第151話 おなかの調子は整えておかないとひどい目に会う。



投稿時間ミスってやんの……(;´Д`)

ただいま11時半。既にPVが鬼の様に回って取り下げできねえっす……

なので今日はこの時間に投稿っす……



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「捨てちまいなこんなモン。そのボッター村と言うのは変人の集まりかい? 効果があろうがこんな悪臭がする物を好んで飲む人間なぞいないさね!」


 なんちゃって正露丸を見せた時の、テオドラの開口一番がそれであった。


「こんな物をアタシの薬の改良とか言われたら溜まった物じゃないよっ! アタシの薬の何処にもこんな悪臭するものは入って無いねっ!」

「や、これでも時間が経って匂いが大分落ち着いたんですよ。布で壷を包まなくても匂いがもれなくなりましたし。下痢にはコレがなんだかんだでよく効くんですよ」


「味も酷いじゃないか! 指に付着した所を舐めて見ただけで不味くてたまらないよっ! こんなの一粒飲んだら逆に悪くなりそうさね。これは薬じゃなくて毒のまちがいじゃないのかねっ!?」


 やはり皮ごと煮込んだ濃縮液なので前世の物よりも苦くて渋かったらしい。大〇製薬の皆様の努力に今更ながら頭が下がる思いのクリンだった。


「一粒じゃなくて一回三粒ですね。それを朝晩二回です」

「尚悪いわっ!? アタシゃこんな悪臭物質を作らせる為に薬草学を教えたんじゃないよっ! もう少しましな物を持ってきなっ!!」


「まぁまぁ。良薬口に苦し、忠言耳に逆らうと言います。薬なのですからマイナス面があるのは当然です。ですがそれを補えて有り余る効果があるのならそれを取るのが薬と言う物ではありませんかね」

「聞いた事無いねそんなの! ……だが小僧の言う言葉もあながち間違いじゃないのが癪だねぇ。本当に飲んでも平気なんだろうね、この悪臭剤は」


「勿論ですよ。ほら」


 クリンはそいうと自分で作ったなんちゃって正露丸を鼻をつまんで口に放り入れると水で流し込む。


「この様に鼻を摘まめば普通に飲めます。ただ水が無いとキツイのは確かですね。僕は生憎お腹を壊していないので飲んだ所で殆ど影響無いのが残念ですが」

「小僧のその歪んだ顔を見る限り普通じゃないと思うけどねぇ……まぁ確かに、アタシのレシピに一つ二つ薬草を足した所で毒物に変化する訳が無いのは確かだね。良いだろう。小僧が帰る時まで特に変化が無い様なら、ウチに来るガキ共とその親で試してみようじゃないか。腹下すヤツなんざこの街じゃゴマンと出て来るからねぇ」


 文明が発達していない世界なので、水に当たる事は日常茶飯事だし税金の関係でパンなどは一度焼いたら一週間(十日)はそのまま食つなぐ。また生鮮食品も冷蔵庫など無い世界だ。肉や魚は当然野菜ですら傷みやすい。


 下痢止めと言うのは実はこの手の街では必需品だったりする。本当に効果が高いのならこの悪臭でも我慢できると言う物だ。


 こうして、その日一日クリンの様子次第で他の人間でも試してもらえる事になり、クリンはその露店に向かう事になった。


「……うん、飲めるんだけれども自分の息がすんげえ臭い。何か暫くは何食っても正露丸の匂いしかしない気がする」


 テオドラの前では平気な顔を保っていたが、手習い所を出た後はげんなりとした顔でトボトボとした足取りで市場に向かったのは内緒である。





 市場の何時もの地区で露店を出し予約分の木皿を売った後、他の商品もボチボチと売れた。露店仲間の店主達が噂を聞いたのか結構買いに来てくれ、この日も木皿は全サイズが完売し、注文も入った。


 ただ陶器の角皿の方はあまり売れなかった。陶器類は比較的高い相場だったので相場通りに値段を付けた事と木皿と違って割れやすい事が敬遠された理由の様だ。


 それでも四枚は売れたので儲け的には悪くない。ただこの感じだと木製食器の代わりに主力商品にするのは無理だと思うクリンだった。


「ううん……焼き物関係は露店じゃなくて店に卸す方が良いのかもねぇ……ただそれは工房とか持っていないと買ってくれそうに無いから、余り美味しくはないかな」


 一回売っただけだがそう的外れな考えでは無いとクリンは思っている。そうなると矢張り別の商品を考えるしかない。今までの売り上げを考えたらやはり木工製品関係を商品にするのが無難かもしれない。テオドラ印の薬も売れているは売れているが主力と呼ぶにはやや弱い。


