第178話 ファステスト村のおばちゃんだけでは無かったと言う罠。
今日中に書き直し間に合わないつもりだったけど気が付いたら十分間に合っちゃった…… (∀`*ゞ) テヘペロ
折角だから上げちゃいます(笑)
======================================
クリンが「銭招き」の刻印を押す様になってから一ヶ月後。その間露店での商売にテオドラの元で勉強に、森へ出ては採集と色々とやる事が多く忙しい為に家造りは未だ終わっていない。
元々焼きレンガの上に丸木を積み上げる工法の為に壁が出来る度に積むのに手間がかかる。足場を組んでから上の方を積み上げて行くのでクリンにしては時間が掛かっている。それでも大分積み上がっており間もなく屋根に取り掛かる所だ。
尚、その間に露店での商売が一つ増えている。それと言うのもクリンは木製食器の制作に取られる手間を繋ぐ為に料理の販売を始めたのだが、汁物や煮物をメインに据えているために調理は市場に入ってから行っており、それらを煮込むのに大体三時間から四時間かけている。昼前後に完成する計算でそこから夕方辺りまで汁物や煮物を売っているのだが、その煮込み作業が完成するまで結構暇である。
元々売れる商品が少なくなった為の苦肉の策であるので、料理が出来る前に元の商品を売るにしても直ぐに売り切れてしまう。
そんなある日、クリンは煮込み料理の為に自作のなんちゃって携行型七輪に炭を入れて煮込んでいたのだが、
「あれ? 炭と携行炉があるって事だよなコレ。なら簡単な鍛冶作業出来るんじゃね?」
と思い付いてしまった。折しも詐欺対策として焼き印を作る為に色々と道具も作ったばっかりである。
そして料理をするので水場は直ぐ近くにある場所を借りていて、火を使う事を許可された場所で作業している。
「うん、それなら前のふぁ……ふぁ……何とか村でやっていた様な鋳掛作業とか簡単な鐵具の歪み取りとか出来るんじゃないかな」
結局未だに村の名前を憶えていないクリンだったが、鋳掛は元から少ない火力で少ない材料であなだけを塞ぐ技術だし、それと併用して歪みも取れるし何よりその為の金槌も既に作成済み。そして水場があるので砥ぎもやろうと思えば出来る。
こうして料理が出来るまでの間の新しい商売が誕生する事になった。この世界では鐵具の修理と言うのは余程重要な物でなければほぼされない。鍛冶師自体が「そんな面倒な事をする位なら新しく買え」と言うスタンスであり、穴が空いたり歪んだりして使えない鐵具でも素材としての鉄が高いこの世界では下取りで結構な額で買い取ってもらえる。
新品だと安くても銀貨数十枚単位、それなりの物なら金貨単位が普通にするのだが、下取りを合わせる事で銀貨十枚から五十枚(大体一万~五万円)辺りで買い替えが出来る様になっている。それでも庶民にとっては十分高いが。
それでも補修した所で数年でまた買い替える位なら最初から買い替えた方が早いと考える者が多いので、あまり修理してまで使うと言う考え方が無かった。
だが前の村で需要が無いわけではない事を体感していたクリンは「正規の鍛冶師がやっていないのだから競合する事もないだろう」と、簡単な修理を商売にした。
砥ぎに関しては最初は正規の鍛冶師がやりたがらない傷や欠けの出来た料理用ナイフの修繕のついでのサービスとして行っていたのだが、砥ぎだけでもやってほしいと言う人がチラホラと現れたので正式な商売としてラインナップに加えた。
ただ、余り本格的な修復をしてしまうと本職の鍛冶師に睨まれそうなので、ごく簡単な歪みと小さい穴程度の塞ぎに傷治し、そして刃付けまで行かない程度の研ぎ直しに抑え、代りに料金も火を使わない歪み直しと砥ぎ直しが銅貨六十枚で穴塞ぎに火を使う歪み直し、そして傷と欠け治しプラス砥ぎのセットで一律銀貨一枚と、割安の値段を付けた。
安い代わりに大きい傷や穴、酷い歪みがある物は全てお断りにしている。
だが最初の頃はそれでも高いと考える者が多く、鋳掛の仕事が頼まれる事は無かった。やはりクリンの様な子供が銅貨六十枚も取る作業をする、と言うのが胡散臭く感じられており銀貨単位なんてもっての他、みたいな風潮が流れていた為だ。
「うぅん……作業的には安い筈なんだけどなぁ……やっぱり子供と言うだけで銅貨十枚超えると激高に見えるのかなぁ……」
挙句の果てに「頼んでもいいけど子供なんだから銅貨二十枚でやれよ」とか意味の解らない事を言い出す者まで現れる始末だ。
「何とまぁ……まさか前の村のおばちゃんの方が実はマシだったとか……渋いなぁ」
