からかう従姉を本気にしたい

羽詐欺 なな

第1話 1日目①

 インターフォンが鳴った。



「おはようございます! 4日間失礼します~」

「いやいやいやこちらこそ! ほんと助かりました」



 2人の親戚が我が家に泊まりにきた。



 俺の伯父・もーくんと、その娘であり俺の従姉いとこでもある峰岸璃空みねぎしりく。高校2年生。




 母が2人をリビングに通し、ざっと家の紹介をはじめる。




 俺の妹・須藤波夏すどうなみかは、先月くじ引きで1等を引き当てた。

 GW、3泊4日の大阪旅行。交通費とホテル代と遊園地の1dayパス、好きな博物館ミュージアムのチケットがついてくる──3人分。




 家族会議は開かれた。



 俺の家族は4人。1人は家でお留守番となる。


 まず引き当てた波夏は絶対参加。本人が1番行きたがっている。そして参加者決定権も私にある、という彼女の主張が通ることになった。


 即行俺は外された。

「おにいは中2なんだし、来年修学旅行で京都大阪行ける。それになによりサッカーの練習。私は小学生なんでフリー♡ お父さんもお母さんも有給取れるっぽいしね。それにうるさいはい決まりー」

 とのこと。



 案外俺は嫌でもなかった。

 たまには家族抜き、自由時間を満喫するのもいい──それと。




 子供を家に残す場合、4日間ひとりきりはさすがに心配だと両親は言う。

 そこで家に来てくれたのが、親戚の中で1番近くに住んでいる峰岸家2人だった。





「お母さん時間やばいよ!」


「ああ! 航希、2階の説明はよろしく」

「へい」





「では私たちはこれで。もーくんこのあとはよろしくお願いします! 璃空ちゃんまたね! 航希、気をつけて」

 3人は慌ただしく家を飛び出していった。



 ねえ10時10分 間に合う?!

 妹たちの声が遠ざかっていく。





──────



「もーくんは1階の寝室使ってください。璃空さんは……」



 彼女の黒い丸メガネ越しに目が合った。



 真っ直ぐな姿勢、小さめの目鼻立ち、さらさら漆黒ボブにそのメガネは、静かで上品でおとなしそうな印象をかもし出している。


 実際、いとこの中じゃダントツで話した回数が少ない。

(対してもーくんは明るくおっちょこちょいである。)



「2階、こっちです」



 璃空さんを連れて階段を上る。




「ここの波夏の部屋使ってください。漫画とか勝手に読んじゃっていいんで」

「ありがとうございます」

 彼女は軽く首を傾けて、にこっと小さく微笑んだ。



 彼女は3歳年上だが、俺にも波夏に対してもいつも敬語を使う。



 そんな彼女だが、実はゲームがめちゃくちゃ強い。

 去年の冬休み、お兄さんに対して本気を出しているところを見てしまった。

 俺の周りにあんなレベルの子はいない。しかももーくんが泣くからと、課金なしであの強さ。




 だから俺は、このGWを使って璃空師匠と大量にプレイし、力を磨き上げていただこうと秘かに考えている。

 こんな絶好のチャンスはまたとない。



 そんなゲームのお誘いは……あとででいいか。


 俺はこのあと練習試合があって、帰りは18時を過ぎるだろう。ゲームもそのあとだ。

 2人に見送ってもらい、俺は部活へ向かった。






◆◆◆



 とんとん、とドアをノックする。


「璃空さん」


 ここに来るまでに相当な時間がかかってしまった。


 もう夜だし疲れたし、一緒にゲームは明日にしようかと躊躇い30分。時刻はとうとう21時をまわった。


 しかし期限は4日しかない現実をバネに、やっぱり声を掛けることにした。



「はい」


 次の言葉を言おうと息を吸ったとき、目の前でドアが開いた。


「どうしましたか?」


「一緒にゲーム……してほしいっす。色々教えてください!」


 顔を上げて勢いよく言い切ると、彼女はいつものように微笑んでくれた。


「いいですよ」


 内心でガッツポーズ。

「俺の部屋で待っててください。お茶持ってきますね」





──────



 2人でゲームに盛り上がっていると、外からノック音がした。



「俺寝るよー」


 もーくんだ。



「もーー夜更かしもいいけど体調壊さない程度に。おやすみ」

「「おやすみなさーい」」



 時計を見ると22時半。もうそんなに経っていたのか。




「明日もサッカーあるんですか?」

「いや明日はoffっす、まだいけます! あ……でも眠たくないですか?」

「全然余裕ですよ! いつも遅いので。あ、あとあの、そこの布団敷きませんか」



 璃空さんはクローゼットの隙間から見える布団を指さして言う。たしかに座布団座りもだいぶ疲れてきた。



 テレビの前、2人で横向きに布団を広げはじめる。



「航希くんて彼女いるんですか?」

「いないすよ」

「好きな人は?」

「実は最近ふられたばっかで、その子フランス行くわーつって会えなくなっちゃって」

「おぉ……」

「そのあとフランス語勉強してみたんですけどやっぱり難しくて、その件はもう完全に諦めましたね」



 準備が完了し、俺は布団の上に座った──とたん、璃空さんが俺の上に倒れてきた。


「だ、大丈夫ですか?」



 一気に鼓動が速くなる。突然の接近で急に意識しはじめてしまった。甘い匂い。太ももに胸が当たっている。柔らかいしけっこう……ある。いや普通に考えて、そんな場合じゃないだろ──


 すると彼女の手が伸びてきた。



「えちょ、あ…………だっっ」




 スウェット越しに俺の棒を触られ、その中に手を突っ込んできて、今度はパンツ越しに擦られはじめている。



◆◆◆


「ぐ……」

「ごめんなさいごめんなさい」


 言葉とは裏腹に欲情は止められない。

 うつむいて航希くんにもたれながら、手を動かしたり止めたりしては、ますます興奮が膨らんでいく。



「なんか体が熱くて……たぶんこれ、誰か、薬……」


「薬!? て、盛られたんすか……ぁっ」


 心当たりなら、あった。



「ねえごめん、航希くん……詳しいことはあとで話すからちょ、助けて……」



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