「ま、木工上げには最適だと思えば良いかな。道具も今の所木工用の物しかないし」


 そう結論付けたクリンは、何時も通りに午後の鐘(午後三時)に露店を畳んでテオドラの手習い所に戻って行った。


 尚、この日もセルヴァン像はキッチリ売れ残っている。





 翌日のテオドラの手習い所。前の日にクリンが戻って来た時に変わった様子が無かったので、取り敢えず試験的に他の人間で試す事をテオドラが了承したのだが、その日は残念な事に子供達と親の中に腹を下した人間はいなかった。


 クリンが次に来るのは二日後で露店では無く学習の為に顔を出す事になっており、出来ればその前までに何人かで試しておきたかったのだが、タイミングが無かった。


「まぁ、こんな臭い物を飲ませたら悪評が立ちそうだからその方が良いのかもしれないけどねぇ」


 とテオドラは思う。ただ、薬師としては本当に効果があるかどうかは気になる所では在る。クリンにはああは言ったが、この手の匂いには正直慣れっこである。


 消毒薬や化膿止めの中にはこれ以上に匂う物もあるし、匂いの系統であればこれに近い物なので人体に害があるとは最初から思っていなかった。


 そして、クリンのなんちゃって正露丸を試す機会は思っていたよりも早く来るのだった。


「こりゃぁ珍しい。アンタがウチに顔出すなんて何年振りだい?」


 その日の午後、手習い所が開けてそろそろ夕食の準備にかかろうかとしていたその時間に、テオドラの元を古い馴染みが訪ねて来た。


「毎年一回は必ず顔をだしてんだろ。今年も頭に顔を出したじゃないか。もう耄碌したのかいバーサン?」

「勿論覚えているよ。ただの嫌味さね、もっと頻繁に顔を見せに来てもバチは当たらないんじゃないのかねぇ? アタシゃ来年も生きているとは限らないよ」


「ハッ! 良く言うよ、後五十年位は平気で生きそうじゃないかバーサンは!」


 狭いながらも手習い所と言う事で一応用意してある応接間の椅子に、着崩した街女の服装に身を包み、だらしのない恰好で座る女性がテオドラに向かって嫌味ったらしく言う。


「全く、口の悪さは相変わらずだねぇ。アタシが死んでもそればかりは治りそうもないさね。しかし、何時もよりも元気が無いねぇ、何かあったのかい?」


 テオドラの目の前に座る女性は、口調こそ普段道理だが彼女の目から見たら随分と元気が無い。心なしか頬がこけていて体調が悪そうにも見える。


「ああ、ウチのに仕事押し付けられてね。街の金持ち連中のご機嫌取りさせられてんのよ。んで御大層なご馳走食わされんのはいいんだけど、どうもああいうのはワタシの腹にゃ合わなくてねぇ。便秘気味だから出てくれるのは有難いんだが今度は出っ放しなんよ。下痢がとまんねぇったらありゃしない!」


 げんなりとした表情で彼女は吐き捨てる様に言う。


「……アンタ、女捨てるにゃまだ早いだろう。人様の前で便秘だの下痢だのと言うんじゃないよ、人前に出る仕事してんだろ」

「ほっときな。ワタシはちゃんと人見て切り替えてんよ。誰でもおんなじ態度のバーサンより大分マシなつもりだよ」


 傍から見たらどちらも口の利き方は変わらない様に見えるのだが、当人達は互いの口調の方が自分より酷いと本気で思っていた。


「んな事より小耳に挟んだんだけど、バーサン、薬師の仕事再開したんだってね。露店で小僧に売らせてるって聞いたよ。その中には下痢止めもあるって話じゃないか」

「……相変わらず耳が早いね。だが間違いも多いよ。アタシゃ別に仕事復帰なんてしてないさね。もう腰も痛くて今更薬草集めなんてしてらんないよ」


「あ? んだよ、じゃあガセだったのかよ。バーサンの下痢止めはよく効くからアテにしてたのによ」

「成程、それが目当てで態々来たのかい」


「そ。ワタシだけなら兎も角、ウチの連中も大部分が当たっちまってね。半数以上がみんな仲良く便所とお友達やってんのよ、今。下痢くれぇで魔法薬(ポーション)なんざ使ってられねえし、かと言って他の薬師の下痢止めじゃ気休めにもなりやしねえ」


 気怠そうに椅子にもたれつつ、面白くもなさそうに女性は言う。彼女自身この一週間腹を下し、多少良くなった頃合でまた仕事を押し付けられ再び下す、という行動を繰り返しており、ソレに辟易して下の者に押し付けたのだがその連中も見事に腹を下し、現在はほぼ仕事にならない状態だった。


「てな訳でまともに動けないってんでウチの人に嫌味言われてね。困っていた所に噂を聞いて出張ってきたって所なのよ。本当にただのガセだったのかい?」

「そりゃ多少は作っているよ。ただ殆どがガキ共用の傷薬と喉の薬位さ。下痢止めはアタシは作って無いよ。アレは材料集めが面倒だからね。それに今更他人に売る程の量なんて作る訳ないさね」


