第2話 もーくん


「く、薬って……こんな感じなんすか……」





 約30分の時が経った。



 俺は童貞を……卒業できたわけではない。

 が。


 璃空さんはだいぶ落ち着いてきた。



 なにをしたかって……




──────




 璃空さんのSOSに頷くと、俺は彼女の手にすぐイかされた。


 俺の上に倒れかかり、胸を押しつけ耳を攻められながらそのまま。




 気持ちよすぎて彼女に手も出せなかった。

 雰囲気が一変し顔が赤くなった彼女を見て、またすぐに大きくなっていく。



「俺もいいですか……?」




 聞くと、彼女はゆっくりパジャマのボタンを外しはじめた。



 薄紫色のブラの中、白く豊満な胸が現れる。

 ごくりと唾を飲み込んだ。



「今日は胸しかだめです」



 俺が手を伸ばしてそれに触れようとした手前、耳元で彼女に囁かれる。



「でも、私が頭下げるくらいのことやってくれれば……これ以上もゆるします。そのほうが面白いでしょう?」


 ふふ、と彼女が意地悪く笑った。




 なんだこのルール……これはやるっきゃないだろう。















「あ……や、ちょっと……はっ♡」









 俺はあざやかにやられていた。


 攻めても彼女にしぼり出され、俺はなかなか集中できずに力が抜ける。脳がとろける。



「そういや声、抑えないと……ですよねっ、すいません」

「あー、お父さんなら寝たらとことん起きないから大丈夫」

「わっっ」




 彼女の普段の敬語は消え、完全にSスイッチONだった。素はこうなのだろうか。




 ガードが固く意地悪な彼女は、声を出さないようこらえているようだった。

 そう簡単に「これ以上」は許しませんよと言わんばかりに。



 それでもたまに漏れることがあると、途端俺は興奮する暇もなく、その3倍くらい気持ちいいことをされてすぐ参る。

 やり返しが早い。かわいい。


 そして、結局押されまくりのイきまくりとなるのは俺だ。なかなかの強者……。




「ふふ、この調子じゃ次に進めないね」

「くっ…………あっ♡」





 これでも彼女は初めてらしい。生まれつきのセンス? なら俺にくれ。




 くっそ気持ちいいしエロいしかわいいしたまらない。

 だけど俺は、全然彼女に勝てていない。彼女を満たしてあげられていない。


 快楽を与えてもらってばかりの自分が、恥ずかしくて悔しくて情けなかった。






 そんなことをしてる間に、彼女にだんだん落ち着きの色が見えてくる。






──────




「そろそろ終わりにしましょう。今日は練習試合もあったことだし」



 髪の毛を耳にかけ、彼女は俺から体を離しながら言った。

 いつもの敬語。いつもの表情。いつもの璃空さんに戻る。


 はあ、と息を整えながら、俺は頷いた。



「ごめんなさい。いきなり始めて、こっちの都合に航希くんを巻き込んでしまって」


「いやいや。俺ばっかり楽しんじゃって本当、申し訳ないです……」




 彼女には何度もお礼を言われた。

 しかしいい思いをしたのは断然俺のほうだろう。

 くそ……次は絶対に巻き返してやる。


 俺だってもっと欲しいし、やばいくらい璃空さんを気持ちよくさせてあげたい。




 ふと、大事なことを思い出した。



「それで薬っていうのはなんだったんですか?」




◆◆◆



 私には、幼なじみ兼親友の柚月がいて、頭痛やぜんそく持ちの彼女に薬を分けてもらうことがたまにある。


 この間花粉症の私がくしゃみを連発してるとき、「璃空にいいよ」と渡してくれたのが例の薬だった。


 あのときは自分の薬を使ったが、それが切れた今日あれを飲んで、結果、こう。



「私は、これは故意だと思います」


「え? でも、普通友達にそんな薬渡します? 男同士ならなんか、分かりますけど……」


「はい。理由は言いづらいのですが色々あって、有り得る話なのです」


 私と柚月は航希くんの言う「男同士」みたいなものだと思う。そういったディープな話はよくする。



 そしてあの日の少し前といえば、「ひとりでするけど感度低い」、みたいな相談をちょうどしていた頃……。もう確定だ。











◆◆◆




「俺、午前は買い物がてらこの辺の散歩行ってくる。で、昼はみんなでたこ焼きパーティー」


 3人で朝食を食べながら、もーくんが今日の予定を話してくれた。





「いってきまーす」





 もーくんが家を出たあと、ダイニングテーブルを挟んで向かいに座る璃空さんに声を掛ける。


「実はひとつ、一緒に確かめたいことがあるんですけど」



 テレビから俺のほうへと視線を移しながら、彼女はポケットから薬を取り出した。




「これのことですか?」




◆◆◆



 柚月からもらった薬は、まだ5錠残っていた。

 そこからその正体を判明するのにそう時間はかからず、ただ結果に呆然とした。





 ──抗アレルギー薬。






 精力剤の要素など欠片もない。つまり。


 昨日の行動は薬の効果なんかじゃない。ただの私の、──……。







 愚かだ。




 愚かすぎる!!




 私は性欲のままに動いたただの餓鬼ガキじゃないか。



 いや使ったのは手と脚と胸だけだし、口入れてないし致してないしかなり抑えてたほう──は? だからなに?



 だめでしょこれは。もうバカバカバカ。


 薬の作用だと錯覚して好き勝手やった自己中野郎。

 みんなは常日頃我慢して、欲を抑え、理性を保って生きているというのに。


 私がしたことはレイプ。もう幼稚過ぎ……。

 本当に自分が許せない。





 その節を航希くんに伝え、心から謝罪した。


 彼は真剣に話を聞いてくれている。



 ひと通りの話を終えると、彼は頭をかきながら口を開いた。



「えっと、俺は……。正直嬉しかったし。なんていうか、その、もう気にしすぎないでほしいです。悔やんだって後の祭りなんですから」



 これ以上頭を下げるのは違う気がした。

「ありがとうございます」



 嬉しくて彼に微笑んだあと、明るい声で尋ねてみた。


「なにか欲しいものありますか? このあとお昼まで少しあるし、買い物行く「GWの間、この先もこういうのがしたいです」」



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からかう従姉を本気にしたい 羽詐欺 なな @ynana_2k

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