第5話 宣言と宣伝

「で、どうするかだな」

「部員集めって、どうするんだ?」

「どうって、普通に声かけじゃね?」

「やっぱり、それか」

 吉野が落胆したように言う。声かけ苦手そうだもんな。

「どのように声かけしてくかを決めるか」

 春ちゃん先生がホワイトボードに「声かけの仕方」と書く。

「そういえばさ、サッカーの大会っていつ?」

「ああ、もう今年のは募集終わってるから、来年を狙うしかないぞ」

「じゃあ、今の一年生を中心に勧誘しよう」

「そうだな。来年は、お前ら受験もあるし、主戦力は今の一年生だな」

 受験という言葉に、吉野が「うう」と唸る。あんまり考えたくないよな、分かるぜ。俺も天使に永久就職決まってるけど、人間の天寿は全うするつもりだし。普通に受験もあるし。

「君達にとっては、ワンチャンスでもあり、ラストチャンスでもあるって訳だ」

 雪兎先輩が何かカッコいいことをキメ顔で言った。この人、顔整ってんな。

「まあ声かけだけじゃなくてさ、ポスターも作ろうよ。ほら、春ちゃん、僕達も助っ人募集のポスター作ったじゃん」

「ああ、あれかあ。雪兎が絵描いてくれたやつ」

「今回も暇だから、絵くらい、ちょちょいって描いてあげるよ」

「え、いいんですか?」

「いいよ。先輩にどーんと任せなさい」

 それを聞いた春ちゃん先生はポスター用の紙を職員室まで取りに行った。


「ポスター、こんな感じでOK?」

 雪兎先輩は鉛筆でちょちょいと下絵を描いてくれた。

「はい、有難うございます。……すいません、手伝わせちゃって」

「いいって、いいって。どう? なかなか上手でしょ?」

「おお、かわいい!」

 ゆるふわタッチの熊がボールを蹴りながら入部希望者を募っている絵だ。

「ペン入れと色塗りはガチでやるから、家で仕上げて明日には持ってくるね~」

「すいません、有難うございます」

「じゃあ、今日はもうこの辺で。二人はもう寮に帰れよ。夕食の時間だし」

「はーい、じゃあ、今日は有難うございましたー」

「有難うございました」

「おう」

「おっつ~」


 二人で寮に向かって歩いていくと、良い匂いが外まで漏れ出ていた。

「おっ、今日はカツ丼だぜ、吉野」

「そうだな」

吉野は隅の方に二人分のスペースを見つけ、そこに向かおうとする。

「お~い、お前ら俺と同じクラスだよな。俺らも一緒に食っていいか?」

 俺は見たことある顔を見つけ、話しかける。

「……別にいいけど。なあ?」

「うん。えっと、転校生の長月だっけ?」

「おう、結弦でいいぜ」

「と、有明?」

 ターゲットの一年生じゃないけど、まあいいか。

「で、早速なんだけど、お前らサッカー興味ない?」

「ちょ、おま、いきなり何言って……」

「俺、今日サッカー部に入ったんだけどさ、今部員、ちゃんと練習してる部員って吉野しかいないんだよな。兎に角、人が足りなくてさ、もし興味あったらでいいから入ってくれねえかなあって。で、どう? サッカーやってみる?」

「えっと、まあ、全く興味無い訳ではないけど……」

「日本代表の試合は観るくらいかな」

「小学校はサッカーやってたけど、中学からはバスケしてたし」

「そっかー。あ、顔出すだけでも、助っ人だけでも全然いいし。兼部も大歓迎だし。良かったら考えといて」

「お、おう」

「あ、あと、出来れば多くの人に伝えてくれると有難いんだけど……」

「何を?」

「毬藻高校サッカー部、大復活ってさ」


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エンジェルデイズ another story 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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