実はあの食堂のおばちゃんの見立てはこの世界ではごく一般的であり、世間的には妥当所か少し高く言っていたと言う、驚愕の事実を知ったクリンはバカバカしくなったので数日で看板を引っ込めようとしたのだが、
「ああ、ボウズ、丁度良かった! 商売中に調理ナイフ落として曲がっちまった。刃にも欠けが出ているから直ぐに治してくれねえか? このままじゃ商売あがったりよ!」
と、近くで焼き物の屋台を開いている露店仲間の店主が料理ナイフを持ち込み、引き受けて曲がりと欠けを治し砥ぎを三十分程度で終わらせて返すと、
「おお、スゲエな! こんな時間で元通りじゃないかっ! 銀貨一枚と半銅貨なんて金額だから、ご祝儀感覚で頼んでみたがこの仕上がりなら十分お値打ちって奴だ!」
と喜んで歪み取り代と欠け治し、砥ぎ直し代を支払い帰って行くと、それを皮切りに同じく露店を開いていた店主達が挙って商売道具を持ち込んで来て、
「ウチの鍋に穴が開いてきて最近漏るんだよ」とか「この鉄鍋取っ手が歪んで使い難いんだ」や「このナイフ、柄木が割れちまったんだ。これ付け直せないか?」などと次々と依頼が飛び込む様になり、数日後には露天商以外も主婦の方が家から鍋やナイフなどを持ち込む様になり、
「うん、この頻度で頼まれるのなら商売として成り立つし、何よりも鍛冶関係のスキル上げに最適この上ない! 軌道に乗ってくれてよかったよ!」
と、晴れて正式にクリンの商売ラインナップに加わったのだった。
そして更に一ヶ月経つ頃には最初の勢いは無くなったがそれでも日に三、四回は頼まれる様になり料理が完成するまでの間の貴重な暇つぶし……もとい、収入源の一つになっていた。
この頃になるとクリンの建設している家の壁も大分立ち上がり、いよいよ屋根の取り付け作業に入る。
やはり三角屋根の方が都合が良いので、少し太めの丸木を用意し棟木として中心に据え、それを支える様に何本かの丸木を使って垂木をはめ込んでいく。
この辺はHTWでも使われている日本の建築の技法だ。そうして屋根の柱となる部分が完成し、後は丸木を並べて行って屋根板にするだけなのだが、そこでふと思い出す。
「あ……そういや前世だと屋根の棟木を設置したら『棟上げ式』と言うのをやるんだよな。本当は柱とか棟だけを組んだ段階でやるんだろうけど……工法が折衷だからやるタイミングが無かったなぁ」
棟上げ式とは日本の家屋建築の際に行われる古い習慣、家の骨組みが完成する、棟を組み上げた段階で神様に「ちゃんとした家が建ちますように」や「安全に工事が出来ますように」とか「家が完成する前に悪い物が住み着きませんように」などと言う願いを込めて神様に向けて祈りをささげる儀式がある。
近年ではそう言う宗教的な意味合いは薄れ、単に施工主が大工に対する感謝としての振舞いの場となっている事が多く、何なら棟上げ式自体を行わない事も増えてしまっている。
しかし、工業用道具メーカーであり伝統的な工法やこのような所作を好むミゾグチの、その子会社であるMZSがゲームとは言え疎かにする訳が無い。
HTW内で建築をする際、この手の儀式をキッチリ行うと完成度に関わり挙句には建築バフと言う、建物のステータス(耐久度や補助効果などのゲーム的な物)にボーナスがついたりする仕様にしてねじ込んである。
クラフト狂いのクリンも建物を作った際には必ずこの手の作業は踏襲しており、現実となったこちらの世界でも、やらないと何となく落ち着かなくなってしまっている。
流石変態企業、既に調教済みと言う奴である。
「そうだな……向うのを立てた時は家と言うより小屋だったのでやらなかったけど……やっぱり家にするのならやらないとねぇ」
ゲーム時代の様に、やったからと言って何か効果が得られる訳ではないと思うが、思い出してしまった以上はやらないと片手落ちな気がして来る。
何よりもクリンはこの世界に神が実在している事を知っている。お世話になっている……と言っていいのかどうかは実に微妙な所なのだが、それでもセルヴァン様に感謝を伝えること自体は悪い事ではない筈だ。
そうと決めるとクリンはその日の作業はそこで取り止め、棟上げ式の準備をするために色々と用意を始めるのであった。
======================================
いやぁ、なんか全然違う話なので、使いまわしが出来ないから今日中には書きあがらないと思ったのですが……書けちゃった(笑)
その代わり誤字が多いかもだけど許してねっ!
……書き直さなくても誤字が多いのは仕様だけども……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます