第4話
ーージャック王室長視点ーー
さて、ミリアがいなくなってからというもの、王宮内の混乱は日に日に増していっている。彼女がここを去った以上、もう王国の崩壊は止められないであろうから、もはや俺は達観していた。
「お、王室長!!ご相談が!!」
その声に振り向いてみれば、そこにはリルアの姿があった。
「リルア、財政の方はどうだい?ミリアを無能だと言った君の事だ。必ずやきちんと仕事を果たしてくれると、私も陛下も期待しているよ」
「う、は、はぁい…」
彼女の返事には全く生気がなかった。…まぁ無理もないだろうが、自業自得と言えば自業自得だ。
「それで、相談とは?…まさか、自分には無理だから誰かに代わってほしい、なんて言ったりしないよね?」
彼女の顔が大いにひきつる。
「…い、いえ、な、なんでも、ありません…」
彼女は簡単な挨拶を告げ、この場を去っていった。
少し周囲を見回せば、混乱状態にあるのは彼女だけではない。耳をすませば、いろいろな声が聞こえてくる。
「お、おい!陛下は銅像の隣にモニュメントの建造までご所望だ!急ぎ資金を確保しなければ…」
「ばかいえ!ただでさえ大赤字なのに、これ以上歳出に回す金がどこにある!」
「ま、まずいぞ…神殿の建造、職人たちに支払うはずの給与が底をついて建造が止まってしまっている…」
「だ、誰が陛下に報告するんだ!お、俺は絶対に嫌だからな!」
「おい財政部長!!お前の仕事だろう!!なんとかしろよ!!」
「そうだよ!!お前が陛下を説得するのが筋だろうが!!」
…とまぁ、少し耳を澄ませただけでこの有様だ。陛下の指示が何も進んでいないにもかかわらず、関係者の誰もそれを報告しない。ゆえに問題は山積みになる一方で、何も前に進まない。まぁ結局のところ、すべての問題と責任は陛下にあるわけだが…
そんな時、一人の男が俺のもとに相談に来る。
「…王室長、よろしいでしょうか」
「…君は確か、シャルク君だな?財政部員の」
ミリアから話を聞いたことがある。シャルクは財政部員の中でも最もまじめな男で、陛下に直訴に行こうとしたことも一度や二度ではなかったらしい。結局それらはミリアが全て引き受けていたから、彼自身が陛下のもとに赴くことはこれまでなかったわけだが…
「王室長、私を国王陛下のもとまで案内していただけませんでしょうか?」
「…」
間違いない。シャルクは直訴するつもりだ。しかも彼の性格からして、すべてを包み隠さず報告するつもりだろう。陛下への非難の言葉も含めて。
「王室長!このままでは王国は崩壊します!その前に手を打たないといけません!これは私の仕事なのです!」
そう言い、俺にすがってくるシャルク。…俺は彼の男気に付き合う事にした。
「…分かった。ただし、やばくなったら俺がすぐに引き戻す。それでいいな?」
シャルクは力強くうなずき、俺に返事をした。俺たち二人はその足で、陛下の座る王室へと向かった。
「陛下、よろしいでしょうか」
「おお、ジャックか!入れ入れ!」
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