第62話 この世界での魔法のアレコレ。

 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡c⌒っ゚Д゚)っ  ズサーッ!!


滑り込みセーフ!

……はい、アウトですね。

でも一応本日の投稿には間に合った!





======================================





 叩き出しが終わると、また乾燥である。直接日が当たらない様に鍛冶場の中に干場を作り、叩き出した繊維を幾つかの束にして纏めて引っ掛けて干していく。


「ふぅ……やっぱりこれ時間喰うよなぁ……ああ、乾燥魔法とか時間加速魔法とかそう言うの欲しいなぁ……あれば大分楽なんだけどなぁ」


 糸や布の元となる繊維を干しながら、クリンはついついぼやいてしまう。HTWにも魔法は存在し、魔法を使うスキルもその覚え方も知っている。


 そしてこの世界にも魔法が存在している事は確認済みだ。ただ、この世界の魔法は誰でも使える様な物ではなく、覚えるのにある程度の時間と学習が必要な為、使える人間が限られているらしい。


 大きな町や大都市だと私塾や魔法学校があり、魔法を覚える事は出来るらしいが、元の村やこの村程度の規模だと魔法を使える者は居ない。


 簡単な魔法なら割と誰でも覚えられるそうなのだが、覚えるのには勉強と反復練習が必須であり、憶えられたとしても貧しい村や地方の町程度だと別に無くても困らない程度の物しか教えてもらえないので、態々覚える者が居ないらしい。


「魔法もスキルなんで覚えるのに時間がかかるってのもHTWに準拠しているから分かるんだけどさ……簡単な発火魔法覚えるのに先に読み書きから始めないと駄目とか、そりゃ農村じゃ使える奴いないよねぇ」


 クリンがHTWでの魔法スキルもその使い方も覚え方も記憶しているのに、未だに使っていないのには、この現地の読み書きができない事も理由の一つだ。


 しかし、それなら前世の言語の、HTW内の魔法限定であるのなら憶えられた筈である。それをしていないのは偏に——


「魔力なんてわっかんねーですよねぇマジで。HTWだとスペル唱えてMP消費すりゃ魔法使えたけどさ、前世のリアルじゃ魔法もMPもネェっての。フレーバーテキストに魔法の覚え方と魔力の上げ方に『魔力操作が~』とか書いてあるけどさ、知らんよそんなの。魔力が何なのかわかんねーのに操作なんて出来ませんって、ホント」


 ——これが理由である。この辺がゲームに似た世界であっても、現実との違いなのであろう。HTWは非常にリアルに造られていても、やはりゲームである。


 リアルでは魔法など存在しないし魔力も無いが、ゲームではシステム上の処理でMPを消費すれば勝手に魔法が使える。実際に魔力が無くても数字上は有る事にして使える。


 しかし、現実世界になってしまえば、クリンも前世では魔力の存在しない世界の住人である。何をどうやったら魔力MPが消費できるのか分からない。


 この世界には魔法があるので、何となくだが感覚的に「あ、これが魔力っぽい物じゃないかな?」と感じる物はある。


 しかし、その感覚の使い方がさっぱりわからない。良く小説や漫画とかでは、魔力が分からなくても赤ん坊の内から魔力操作をしていれば魔法が使えるようになる、或いは魔力量が増えて大人になると化け物クラスの量になる、みたいな描写がある。


 クリンも転生して拾われてから赤子時代の数年は、暇なので魔力操作を何度も試みた事がある。しかし現在に至るまでそれに成功した試しがない。


 それっぽい物があるのは解るのだが、「どうすればそれに干渉できるのか」がさっぱり解らない。ましてや動かすとか循環させるとか、それ以前の話で魔力と言う物が一体何なのか解らないのでやり様が全くなかった。


 だからこそ早々に魔力操作の幼児英才教育を諦め、前世の記憶を無くさない為の反芻に走った訳だが、その結果アーカイブスキルが身に付いたのだから痛し痒しと言う所だ。




 自力で覚える事は諦めたが魔法習得自体は諦めていない。この体は魔法の使えるHTWのキャラクターが元になっているし、魔法のあるこの世界の住人として転生しているのだから、魔法自体は使える筈だ。


 なので、何とか魔法が使えないか、使えるようになるヒントだけでも無いかとアレやコレやと手を尽くしてみてはいる。


 しかし結果は散々だ。前の村はあの通りなので「そもそも会話が成り立たない」ので調べようも無かったし、この村はこの村で、それとなく聞いてみたら魔法を使える者は一人も居ない。


 辛うじて、呪文を覚えるのに読み書きが必要になる、と言うのが分かっただけだ。いや、正確にはこの村で魔法が使える人間が居ない理由もわかった。


 HTWにもあったが、この世界にも「一般汎用魔法」と言う所謂生活魔法がある。が、生活魔法と言う位であるから、ちょっとした火をつけるとか、コップ数杯の水を出せる、そよ風が送れる、と言う程度の物だ。


