第61話 怒りパワーでも税金からはやはり逃れられない。

 本日は土曜と言う事で、スペシャルに2話連続投稿ですっ!

 喜んでもらえたら嬉しい限りです!


……はい、ごめんなさい、嘘です。近況ノート読んだ方は解ると思いますが、ただの予約ミスです……

 気が付いた時には既に遅く、結構なPVが付いちゃった上に♡も頂けたので、割り切って連続投稿と言う事にします……よろしくお願いします……くぅ……



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 弓の目途が付いた頃合で、木皮も蔓草も十分乾燥が進んでおり、糸造りにようやく入る。とは言え午前中は何時も通りに仕事で昼過ぎからの作業になるが。


 前世日本の製法だと乾燥させた後に一ケ月二ケ月寝かせてから使うのだが、流石にそんな時間は取っていられない。と言うよりも、そんな事をしたら下手したら加工が終わるのが村を出ていく時期と重なってしまい、布を作っている暇が無くなる。


 それは幾らなんでも意味が無いので、今回は質をそこまで求めず使えればそれでいい、の精神で乾燥後すぐに加工に入る事にした。


「ハハハハハハ! 僕もすっかり諦めて妥協すると言う事を覚えたなぁ! HTW時代だと高品質以下は作ろうと思わなかったもんね!」


 HTWは職人気質の変態集団が作ったゲームなので、かなりカッチリと製造工程が決められており、それから外れると直ぐに低品質になったり、粗悪品になって最悪はロストしたりする仕様なので、現在のクリンの様な妥協して間に合わせるみたいな作り方は実はしてこなかったのだった。


「やってみればヤッツケ仕事のでっち上げと言うのもなかなか面白いじゃない」


 前日の夜から水に浸けて戻しておいた蔓草を水から引き揚げながら、クリンは一人でしみじみと思う。これはこれでクラフターっぽい、と。


 引き上げた蔓草は、並べて置いた焼きレンガの上に、適当な板を乗せて作った簡易作業台の上に並べて乗せる。


「そうしたら……次はコレだぁっ!」


 クリンは薪にする予定だった太目の枝の、持ちやすい様に端をナイフで削った物を手に取ると、バンバンと蔓草を棍棒代わりの薪で叩きつけて行く。


「ふん、ふん、ふん、フンガーフンガー! 叩いて伸ばしてまた叩く! そらそらそら!」


 掛け声を掛けながら、蔓草の繊維を叩き潰してしまい過ぎない様に、気合を込めてただひたすら叩いて行く。


 全体に蔓草の繊維が解れたら一度纏めてまた水に浸す。そして代わりに木皮を即席台の上に乗せ、こちらもただひたすら叩いて行く。こちらはぶ厚く幅がある分、蔓草よりも大分力と根気が必要になる。


「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! て、手が攣るぅ! だが止められぬ! 僕の褌の為に止まらぬ! 振り返らぬ! 躊躇せぬ! なんてなぁぁぁぁぁぁっ!」


 何かの覇王みたいなセリフを吐きながら、前世で噂されたジャパニーズK I A Iでただひたすら木皮を叩いて行く。

 ただひたすら。叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩きまくった。それはもう、鬼の様に叩き倒した。

「ゼェゼェ……何……か、ここの……所っ! 作業的にっ! ゼぇハァ……地味な絵面が……多い! 気がしてるんだけどっ!!」


 持久力の無いクリンが荒い息を吐きつつ愚痴る。だがそれでも叩く手は止めない。厚い分どうしても長い時間をかけて叩く必要が有る。


 本来はここまで力を入れる必要はないのだが、五歳児の、それも発育不良気味な体でやろうと思ったら必要以上に力を入れないと他の人と同じ加減にならないのだから仕方がない。


「それもこれもっ! ヒィハァッ……前の村長がっ……ふぅふぅ……ただの草汁を、飯だと言い張ったっ……ゼェゼェ……せいだろコンチクショーーーーッ!」


 身体的にきついのだが、怒りパワーでドンドン繊維を解していく。割と肉体労働者にとって、キツくなって来た時に敢えて腹が立つ事を思い浮かべて作業するのは常套手段だったりする。それを五歳児がやると言うのは中々シュールな光景ではある。


 実を言うと、クリンがこんなに苦労して繊維を叩き出す必要は無かったりする。お金さえあれば、だが。この鍛冶場には鍛冶作業用の水車が設置されている。主に送風用だが、やろうと思えば杵を付けて繊維の叩き出しにも使える。


「でもそれやっちゃうと税金掛かるんだよなぁ……」


 これが理由である。税額は国や地域によってマチマチだが、この村では製粉するのに二十分の一の税がかかる。もみ殻などを除いた純粋な製粉量に対しての二十分の一、つまり五%である。


 コレを基準に、水車や風車を使って加工した物は全て「加工して出来た物」に対して五%を治める必要が有る。


 しかもそれは「大人数で纏めて加工した場合」の話だ。水車や風車は基本脱穀や製粉に使われる物であり、それ以外に使おうと思ったら追加料金を払い器具を交換してから使わなくてはならない。


 その関係で大人数でその手間賃と加工賃を分担しないと一人に掛かる税と賃金が膨大になり、割りに合わなくなる。


 鍛冶場の場合は送風用であり、かつ当人が器具交換できるのでこの手間賃はかからないのだが、何故か村に交換費用を払わなければならない。


 意味不明であるし元に戻すのにも費用を払わなければならないし、その上で税金など取られたら割りに合わないも良い所である。


「全くさ、前の世界の税金なら分からなくもないよ。社会福祉とか都市整備とか、入院していた僕も恩恵は受けていたから、文句……は有るけど解るさ」


 休憩がてら、叩き出した繊維を水に晒しつつクリンはつい愚痴を言う。


「でもさ、コッチの世界だと現状金だけ取って何にもしてくれないじゃん。仕事はお駄賃レベルだから税金取られないけどさ、森から薪とか取って来る度に持っていかれるのは本当にシャクだよね。小屋だってしっかり家賃と税金取っている癖にさ」


 実は裏門である森に続く道に、態々門番が居るのも森で習得した物には税金がかかりそれを徴収する目的もあったりする。


 クリンは村の住人の中でもかなり頻繁に森でアレやコレやを拾い集めて持って帰っているので、実は結構な量を税として納めている優良納税者様であったりもする。


 それなのに村で何か守ってくれている訳でもなく、守銭奴だの拾われ子だの変わり者だの陰で言われているのだから納得がいかないにも程がある。


「ああ、思い出したらやっぱり腹立って来たっ! 税金なんてこの世から消えてしまえっ! いやこの世界の意味解らん税金は消えてしまえっ!」


 前世でも医療機器のモニターやゲームの開発協力でそこそこの収入があり税金を納めていた(親が代理で、だが)身としては、税金を取られる事自体に文句はない。だが取られる理由が分からない税程に腹が立つ物は無い。


 その怒りを手にした棍棒代わりの薪に込め、疲れた体でも力強く繊維の叩き出しを続けて行く少年であった。





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 たまにはこう言う事もあるよねっ!

2話連続で読んでもらえるのも、それはそれでいいよねっ!


……でも明後日出すつもりだった分がまだ上がってないのよ……

明日投稿無かったらゴメンナサイ!!

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