 老婆の言葉に、目の前の女性は「チッ」と残念そうに舌打ちすると、椅子から立ち上がりかけ——


「……今『アタシは』っつったか?」

「相変わらず細かい事に気が付くお嬢ちゃんだねぇ」


「もうお嬢ちゃんなんて呼ばれる歳じゃねえよババア! ガキだって二人いるんだぞ! って、それはどうでもいい! バーサンじゃない誰かが作っているって事かい、それ!?」


「アタシから見たらアンタも十分小娘さね……そうさ、最近ウチに勉強に来る小僧が薬学に興味を持ってね。教えたら勝手に薬作って勝手に露店で売っているだけさ。アタシが売らせている訳じゃないよ」


 本当は元々薬学の知識を持っていて、知識のズレを修正する為だけに学んでいるのだが、それを態々教えてやる必要は無い、とテオドラは内心思いながら顔では笑って見せる。


「へぇ……って事はバーサンの弟子って事だね。成程、薬草の勉強を兼ねて薬を作っているって事か。ハァ……バーサンが小僧って言う事は本当に子供なんだろうねぇ……それじゃぁアテにしたらダメか……」


 彼女はテオドラの薬の効きを知っているが、流石にこの手習い所で学ぶ様な子供が作った物には何の期待も抱けなかった。それも仕方のない事ではある。


「別に弟子じゃないけどね。勝手に憶えていくあんなのを弟子何て言ったらケツが痒くなって仕方ないよ」

「あ? 何だって?」


「何でもないさね。一応、あの子が露店で薬売っているのも知っているし、作った物は全てアタシが確認しているから効果がある事は保障するよ」

「……へぇ。バーサンがそこまで言うのなら信じられるかもね。そのガキは何歳なんだい? 下痢止めも作れるのかい?」


「今年で六歳だそうさね」

「……途端に信用できなくなったねぇ」


「そして、アンタは運がいいねぇ。ココにその小僧が作った下痢止めがあるんだよねぇ。しかも何と今ならタダでコイツをくれてやるよ」


 そう言ってテオドラは薬の保管庫からクリンが置いて行ったなんちゃって正露丸が詰まった壷を持って来て彼女の前に置いて見せる。


「……本当に大丈夫なんだろうね、それ。子供の作った物なんて本当に信用できるのかい?」

「色々と器用な小僧でね。露店で売っている薬は全部アタシが教えて作った物だがボチボチと売れていると聞いているよ。一応アタシが教えた事になっているからね、その辺の間違いは無い薬しか作らせてないよ」


 とテオドラが言うが、女性は疑わしそうな顔を崩さずに薬の入った壷に顔を近づけ、スンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。


「……このままでも何やらエゲツねぇ匂いがして来るんだけれどもね。バーサンの下痢止めにこんな匂いは無かったはずだけど?」

「ああ、そりゃそうだ。コレはその小僧が自分でした『独自の工夫』ってヤツだからね。アタシのレシピの薬とは違うよ」


「……本気で大丈夫かいそれ? ガキの思いつきに付き合って下痢を悪化させるなんて冗談じゃないよ?」

「さあね。コイツはまだ試していないからね。効果はあると思うがどれ位効くかまではまだ分かってない代物さ」


「おいババァ!? ワタシらを実験にするつもりかい!?」

「大分愉快な臭いはするけどね。配合を見たけどベースは確かにアタシの腹下しの薬だね。それに二個ほど薬草を足したって所さね。足した物も別に変な物でも無いし、言われてみれば腹下しの薬として使われた事のある物が原料だよ、小僧が目の前で飲んで見せたけど別に毒になる様な事は無かったね」


 テオドラが説明するが女性の顔はあくまでも渋い。クリンの事を知らなければ当然の反応と言えるだろう。


「生憎と下痢になっているヤツが居なかったんで、そちらの効果の方はまだ未知数さ。成分的には普通に下痢止めになると思うよ。で……どうする? 今家にある下痢止めはコレだけさね。試してみるってんなら今回はお代はいらないよ」


 ニタリと笑いながら言うテオドラの顔は、女性には大窯に怪しげな物体をぶち込んでケタケタ笑いながら掻き回している魔女の様に見えて来ていた。




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はい。もうね、色々と駄目だね。

前書き後書き書かないとか言っているのに結局注釈が必要だったりポカして謝罪(?)で結局毎回書いていりゃせわないっての……


投稿時間間違えて凹みまくりですよおっかさん!


もういいっ! 意外と前書き後書き欲しいって人いたし、大して気にしてい無さそうな人の方がはるかに多いしっ!


もう開き直って前書き後書き書いてやるもんねっ!

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