第183話 異世界ノ神之道(笑)
ようやく平常運転に戻れた。コレが続くと良いんだけどねぇ(笑)
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「ええと……教えるのは構わないのですが……これは実の所セルヴァン様用の儀式と言う訳では無いんですよ。元々は別の神様への……と言うか別の世界? うぅん、何て言えばいいんだろう……兎も角、系統が明らかに異なる物なんですよ。なので、教えた所で意味はそんなにないかと……」
「確かに、最初の祈りの言葉は聞いた事の無い言葉で意味は解りませんでした。異国の言葉だったのでしょうか。ですがその後の文言は我らにも理解できました。恐らく翻訳されたのでしょう。儀式としては異形なれど様式が確立しているのなら成立しますし、言葉を置き換えられるのなら問題ないと思います」
小人の長に言われて、クリンはようやく「ああっ!」と思い到る。ほぼ条件反射で祝詞を口にしてしまっていたが、考えてみたらこの世界の言葉ではなくガッツリと「日本語」で謳っていた。コチラの言葉には無い文言が多いのでそれは当たり前だ。
「やっばっ! 無意識で日本語使っていたよ……HTW怖ぇぇっ!」
日本語が通じる訳がないのだが、ちょっとした事で転生者と言う事が知られたら厄介事が無いとも限らない。
今の所外国の言葉を話す人物に何度か有っているが大きく異なると言うほどでは無かった。あからさまに言語の違う日本語を使うのはなるべく控えようと考えていたのだが、全くの無自覚で日本語の祝詞をあげていた事に驚愕するクリンだった。
「折角の用心が無意味じゃん……まぁ小人だからギリセーフか? ……いやアウトだなぁ……しかし分かりました。元の祝詞はお教え出来ませんが、此方の言葉に翻訳した物ならお教えしてもかまいません。ただ元はちきゅ……異国の習慣でして。本来必要な物が手に入らないので代用した挙句にこちらの言葉には無い文言を意訳しているので、何処まで正確か分からないですし意味があるか、本当に分かりませんよ?」
「おお、お教えいただけますか! 祈りと言うのは個々で自由にやっても、祭事はやはり特定の様式がある方が纏まると言う物です。意味は奉る気持ちさえあれば問題ないと考えて居ります。異国の様式なれど、それはこれから我らの様式になる様に考えて行けばよい事。先ずは基本の形として貴方様の方式を忠実に憶えたく思います」
そうまで言われてしまえばクリンとしても否やはない。それも所縁のあるセルヴァンを祀る為の物と言われれば、前世の祀り方を元に現地方式にするのも悪い事では無い筈だと考えられた。
「とは言え、今やっていたのは家を建てる時のお祓いみたいな物でして。神様を祀る為の物と言うよりも、神様に『新しく家を建てますから、事故とか厄などがない様に見守っていてくださいね』と言う感じの儀式です」
「ほほう! その様な儀式があるのですか! 我らの祭事はほぼ時空神に祈りと感謝をささげるだけの物で、その様な作業の際に祈ると言う事はしませぬ」
クリンの大雑把な説明に、小人族の長は感慨深そうに頷きながら聞いている。
本来、クリンがやっている様な祝詞は神職にある人がやる事だ。ただ、建築や土木関係、鍛冶作業等の儀式は神職が工期的に手配できない事も多いので、最近は現場監督や棟梁などが代理として行う事もある。
その関係でHTWではこれらの作業に必要な祝詞は組み込まれている。だが、流石に作業とは関係の無い祝詞までは抑えていない。
そちらまで入れてしまうと宗教関係の話になってしまうので、主にクラフト系の作業ボーナスの為の趣味行動と言う形で数種類を抜粋しているに過ぎない。
ただ、そこは凝り性のクリン君。ゲームで設定されているとあれば気になり個人的に調べてみようと言う好奇心をどうしても持ってしまう。
その為神職の資格は持たない物の、棟上げの祝詞だけでなく、祓詞と大祓詞、そして略祓詞を暗記して謳う事が出来たりする。
儀式の方も簡略であるが出来る事は出来る。基本的にはお供えをするだけだ。それ以上の所作は本職の神職のする事なので手を出してはいない。
その様な一通りの断りを入れた後、クリンは今回の祭事である棟上げの祝詞と所作を一通り教える。勿論原語である日本語では理解出来ない上に、此方には居ない神への祈りなので先程のやや怪しい翻訳版だ。
「成程、本式では名前を直接呼ぶ事も出来るし、簡略式では敬意の現れとして司る役職で呼ぶ、と言う訳ですか」
「はい。この形式の場合主神たるセルヴァン様……ボッター村ではその様に伝わっているのでセルヴァン様は第一に名前をあげますが、その他の神も名前を知っているのなら名を詠みますが、数が多いのと名が長い事もあります。また突然それまで祀ってこなかった神へ感謝をささげる事もあります。その場合などは誰でも知っている役職で呼ぶ方が間違いも無いのでそういう感じに変更する場合もあります」