 その程度なら火打石で良いし井戸で水汲めば済んで手で仰げばそよ風は出る。その程度を覚えるために金を払って文字を教えてもらい、何か月もかけて魔法を覚えるなど、時間と金の無駄でしかない、と考える者が殆どであった為だ。


 その程度の魔法では魔法使いとは呼べないし、本格的に魔法を使うのなら更に勉学と魔法を覚える時間が必要になる。しかもそれだけの金と時間をかけて覚えたとしても、魔法が確実に使える訳でもなければ、魔法が使えても魔法スキルが身に付くとは限らない。


 この辺りは反復練習でしかスキルが身に付かない弊害とも言える。覚えられるかどうかわからない物に、金と時間を掛ける位なら、ある物で十分だと考えてしまう様子だった。


「でも、本来技術とか知識とかってそういう物の筈なんだけどねぇ。なまじスキルと言う形で目に見える物だから、最初から自分の生活に関係無いと思ったら簡単に切り捨てちゃうんだろうなぁ」


 木皮の繊維を干しながら、クリンはヤレヤレと肩を竦める。ある程度の文化水準があるのであれば、よりよい生活の為への投資と考えて、金を掛けてでも覚える価値はある筈なのだが、この辺りの様な貧しい生活だと返って来る確約の無い投資をする位なら明日の食事にする方が良いと考えるのだろう、と少年は漠然と思う。


「まぁ……それでも才能=スキルの世界よりはよかったと考えるべきなのかな? ああいう世界だと有用なスキルが無いと人間扱いされないし。しかも「ギフト」とか言っている癖にさ、つかえね~とか親が勝手に決めて追放とか、馬鹿じゃないかと思うよねマジで。スキルに使えねえもヘチマも無いだろうに。使える使えないなんて状況次第じゃん。しかもギフトだよギフト。何で人間如きか勝手に優劣つけてんのよ、神が居る事解っている世界でさ。じゃなきゃギフト神の贈り物なんて呼ばないよね。少し考えりゃそんな贈り物貰った人間を追放するとかアホ過ぎる事分かるでしょうに」


 前世で読んだ、異世界物によくあるテンプレに何故かダメ出しを付けだす。クリンの意見も解らなくも無いが、少々危険な臭いがしてくるので正直止めて頂きたい物である。いやマジで。

 本人も思考がズレた自覚があるのか頭を振って危ない方向に転がった思考を戻す。


「まぁそういう世界に比べたら、普通に努力すれば狙ったスキルは手に入らなくても、代りに別のスキルが覚えられる可能性があるんだから、やって損は無いと思うんだけどねぇ」


 そんな訳で、この村では魔法を覚えるのは無理であると考え、ならばと読み書きから始めようと思ったのだが、そちらもこの村には出来る人物が非常に限られていた。


 以前の村と違って村長は読み書きができるそうだが、常に忙しそうなので教えてくれそうに無い。門番一号ことトマソンは以前衛士をしていた関係で読み書きは覚えているらしいが、こちらも基本忙しい。一応聞いては見たが教える時間が無いときっぱり断られた。


 最近知り合った門番三号も読み書きは出来るのだが、彼は外国の生まれなのでそちらの文字しか使えなかった。教わった所で使う機会が無いので断念した。


 しかし、ここでダークホースの門番二号、マクエルが冒険者にしては珍しく読み書きが出来てしかも石鹸とリン酢のお礼に非番の時なら教えても良いと言ってくれた。


 喜んで教わろうとしたが二秒で諦めた。横で聞いていたトマソンとロッゾが微妙な顔をしていたので不思議に思い、試しに字を書いてもらったのだが……


 マクエルの書く文字は非常に汚かった。神代文字のヲシテの方が読み易いんじゃないかと言う位に独特の字で、実は適当に書いていて本当は文字知らないのでは、と思ったが、本人にはしっかりと読めていた。トマソン曰く本人以外には読めないし書けないとの事。


 流石にそんなのを教わる気は無かったので断念した。彼ら以外で文字を覚えていそうな人物は、役人関係の仕事の人物か自分で店を開いている商売人位で、余り面識もない上に仕事が忙しくて余裕の無さそうな人ばかりであった。


 結局読み書きはこの村では無く町に出て私塾にでも通って教えてもらう方が確実であると門番ズに言われ素直に従う事にする。


 詳しく聞けばそう言う私塾では基礎魔法を教えてくれる所もあるとの事だったので、結局町に出てから覚えた方が確実な様だった。






======================================


ふぅ。昨日の予約ミスのリカバリは何とかなった……

訳では無いな。なんかクリン君危険な事口走っているし(笑)


流石に忙しないので明日は多分投稿は無理だと思われます。

申し訳ありませんがご了承ください。m(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る