第176話 ラン麺作りで培った腕前は伊達では無い。
ちょっと一時間位仮眠するつもりが起きたら10時回っていてビビったでゴザル……
何とか今日中の投稿に間に合った……(;´・ω・)
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デミ・ゴブリン・アーチャーとの死闘から数日後。怪我も魔法薬(ポーション)のお陰でとっくに治っており、クリンは早速と言った様子で露店の準備をしている。
焼いておいた料理用の土鍋は三つ作った内の二つは焼成中に割れてしまっていたが、残った一つは見事に焼き上がり実用に耐える出来だった。
ただ流石に三十センチオーバーの寸胴サイズ土鍋は重く、毎回運ぶのは手間なのでテオドラに頼み込んで置かせてもらう事にした。
露店を開く時に回収して使う予定で、それ以外の時なら使いたいなら自由に使ってくれていい、という条件で渋い顔ながらも許諾してくれた。
尚、これにより時折テオドラの手習い所で煮込み料理が振舞われる事になる。後にその原因を作ったとしてテオドラにしつこく文句を言われる事になるのだがそれは後の話。
尚、この時より地味にテオドラ用に加工したベッドの素材を細々と運び込んでいるのだが、テオドラ自身はまだその事に気が付いていない。
後日、材料が揃った段階で勝手にベッドを組み立てて設置してしまい、これも後で文句を言われる事になる。まぁクリンにとっては怪我した時に世話してくれたお礼も兼ねているので、何を言われた所で気にする事は無かったが。
こうしてテオドラの手習い所に土鍋を運び込んだ翌日には、クリンは新たな商売として汁物料理を売りに出す事になった。
売るのはスープだ。あの後に森でウサギなどの小動物が狩れ、その肉を使って干し肉を作り、その干し肉を煮込む事で出汁と具にしたスープで、コレには森で採取したキノコや野草を乾燥させた物と、野菜売りのオヤジから購入した野菜を入れる事で旨味を増している、クリンの特製スープだ。
当初は骨も使って煮込む予定だったのだが、市場で骨を煮込んだらその後に骨を処理するのが手間である事に気が付き、干し肉を使う事にしていた。
煮込むのに三時間程度かかるが、煮るだけなのでその間に商売も出来るので割と都合のいい商品と言える。
この辺りの地域では出汁と言う概念が無いので、干し肉にする事で旨味をました肉と同じく乾燥させる事で出汁が出る野草とキノコのお陰で、ただのスープにしては味が良いとして直ぐに評判になった。
この時の為にクリンは木製のレードルを作り、それに一杯掬い手製の木製カップに注いで、一杯銅貨十三枚と、ただのスープとしてはかなり高い金額を付けていた。肉が使われているとは言え、普通はそんな値段の汁物など売れる筈がない。
だが、クリンは怪我をした時に魔法薬を買った店での事をヒントに、その場で汁物を飲み干してカップを返却すれば銅貨十枚返却すると言う方法を取った。
つまりスープ自体は銅貨三枚で、残りの銅貨十枚分は普段売っている木製コップと同じ値段と言う事だ。
よく売れるコップと形状がやや異なるカップ型のこれが欲しければそのまま持ち帰り、必要が無ければ返却すればいい、と言うスタイルだ。
これにより普通なら高い値段の銅貨十三枚のスープが飛ぶ様に売れ、しかも自作の木製食器の使い心地が実際に試す事が出来て、気に入った人が結構な数をそのまま持ち帰って行くので、割といい稼ぎになっていた。
ただ余りにも持ち帰る人が多い為に、最初の頃はスープが売り切れる前にカップが無くなってしまう、と言う事が起きてしまったのは少年にとっても誤算だった。
しかし、この事が宣伝にもなり他の木製食器も購入していく人が増えたのは有難かった。有難かったのだが、元々木製食器を作るのに手間がかかるのでその手間を減らすためにスープを売る事にしたのに、ここで木製食器が更に売れてしまい手間だけが増えたのも事実なので、意外と本末転倒である。
しかも評判になればズルを考える者も出て来る。どこから持って来たのか、明らかにクリンの作風とは違う木製カップを持ち込んで銅貨十枚をせしめようとする輩もチラホラと現れたのだ。
「いやいや。ここに重ねておいてあるカップとどうやっても重ならない時点で別の物でしょコレ。流石に無理有りますよ」
「ああ? そんなの知らねえよ。とにかく木のカップを持って来たんだから銅貨十枚寄越せよ!」
「木のカップを持って来たら交換なんて言った覚えはないですね。『この場で飲んだ人』限定で交換しているだけで、貴方ここで飲んでないでしょ。というか、僕は貴方にこのスープを売った記憶がありません」
「そんな証拠があるのかよ。単にお前の記憶違いだろ。良いからさっさと金出せよ!」
