第57話 鍛冶作業の再開。

申し訳ありません……KIAI入れすぎて長くなり過ぎました……(ノД`;)

慌てて削ったんですが、それでも一話では長すぎて……泣く泣く二話に分割する事にしました。


しかも大分趣味に走ってしまい読みにくい箇所もあるかと思います。

それでもお楽しみいただければ幸いです。m(__)m




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 翌日から仕事を再開させたクリン。突発的に仕事を取りやめた為に新しい仕事は貰えないかとも思ったが、顔や手などが真っ赤なままであったので、寧ろ病気を押して出て来たのではないかと心配された。


 しかしそれがただの急激な日焼け——説明が面倒なのでそういう事にしてある——による体調不良とわかると、笑って「子供は張り切り過ぎるからなぁ!」と、軽めの仕事をくれる様になった。ただ同じく給金も軽くなったので、クリン的にはあまり嬉しくは無いが。


 門番三号の話では、少年がこう言う作業をする事を嫌う村人も居るとの事だったので、よくよく注意して見れば確かにクリンの事を苦々しそうな顔で見ている人物がチラホラと見て取れた。とは言えだからといって彼が何をする訳でも無かった。


 持ち前の「細かい事は気にしない!」スキルを発動させてスルーしただけだった。



 そして数日。皮膚の赤味もほぼ取れ、皮も粗方剥けて新しく変わり、ようやくクリンは途中で止まっていたナイフの仕上げ工程に入れる事になった。


 本当は仕事再開した直後にでもやりたい所だったのだが、ここ数日は天気があまりよく無かった。雨こそ降らないが曇りであったり、クリンが作業をしようとしたら夕立の様な雨が降り、これからの作業には都合が悪かった。


 何せこれからやる作業には太陽の光が不可欠であるからだ。


「よしよし! 今日は快晴だ! そして仕事も早く終わった! と言うか終わらせた! 最高のナイフ作成日和ってやつだねっ!!」


 嬉しそうにしつつ、作業場の窓や搬入口の扉を全開にしていくクリン。そうして明るくなった作業所の中で、日の光が差す場所に金床を引き摺って行き、椅子代わりの桶に各種金槌をズラリと並べる。


「じゃあ作業の再開と行きますかっ! レッツくらふ……は一回やったからいいや」


 爆上げしたテンションを一気にスンとさせると、クリンは粗く鑢を掛けてあるナイフを光に翳した。


 これから行うのは細かい歪み取りである。火造りの工程で大まかな歪みは取れたが、その後の冷却や鑢掛け等で細かい歪みは出ている。それを取り除く作業だ。


 この工程に光が必要不可欠なのだ。曇って居たり暗かったりすると正確な歪み取りが出来なくなる。


 鍛冶師の中には指先の感覚だけでやってしまう者もいるが、クリンが覚えた工法……と言うよりもHTWで参考にしているやり方が光の加減で歪みを見つける方法だった。


 クリンは光に翳したナイフを細かく何度か光の反射角度を目をすぼめて眺め、見当を付けたら金床においてその部分に軽くハンマーで叩いて行く。何度か叩いたら再びナイフを持ち上げ、光に翳して細かく動かし金床に戻しハンマーで叩くを繰り返していく。


 ナイフに光を当ててそれを動かせば光も一緒に動く。その時に剣身に歪みがあれば反射する光も歪んで見える。細かく動かす事でその光の動きが歪む場所を確認しているのだ。


 現代の鍛冶作業ではこの工程は太陽光ではなく蛍光灯の光での作業が推奨されている。長い蛍光灯にしろ丸い蛍光灯にしろ正確な形をしている。荒砥で磨いただけの刃物でもその正確な形は反射される。僅かでも歪みがあればその正確な形のお陰で発見が容易になる。従って現在の鍛冶師で太陽光で作業する者はあまりいない。


 クリンの場合は、流石に蛍光灯を作る事が出来ないので昔ながらの太陽光を反射させての作業をするよりほかに無かった。


 聞いた話ではこの世界にも魔法のランプと言う物があり、それがどうやら蛍光灯に近い形状と光量があるらしいので、何れ手に入れるか作るかしようとクリンは野望を燃やしているのだった。


それは兎も角。


「カンカンカン~の、クホホのホ~っと」


 軽い口調で、どこぞの鍛冶師が失敗していそうなセリフを吐きつつ、ナイフを陽光に翳してはハンマーでチンチンと叩いて行くのを繰り返す。時折ハンマーの種類を持ち替えるが、やっている事は同じだ。


 ひたすら日に翳してチンチン叩く、ひっくり返して両面カンカン叩き同じ事を繰り返す、ただそれだけだ。


 ハッキリ言って地味である。鍛冶作業を見学に来た人がこの工程に当たった場合、最もつまらない作業と言われている位である。


 しかし、クリン少年的にはこの工程は結構好きな作業だった。最初は光に翳してもいびつな反射しか見せないナイフが、叩き続ける内に歪みが摂れ綺麗な形の陽光を反射させてくる。しかもそこで油断はできない。最初の方で歪みを取って後の方になったら別の歪みが出て最初の部分の反射光がいびつになる事など良くある。


 さらには裏側の歪みを取ったら表に歪みが戻る事も多々ある。気分は終わらないモグラ叩きだ。しかし、この歪み取りはおろそかに出来ない。


 歪みが残った刃物で物を切ると、真直ぐに切ったつもりでも急に変な方向に力が入って曲がって切れてしまったりするからだ。


 そして、かなりの集中力を必要とする。雑念が入り込んだり余計な事を考えると、それがすぐに歪みとなって表れたりしてくる。


 だからクリン自身はこの歪み取りの工程が、最も鍛冶師としてのセンスと根気が問われる作業だと思っている。


 今回は転生後初の作業と言う事で、クリン自身もかなり丁寧に歪みを取り続けた。たった一本のナイフに三十分以上の時間を掛けて、丁寧に歪みを取り除いていった。


 そして。職人的にはとても凄い事を五歳でやってのけているのだが、絵面的にはどこまで行ってもとことん地味であった。





「よし。こんな物でしょう! うん、つい熱中しちゃうんだよねこの作業。まだ十分時間あるしこのままどんどん行ってみよう!!」


 歪み取りが終われば次は刃付けである。作る物次第では歪み取り前の荒砥ぎで一緒に済ませてしまう事もあるが、鍛え直しとは言え初の鍛冶作業。


 基本に忠実に行っていくクリンである。最も現実世界での鍛冶は初めてなので迂闊に工程を飛ばすのが怖いだけだが。


 とは言えこちらの作業も地味である。鑢で削って刃を付けていくだけだ。一応均一に刃を付けていくのは難しいが、仮想現実での事とは言えこの手の作業はお手の物である。丁寧に作業をしても十分もあれば荒砥ぎは終わる。


 荒砥ぎが終われば、次の工程はいよいよ焼き入れと焼き戻しの作業である。再びナイフを熱し急冷する事で硬度と粘りを両立させる大事な工程だ。


 平炉に炭を積み火を熾す。燃え広がるまでの間に開け放っていた鍛冶場の窓や扉を閉めて回る。明るかった場内は途端に薄暗くなっていく。



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