
「我らが先祖と同じっ……! そ、それは一体どのような方々だったのですか!?」
「興味ありますか?」
「はいっ、勿論です!」
「ははは、良いでしょう、僕も忍者物は大好きですからね。一つ僕の世界の忍者の凄さを語って聞かせましょう!」
クリンも元は現代っ子。物作りに傾倒していたとはいえやはり漫画やアニメもタップリ見ている。少年が生きた時代でも忍者漫画やアニメは大人気だ。
そして何よりも。衛文時代の父親と、少年の担当医になった腕時計の趣味の悪い医者が合わせて時代劇マニアだった。しかも千葉〇一と真田広〇の大ファンだった。しかもタチの悪い事にシ〇ー・コスギも行ける口だった。
その薫陶を受けて育ち転生した少年は、狩りから戻る道すがら自慢気にロティに忍者物の話を講談師の様な口調で語って聞かせた。
コレで完全にフラグスイッチを踏み抜いてしまった事に気が付かず。更には。
クィン・シーと言う精霊獣達は、人の言葉がしゃべれないだけで理解出来ると言う事も、ウッカリと忘れていた。
その様に自分が地雷を撒いて自分で踏んだ事に気が付かないままに拠点に戻ったクリンは、狩った三羽のポットロ鳥の解体を始める。
血抜きは森で住ませてあったので羽を毟り内臓を取り除く。取り除いた内臓も新鮮な色で実に美味そうだったが、聞いた所小人族は内臓を食べないとの事。
だがクィン・シー達なら生のままでも食べるとの事だったので、狩りに付き合ってくれたお礼代わりにバウンに提供した。元のサイズに戻ったバウンには三匹分の内臓でも少なかったのかペロリと平らげてしまった。
自分の分だけでも食べてよかったのだが、内臓を料理するには匂い消しに使う香味野菜などが足りなかったので断念したのだ。
「味噌か醤油、それと生姜があれば間違いなく食べていたんだけどなぁ。幾ら新鮮な内臓でも塩だけで食べるのは流石にキツそうだ」
満足そうにしているバウンを未練がましく見ていたクリンだが、諦めて調理に戻る。大まかにポットロを部位ごとに解体し骨を抜く。肉も勿論使う予定だが、今欲しかったのはこの骨、そして解体した後に残るガラだ。
要するにクリンはラン麺作りで作ったウサギガラスープを鳥——今回は一人と一匹のお陰で獲る事ができたポットロ——で作ろうとしていたのだった。
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サ〇ー・千葉はマエストロ! 影の軍〇はワシのバイブル! 必殺シリーズも捨てがたいが忍者物では無いからな!
……うん、今更だがもうほぼ年齢バレてんじゃねコレ?
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