「確かに僕の記憶だけだから証拠にはなりませんね。ですが、それを言うのなら『貴方がウチのスープを買った証拠もない』のでカップ代を出す謂れも無いですね」
「おまっ……! ふざけんな、俺はちゃんとここで買ったんだぞっ! それでも金払わねえなら詐欺だ! 衛兵に突き出すぞガキが!」
「ほほう。ではこのスープに何の具が入っていて、何で味付けされていて、どれ位の量が入っていたのか教えてください。ウチで買ったのなら解りますよね。答えられるのでしたら言う通りにその何処のか知らないカップも買い取りますよ?」
「そっ……そんなの一々覚えているかっ! とにかくこのカップはココの物なんだからちゃんと金を払えっ!」
あくまでも自分の言い分を押し通そうとする男に、クリンも段々面倒臭くなる。そもそも「金を払え」と言っている時点で間違っている。あくまでも「返却」なのだがら、金がもらえると考えている時点で騙そうとしているのはバレバレである。
たかだか銅貨十枚の為に何でこんなに頑張るんだよ、とクリンが馬鹿馬鹿しく思っていると、
「ニャ~ン」
と言う鳴き声と共に、路地裏から子猫が姿を現し、露店をしているクリンの足元にすり寄って来る。
「お。また来たんですかお前? いつぞやに串焼きご馳走してから味しめましたね」
と、頑なに金を出せと言い続ける男を他所にすり寄って来る白猫の頭をなでる。
この猫は以前良く解らない輩につけられた時に出会った猫で、流れで串焼きを食べさせてから時折クリンの側に現れる様になり、数日前からクリンが露店で食べ物を扱う様になってから頻繁に顔を出す様になっている。
しかも一匹では無く仲間を連れて来る。今回は同じような子猫と、数匹の成猫を引き連れており、クリンの回りに殺到してアッというまに猫団子状態になる。
因みに、その中には黒ぶちでやたらとふてぶてしい感じの猫も混じっていた。
「はいはい、ちゃんと出汁取り用だけに使った干し肉を取ってあるので、少し待っていてください。この聞き分けの無い人を追い返したら餌あげますから」
と、猫達を撫でながらクリンが言うと、猫達はクリンの言葉が分かるのか一斉にイチャモンを付けていた男の顔を見る。
「ひっ!? ち、チクショウこの街で猫を盾にする何てずりぃぞ!」
猫の視線を浴びた男は小さく悲鳴をあげると「覚えてやがれっ!」と小悪党臭い捨て台詞を吐いてそそくさと逃げて行った。
「はぁ……覚えていたら次に同じ手に引っかかる事無いでしょうに……馬鹿なんですかね? しかし、本当にこの街での猫は有難いねぇ。餌をあげるだけで面倒な客も逃げるんだから本当に助かりますよ」
と、猫達にお礼代わりに出汁ガラになった干し肉をやろうと準備していると、
「はっはっはっ! アイツもバカだねぇ力づくでなら兎も角、このボウズに口で勝てる訳が無いのに。屁理屈並べさせたらオレだって勝てる気がしないよ!」
隣の露店で一部始終を見ていた野菜売りのオヤジが愉快そうに腹を抱えながらそんな事を言って来た。
「しかし、ああいうのは幾らでも出て来るからねぇ。確かにボウズのやり方だと汁物を売るのにはいい方法かもだけど、何か考えないとしょっちゅうあんなのに絡まれるぞ?」
と、忠告めいた事を言われ、クリンはハァと溜息を吐く。
「たかだか銅貨十枚の為にそんなに労力使う位なら働いて稼ぐ方が早いと思いますがねぇ……でも百円程度とは言え毎回コレされたら鬱陶しいのは確かですねぇ」
大き目の木皿に、取っておいた出汁ガラの干し肉を乗せながらクリンはぼやく。味付けしていない汁も少し掛けて猫達に出してやると、猫達は一心不乱にがっつき始める。
その中に一匹だけ加わらない猫が少し離れた場所に居て、ドッシリとした感じで香箱座りで猫達の様子を見ている事に気が付き、クリンは肉だけをスープから幾つか掬い取り、更によそって黒ぶち猫の前に置く。
するとその猫は「ナッ」と短く鳴いてガツガツと肉を食べだした。
その様子をホコホコしながら見ていたクリンは内心で、
『毎回こんな手間掛けさせられたら溜まった物じゃないし……そろそろ『アレ』を作るかなぁ。鉄材もこの前の事でそれなりに手に入ったし』
と、考えて居た。まだ大したものを売っていないので必要ないと思って作らなかったのだが、こう言う状況になってしまうと「アレ」をさっさと作ってしまえば、この手のトラブルは直ぐに鎮静化するだろう。
取り敢えず明日にでも作ってしまおう、と猫達が餌を食べている姿を眺めながら心に決めたクリン少年であった。
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本当に最近筆がめっきり遅くなったなぁ……
黒酢ニンニクが切れたからかな……
それと最近凄い眠いんすよねぇ……
Zzz……
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