「成程……二主神では無く時空神セルヴァンを主神と崇めるとは……そのボッター村とはかなり古い時代より存在しているのでしょうな。そうなればこの様式自体も相当古い物と言う事になる……やはり貴方様にお教えを願ったのは間違いでは無かった」
前世日本では紀元前には祝詞の原型が出来ているとされているので、確かに古い様式であるのは確かなのだが、別世界のそれも別の神への作法なので、長を始めとした小人達にキラキラとした目で見つめられて、何となくばつが悪く感じるクリンである。
「ゴホンッ! ま、まぁこんな感じです。ただ……教えておいて何ですが、コレは今回僕が家を建築の途中なのでこの方式で祈った訳でして。なので今の皆さんにはあまり関係無い祭事なんですよね。ですので、これとは別に一般的な祓詞と言うのをお教えします」
クリンはそう言うと此方の言葉に翻訳した、基本的なお祓いをお願いする祓詞、そして神に祈りを捧げ、場(周囲又は世界)から邪気を払い清浄をもたらす願いを込めた大祓詞、そして神に祈りを捧げる前や簡易的に邪気を払う略祓詞、祈りを捧げる場で唱える略拝詞を教えて行く。
神道の祈りは基本的に神様に感謝をささげて災いを払ってもらう、と言う方式である。まぁ祝詞にも種類があるのでコレが全てでは無い。
「と、コレが僕が知っている作法ですね。一応これ以外にも鳥居の祓えとか龍神祝詞とかありますが、セルヴァン様とは関係無いので割愛します。これでも大分部分的な所しかお教え出来なくて心苦しい所なのですが」
流石にクリンでも季節ごと祈りの目的ごとに細かく決められた、全八巻、二七編もある祝詞とその作法を全て覚えてなどいない。そもそもがゲーム関係で使うので覚えただけだ。ここまで出来る時点で十分変態的である。
「随分多岐に渡って、それも細かい所作がある作法なのですな。古の祭典、その全てを知りたいと思うのは山々なのですが……そもそも我ら小人族が失伝した祭事の、更に古の物となればここまでお教え願えただけでも望外の吉事と言うヤツです」
「……そう言われると恐縮しまくるのですが……ですがお喜び頂けたのなら何よりです。どうです? 折角ですから皆様もお祈りしてみますか? 祝詞は僕があげますので皆さんは先程お教えした二礼二拍手一礼で構いません」
「ええ!? しかし、この祭事は貴方様が建築中のこの家の為の物なのですよね? なれば我らが祈るのは筋が違うと思うのですが……」
「ああ。いえ、そちらの祭典は終わりましたので、続けて皆様の祈りを届けてみてはどうかと。丁度必要な用具は全て揃っていますし、清めも済んでいます。祈るのには丁度都合が良いと思いますよ」
「ええ……そんなついでの様な祈りを捧げて良いのでしょうか……」
「大丈夫ですよ。神様と言うのはそこまで狭量では無い筈です。一々祈りを終える度に社を建て替えたり清めをやり直すとか、そんな事を要求する訳がありません。『ええ、ココまで最初と話が違う状況に突っ込んでおいて、そんなセコい事を言う神様などではないですから!』ねぇ、セルヴァン様!!」
「……何やら物凄く実感が籠った声ですが……それは一体……?」
「おっと、思わず日本語で愚痴ってた……どうぞお気になさらず。そんな訳で神は寛大ですから。皆様で祈られる事を喜ぶと思いますよ」
「……そうですかね……? そうかもしれませんね……ではお願いしてもよろしいでしょうか?」
「勿論です。ああ、でも流石に神饌は別途に用意した方がいいですね。皆様が普段祈る時に供えている物とかありますか? あるのならそれを用意して欲しいのですが」
「それは確かにそうですね。我らは普段時空神セルヴァンを祀る際にはライ麦粥と羊の乳、又は羊の乳製品、ワインとその時期の果物などを捧げています。伝承ではライ麦粥はセルヴァン神の好物で、特に羊の乳入りの乳粥を好むとされています。急な事なので今回はライ麦粥とワイン程度しか用意出来ませんね……」
「ああ、それなら僕の方から山羊のチーズを提供しましょう。羊ではないですが近い物なので失礼にはならないと思います」
「おお、それはありがとうございます。そうだ、折角ですから我らの里の者全員で祈ってもよろしいですか? 供物を取りに里に戻らなくてはなりませんし」
「それは構いませんが……って、え? コレが全員じゃなかったの!?」
「勿論です。今回はたまたま報告を受けて様子を伺いに来たのがここにいる者だけだったと言うだけです。我らの里には六百名程暮らしております」
「ろ、六百!? え、そんなにいるの!?」
流石にそれは予想外であったクリンである。幾ら広く作ったとは言え流石に小人でもその人数でこの小屋に入り切るだろうか、と、ちょっとだけ後悔をするのだった。
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あんまり宗教臭を出したく無かったんで一二三祝詞とかゆらへ言葉とかは省きましたが……十分宗教臭くなってしまっている(笑)
まぁ、大分端折ったのでなんちゃってで収まっている! ……筈。
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